エロゲーオブザデッド (仮)   作:にーと戦士

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3話

 

 

 

 結論から言おう。

 学校中にかけられていた催眠は解けた。

 

 術者以外催眠が解けない、というのはやはり声がネックになっていたみたいだ。

 特定の周波数と言ってもそりゃ人間だから多少のブレはある。それが逆に個人毎の催眠にロックをかけるキーとなっていたのだが。

 

 そこはまあチート転生者の面目躍如。

 無事声帯模写を行って解除しましたとさ。

 

 

「キャーー! なんで私半裸に!?」「見ないでぇ!」「……は?」「うおおおエッロ!」

 

 

 うっかり田島の野郎がシャツのボタンを外したのを忘れたまま催眠を解いたせいで一波乱あったのは脇に置いておく。

 

 あれは別に俺のせいじゃないし。

 全部田島が悪いのである。

 

 ちなみに最後の発言をしたのは田島。

 あいつは催眠術を失おうが助平心は失わない様だ。

 

 

 

 

 それで話は終わり放課後。俺は家に帰宅していた。

 

 

「ただいまー」

「あらおかえり。もうご飯出来てるわよ」

「お、やったカレーじゃん」

 

 

 今世の家は共働きだからか結構お金を持っている。

 故に通常よりはそこそこ広い敷地面積と一軒家がある。

 

 普段は俺がこの家の献立を作っているのだが、今日は母さんが休みの日だ。

 

 珍しく料理を作ってくれている。

 

 俺が自作した料理の方が当然ながら味は上だ。

 だが親が真心込めて作ってくれたカレーも十分美味しい。

 母さんも俺が作った方が満足度が高いみたいだが、子供に任せっきりというのも性にあわないとの事。

 

 我が家が誇る自慢の母さんである。

 

 

 

「ほら手を洗ってきなさい」

「はーい」

 

 

 俺は気分良く鼻歌を奏でながら洗面所に向かった。

 じゃばじゃばと水を出して手を洗う。

 

 丁寧に指と指の間も擦り、十分に洗ったあとタオルで手を拭いた。

 

 うん、これで良し。

 

 

 

「しかし、俺ってば相も変わらず美少女だよなぁ」

 

 

 

 鏡に映った自分を見つめる。

 そこには完全無欠の美少女が佇んでいる。

 

 これはナルシストとか何でもなく実際に俺は美少女なのである。

 きらきらと輝く少女漫画のヒロインを張れそうな容姿に、ほう、と溜息を吐く。

 

 

 惜しむらくは胸がそんなに無い、という事だが。

 これもステータスの異能で成長率を下げた結果なんだよな。

 

 

 ぺたん、つるん、すとーん。

 

 

 という擬音が合いそうな我が胴体を見下ろす。見事なまでの貧乳だ。

 

 元男である故にそりゃ巨乳への夢はある。

 邪道だとは分かっているが前世は盛れるだけ盛った方が良い、と考える人間だった。

 

 それは今世でも変わりは無い。

 決して貧乳を馬鹿にする訳ではない。

 性的嗜好として母性溢れる象徴に憧れを抱かずには居られない、という事だ。

 

 

 なら何故自分の胸を巨乳にしなかったかと言えば。

 

 答えは簡単。

 観賞用と実用は別物であるからだ。

 今世の成長の方向性を決めるに当たりネットで調べたのだが。

 

 揺れる、見られる、蒸れる。

 

 そんなマイナス要素ばかりが浮かんでいた。

 

 

 胸があった所で元男の俺からしてみれば付随するデメリットの方が大き過ぎたのだ。

 巨乳が好きなのと巨乳になりたいのはまた別の話。

 誰が悲しゅうて男にモテる為の肉体を育成しなきゃアカンのだ。

 

 

 故に貧乳になるしか道は無かった。

 

 

 くっ、……何故神はこのような試練をあたえもうたのか。

 

 俺が男に転生さえすれば巨乳美少女を幾らでも拐かし、左団扇な生活を送ったものを……! 

 

 

 しょぼん、と肩を落とし食卓に戻る。

 

 

 

「どうしたの。ぶすくれちゃって?」

「この世の無情さを儚んでた……」

 

 

 なあにそれ、と笑う母さん。

 些細な事でも良く笑う人だ。

 

 こういう所に今世の父さんは惚れたのだろう。

 アタックをかけ続けて漸く漕ぎ着けた、と自慢もしていた。

 

 俺も今世の家族を愛している。

 俗に言う親ガチャ大当たり、な家庭だ。

 

 カレーをスプーンで救い口に放り込む。

 うむ、美味い。

 

 

「母さん、次料理する時もカレーでお願い」

「まっかせなさい! 腕によりをかけて作っちゃうんだから」

 

 

 ムン、と袖を捲り、力こぶを作り上げる様なポーズをする母さん。

 実年齢に寄らず、若々しい姿を保って居るだけあり、可愛らしい仕草だ。

 

 やっぱり母さんと一緒に居ると心が安らぐな。

 前世からの口調を変えれず、男言葉を使う俺を“それも個性だよね”と認めてくれてどれほど救いになったか。

 

 

 望んだ異世界には行けなかったが。

 

 幸せ、だよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、朝六時きっかりに目が覚める。

 

 別に睡眠時間は十分程度でも脳疲労は回復するんだが、寝るのは好きなので一般人の平均睡眠時間分は眠ることにしている。

 

 

 特に昨日は催眠なんてものを掛けてきやがった阿呆がいたからな。

 

 

 精神的疲労もあって何時もより熟睡していた。

 

 

 ……催眠といえば、この本を持ち帰っていたな。

 

 

 枕元に置いていた本に手を伸ばす。

 其れは田島からぶんどった“猿にも出来る。簡単催眠術! ”という馬鹿馬鹿しい題名の本。

 

 如何にも、といった怪しい本だ。

 これを真に受けて練習する奴が居たら、余程目出度い頭をしている。

 

 だがその効果は折り紙付きだ。

 何せ、実際に我がクラスメイトに催眠術を使用した奴がいるんだからな。

 

 

 一度読んでいた為、再読はしていなかったが改めて目を通す。

 ペラペラとページを捲り、最後まで行き着くと、本来は著者やら発刊した会社が載っている物だがこれには記載されていない。

 

 

 まあ当たり前と言えば当たり前か。

 こんなファンタジー成分増し増しな物、発刊されまくっていたら今頃世の中は催眠祭りだ。

 

 この本は個人制作されたもの、とみて間違いないだろう。

 

 それだけに謎が残る。

 こんな世の理から外れた術を一体誰が作り出したのか。古本屋で売っていた、と情報を信じるなら無作為にばらまいては居ない様だが。

 

 同じ本があるなら回収せねばなるまい。

 

 

 流石に日本が滅茶苦茶になってしまうと困るしな。

 ……習得難易度が高過ぎて早々催眠術を会得する輩は現れないだろうけど。

 

 効果も定かでは無い本に書いてある内容を練習するだけでも敷居は高い。

 その上、田島は一年で習得した様だが、この本によると常人なら習得に十年はかかる見込みらしい。

 

 むべなるかな。

 転生チート持ちの俺は兎も角。人の身で特定の周波数を狙って出す訓練なぞ無謀も良いとこだ。

 彼奴はあれでも声を操る分野に関しては天才だったと認めざるを得ない。

 真っ当な歌手業にでも就けば世界狙えるんじゃないか? 知らんけど。

 

 要するに、田島はレアケース中のレアケースだ。

 そこまで考慮しなくても大丈夫だろう。

 

 

 パンパン、と顔を叩き、眠気を飛ばす。

 

 

 ……さて、そろそろ顔でも洗って、弁当と朝飯作るか。

 

 

 

 母さんが作らないのか、って? 

 あの人は朝が苦手だ。朝飯、ましてや弁当を作る体力なんて湧いてこない。

 

 俺の部屋は二階にあるので、とんとん、と階段を降りて一階にある洗面所へ向かう。

 

 

 

 その先で、見知らぬおっさんが居た。

 

 

 

 ーーいや誰だよ、このおっさん?? 

 

 

 

「ふひっ、おはよう。君がユリカちゃんだね?」

 

 

 にちゃあ、と擬音がつくような気色の悪い笑みを浮かべて話しかけて来た。

 

 

 いや、ほんと誰? 

 俺はこんなおっさん記憶に無いぞ。

 

 家にいるってことは多分母さんの知り合いだろうけど。普通なら明日◯◯さんが来るわよ、と連絡してくれる筈だし、何か違和感がある。

 こんな堂々とした泥棒は居ないだろうから、そこら辺は気にしなくても良いが。

 

 ……と、流石に無視は不味いか。

 何か返答しないと。

 

 

 

「そうですけど……貴方は……?」

 

「あーそっかそっか、自己紹介が遅れてごめんね。僕は君のお母さんの友達の中村恭弥って言うんだ。今日はちょっと相談があってやってきたのさ」

 

 

 ぐひっ、と不気味に笑う姿は率直に言って嫌悪感を沸き立たせる不快な笑みだった。

 ジロジロと俺の肢体を舐め回すように見てくるのも減点ポイントだ。

 

 高一の餓鬼に欲情するとかロリコンかな? 

 俺は美少女だからその気持ちは分からんでもない。

 

 母さんも付き合う人を選べば、と思うが。

 職業が弁護士だと言うこともあって色々と縁が切りにくいのだろう。

 俺がとやかく言ってもどうにもならんし。

 一旦我慢すりゃそれで終わる話だ。

 

 

 

 ……にしてもこんな朝っぱらから押しかけて来るとか、常識が無いのかな? 

 

 それとも、余程緊急で重要な事件にでも巻き込まれたとかか? それにしては余裕がありそうだけど。

 

 

 

 

「恭弥さん、自己紹介は済みました?」

「ええ、はい。とっても可愛いお子さんですね」

 

 

 

 そんな折、母さんが廊下で喋っていた俺達を気にして出てきた。

 

 朝が苦手な彼女としては珍しい事である。

 自力で起床した、というのは考えにくい。

 

 中村さんが電話でもかけて起こしたのかな。

 ……友達、と言うからには母さんが朝弱いという情報くらい知ってそうなもんだけどな。

 

 それを承知の上で相談を持ちかけたとなれば、よっぽど重要な案件に違いなーー

 

 

 

「それで、どうですか私の娘は。 性奴隷にぴったりでしょう?」

 

 

 

 

 ーーは? 

 

 

 ぱちくり、と目を瞬きする。

 突如母さんの口から信じられない言葉が飛び出して自分の耳が正常なのか疑った。

 

 何かの冗談だよな……? 

 だが無情にもシステムログには性奴隷、という言葉がきちんと母の口から発せられている事実が載っている。

 

 

「勿論合格ですよ。僕の種を受け取るに値します」

「まあ良かった。じゃあユリカ、お母さんと一緒に恭弥さんに沢山御奉仕しましょうね」

 

 

 そう何時もの通り、にっこり微笑む母さん。

 彼女は怖くないよと伝える為か俺の両手を包むようにして握った。

 

 

 たらり、と冷や汗が流れる。

 間違いない。これは本気で言ってる。

 長年付き添った家族だ。

 

 言っている事が冗談か本気かは分かる。

 それでなくとも、娘を性奴隷にする、なんて事は口が裂けても言う人じゃなかった。

 

 

「お前、俺の母さんに何をした?」

「これを見れば分かるよ」

 

 

 そう言って男が取り出したのはスマートフォン。

 何の変哲もないそれはアプリを開いてるらしく変な模様が浮き出ている。

 

 

「これは命令。お前は一生僕の性奴隷だ」

 

 

 そう言った直後スマートフォンからピンク色の光が放たれ模様が小刻みに変化し出す。

 

 恐らく、俺の母さんを変えた原因はこれだ。

 動作もスマホの画面を見せるというシングルアクション。

 

 音声催眠と並ぶ使い勝手の良い力。

 通常の一般人相手なら為す術もなく操れてしまうだろう。

 

 

 

 

『藤村ユリカは性奴隷催眠攻撃を受けた』

 

※精神耐性Lv:MAXにより完全レジスト

 

 

 また催眠術かよ!! 

 どーなってんだこの街は。

 

 

 二日連続で催眠術士がリポップするな! 

 

 

 ギリギリと歯ぎしりを立て憤慨する。

 

 当然の如く催眠術は俺には効かない。

 勝利の笑みを漏らしてるとこ悪いが全くのノーダメージである。

 

 

 しかしまた催眠て。

 近日中に二人も催眠能力を持った奴が現れるなんてどーなってんだ。

 この街は催眠能力者が集うパワースポットにでもなったのか? 

 

 幽波紋使いは惹かれ合う、ならぬ催眠能力者は惹かれ合うとでも言いたいのかね。

 

 どうせなら、そのままぷよぷよみたいに対消滅してくれたら良いのにな。

 

 

「くひっ、こんな美人母娘を貰えるなんて僕はツイてるなあ」

 

 

 

 自分が俺達を掌中に収めたと勘違いしてニタニタする男。

 今日は朝から厄日だ。

 

 

 

「それじゃあ早速命令するとするか。お前ら、スカートをたくしあげてパンツを見せろ」

 

 

 その命令に対し母さんは足首まであるロングスカートをたくしあげ、黒のアダルティなパンツをさらけ出した。

 

 そして俺が微動だにしない事を不思議に思った男が追加で命令を出そうとする。

 

 

「おい、聞いてんのか?  パンツを見せろっていってんだぶフォッ」

 

 

 とりあえず鳩尾に一発入れといた。

 分厚い脂肪で守られているが、動画で武術を研究した俺に隙は無い。

 

 流れるように手を握り、外側に捻る。

 美少女の手を触れて良かったなクソ野郎。

 

 すると痛みから逃げるためにうつ伏せに倒れた所を馬乗りになって拘束する。

 

 

「痛いィ! やめ、辞めろ」

「俺と母さんに何をするつもりだった?」

「うぅ、離せよ。なんで僕の催眠アプリが効いてないんだ。ありえない!」

 

 

 ぎゃあぎゃあと喚く喧しい奴だ。

 

 

 ……そういや此奴自身には催眠術って聞くのかな? 

 試すだけ試すか。

 

 

「『黙って大人しくしてろ』……おお、効いた」

 

 

 別に催眠術を掛けれるからと言って、催眠術に対する耐性がある訳ではない様だ。勉強になるな。

 

 いや、ならねーわ。

 催眠術なんてそもそもがレアケースな上に、催眠術師に催眠術掛ける機会なんぞ無いわ。

 

 等と内心で突っ込みながら中村に質問する内容を考える。

 

 

 

「何やっているのユリカッ!」

 

 

 パチン、と頬を張られる。

 そうだ。この場にはもう一人いた。

 

 

 怒髪天と言った表情が何ともピッタシ当てはまる我が母君。

 催眠術の支配下に置かれて居るからか、中村恭弥を倒した俺の事が憎くて堪らない様だ。

 

 

「あー母さん? ちょっと良い? 『大人しく眠れ』」

「良いから恭弥さんに謝りなさいッ!」

 

 

 娘の言葉に全く耳を貸さない。

 どういう訳か田島式催眠術は全く効果を成していないようだ。

 

 操作系は早い者勝ち。と何処ぞの盗賊団の金髪男が言っていたように、既に催眠術に掛けられているものは上書き出来ないらしい。

 

 

 ……え、どーすんのこれ。

 

 

 

 

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