エロゲーオブザデッド (仮)   作:にーと戦士

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7話

 

 

 先の一件について介入しようと決めたものの。

 

 まずは事情をきちんと聞いて判断を下すべきだろう。

 

 現代ではありえない、大岡裁きに近い事をするのだ。

 万が一眼鏡君が悪人だったらスッキリしないしな。

 

 

「という訳で眼鏡君。俺からの質問に全て正直に答えるように」

 

「分かりました……」

 

 

 

 そして催眠術を行使して眼鏡君から聞き取り調査を行ったところ、予想通り手酷い扱いを受けていた事が判明した。

 

 

 眼鏡君ーー本名、花村希(ハナムラ ノゾム)

 

 

 事の発端は下駄箱に入れられていた一通の手紙からだった。

 

 ピンク色の封筒にハートのシール。

 漫画で見るような“あからさま”な品物。

 

 帰ろうとした際、ひらりと落ちたそれを掴むと、誰にも見られないように急いでその場を離れ、隠れて読むことにした。

 

 まさかこんな自分に? 

 とは思いつつも、否応なしに期待に胸が膨らんだという。

 

 

 内容を読むと、花村君が好き、という事。

 もし私の気持ちに返事を下さるなら校舎裏に来てください。

 

 こんな風の内容が書かれたラブレターだったらしい。

 

 

 彼は舞い上がり、速攻で校舎裏に行き了承した。

 

 

 嬉しい、と微笑みを浮かべる彼女。

 

 

 人生初のラブレター。

 人生初の告白。

 人生初の彼女。

 

 浮かれていた花村はその奥底に潜む悪意に気づけずにいた。

 

 

 そして数日間、恋人となったというのに何の進展もなかった。

 

 

 それも当然だ。

 告白自体が嘘まやかしなのだ。

 後で罠にかける男と親密になれるはずも無し。

 

 

『恥ずかしいから、他の人には秘密にして欲しい』

 

 

 そう言われた彼は表向き彼女に話しかける事が出来なかった。

 

 しかし花村は満足していた。

 メールや電話を帰宅したあとに行い、お互いに愛を囁き合う。

 

 これだけで花村の心は満たされていた。

 

 

 当の彼女はさぞかし愉快だっただろう。

 これから絶望のどん底に突き落とされる男が、したり顔で愛を囁いてくるのだから。

 

 

 彼女は初めてのデート場所に、自宅を提案した。

 

 外に遊びに行かなくて良いの? 

 と花村は聞いたそうだが。

 

『私の事をもっと知って欲しくて……』

 

 

 恋に盲目だった花村はその返信にそういうものかと納得してしまった。

 

 

 来たるXデー。

 

 

 彼はお気に入りの服で精一杯のオシャレを決めて彼女の家に向かった。

 

 玄関を通るや否や、彼女から耳打ちされた。

 

 

『今夜は両親が帰ってこないの。だから、ね?』

 

 

 今まで恋愛に関わる事も無かった。

 恋も愛も漫画や小説で知識として蓄えるだけ。

 

 

 そんな彼は、現実という要素を見落としていた。

 

 

 未成年者が恋人となって数日で性交するのは、エロゲーやエロ漫画の類いでしか有り得ないということに。

 

 

 彼女の口先に乗った花村はもう止まれなかった。

 

 良いように全裸にされた後。

 急に乗り込んで来た真田に訳も分からず混乱していると。

 

 

 無防備だった腹めがけて拳が飛ばされた。

 

 

 ゲホゲホと四つん這いになり、嘔吐く花村。

 

 だがそこで終わるはずもなし。

 二人がかりでボコられ、心が折れるまでサンドバッグになった。

 

 しまいには土下座して強姦しようとした事を謝罪しろ、と言われて。

 

 

 抗おうとする気力も湧かず、ただ悔し涙を浮かべ。

 指示通りに従った。

 

 

 そんな醜態をさらす彼を動画で撮影して一言。

 

 

『お前、今日から俺らの財布、な?』

 

 

 そこからどうやって帰ったかは覚えていない、らしい。

 

 

 

 

「天国と地獄をいっぺんに味わう、とはこの事だろうね」

 

 

 自嘲して口角を上げる彼の目には薄らと涙が浮かんでいた。

 

 

 やってる事が完全に美人局じゃねーか……。

 学生の身分にしてはえげつねえことしやがる。

 

 

 

「後はまあ、実入りが良いからという理由で売り……いや、そうだな。薔薇売りのバイトをやらされそうになったよ」

 

 

 濁すような口調で語る彼。

 花を売る作業ってそんな時給良いイメージ無さそうだけどな。

 

 案外、俺の知らないだけで求職条件の良いバイトが転がっていたりするのか。

 

 

 と、まあ眼鏡君、もとい花村の復讐経緯は理解した。

 

 

 ……ちょっとだけ、花村の行動を止めて良かったのかな、と思う自分もいる。

 

 此奴がやったのって精々女体盛りした事と、真田に腹パン(自傷ダメージ)くらいだし。

 

 

 

「そういやなんで女体盛りなんだ?」

「知らないのか。女体盛りは男の浪漫だ」

 

 

 キリッとした目で即答する花村。

 

 浪漫か。うん。分からなくもないけどね。

 自由自在に時止め出来るんなら、もっと世俗的な欲求発散とかしないものなのか? 

 

 

 顎を手でさすり花村を見やると、うっ、とたじろいだ。

 

 

 そういえば昼前の授業時にも時止めがあったな。

 

 刺身パックの準備をするくらいだ。

 時止めの力が発覚したのは今日じゃあないだろう。

 

 過去ログも確認すると、見逃していたが二回程時間停止がなされていた。

 

 

 これ、確実に何かをしてるな? 

 

 

 

「お前今回以外でなんか悪いことしたか?」

 

 

 その言葉にびくり、と花村は身体を震わせて。

 肩を落として観念したように口を開く。

 

 

 確かに、“今回”の時止めでは重大な犯罪を犯していなかったかもしれない。

 

 

 だがそれ以前はどうだ? 

 

 

 今日はたまたま女体盛りだけで済んでいたが。

 前回の時間停止では今までの鬱憤を晴らすべく非道な事をした可能性がある。

 

 

 あくまでも俺がこの事件に介入しようとしたのは胸糞が悪い事件だったからだ。

 花村が真田達より非道な事をしていれば、その判断はくるりと裏返る。

 

 

 ありとあらゆる犯罪。

 それは時間停止の力を持ってすれば叶えられるのだ。

 

 どんな善良な人間だろうと強力な武器を手にしてしまえば心変わりが起こっても不思議では無い。

 

 

 時間停止はそれほどまでに危険な能力だ。

 

 

 俺も前世の青春時代、もし時間停止能力が手に入ったら。と、色々妄想していたからな。

 

 

 そんな現役青春真っ盛り世代の花村が能力を手に入れたのだ。

 

 

 どんな酒池肉林を経験したという話が出てもおかしくない。

 

 

 

「ーーその、ワカメ酒を試してみようと。未成年はお酒を買えないから……コンビニで勝手に会計を……」

 

 

 

 うん……。

 

 そっか……。

 

 

 花村が刺身パックを入れていた鞄から一升瓶を取り出して「これです」と渡して来た。

 

 

 ああ、と生返事をして片手で受け取る。

 

 

 ……犯罪は犯罪なんだけどさ。なんというか、やっている事がしょぼくてリアクションに困る。

 

 しかも万引きではなく支払いをちゃんと済ませている所が余計にシュールだ。折角時間停止という能力を持っていると言うのに、やることなすことスケールが小さいんだよなぁ。

 

 別にそれはそれで良い事なんだけどね。

 ただ肩透かし感が半端じゃないってだけで。

 

 

 ちなみにワカメ酒とは女性の下半身を酒の器と見立てて飲む日本の謎伝統文化である。

 

 彼は女体盛りの刺身を食べつつ、ワカメ酒を嗜む予定だったのだろう。復讐と食事。両方を済ませる一石二鳥のお楽しみ会をしていた所を俺が乱入してご破算にした訳だ。

 

 

「もう少し報復のレベル上げてもいいと思うぞ」

「自分で言うのもなんだがお前は僕の復讐を止めに来たんじゃないのか??」

「いや邪魔だからぶっ飛ばしに来ただけ」

「世の中の関節は外れてしまった。あぁ、なんと呪われた因果か」

 

 

 跪き頭を垂れて落ち込む花村。

 大袈裟な奴だな。

 

 

 ……元々、根が善良なのだろう。

 受けた仕打ちと比べれば軽いとも呼べる復讐を見れば一目瞭然だ。

 

 

 元から大分その気だったけれども。

 これでやるべき事は決まったな。

 

 

「ほら、立てよ」

 

 

 未だ地面に手を着いている花村へと右手を差し出す。

 

 

「何のつもりだ」

「復讐、したいんだろ?」

 

 

 俺の言葉に目の色が変わる。

 ぎりぃ、と歯ぎしりをして俺の手を強く掴み取った。

 

 

「……当然だ。アイツらは僕の尊厳を踏みにじった。絶対に許してたまるものかーー!」

 

 

 熱い魂の咆哮。

 それに答えるべく此方からもがっちりと手を握って手繰り寄せる。

 

 誰も此奴を助けてあげれないと言うのなら。

 少しくらい手助けしても良いだろう。

 

 

 

「良く吠えた。俺が協力してやるよ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バスケ部の朝練の為、真田敦の朝は早い。

 やけに重く響く頭を抑え身体を起こして一日が始まった。

 

 

 リビングルームに行くと、朝食の支度をしていた母親からは昨日の夜何処に行っていたの? 

 と尋ねられたが、自分は午後十時にはベッドで就寝していた筈である。

 

 母親の勘違いだろう。

 

 だが否定するのも面倒だった。

 

 

 女というのは一度間違えを口にしたら引っ込みがつかず、嘘を貫き通そうとしてしまう習性がある。

 

 生物学上女である母親もそれは変わらない。

 

 

 だからちょっとコンビニへ行ったと嘘をついた。

 

 だったらお菓子を買ってきて貰えば良かったわ。と言う肥満症になってスタイルが崩れた母を冷徹な目で見る。

 

 過去の栄光はどこへやら。

 元グラビアモデルをしていた母はすっかり贅肉が身につき、だらしない肉体となっている。

 

 遺伝子自体は優秀だったのだろう。

 それは自らの美貌を見れば分かる。

 

 

 だが、こうはなるまいと反面教師にもなる姿だった。

 

 

 わざわざ部活の為、朝が早い自分の為に朝食、弁当を用意してくれている。

 

 それは感謝している。

 

 

 だが、それはそれ。これはこれ。

 

 物事はきっちり分別するタイプなのだ。

 

 

 たが、そうやって気付く。

 

 

 今日は何故か朝練が一日だけない日だった、という事に。

 

 

 こういう予定は普段なら前もって家族に伝えていたはずなのだが。

 

 誰にも一日朝練がなくなったと喋った記憶が無い。

 

 

 だが降って湧いた余暇時間だ。

 無理に登校時間を早める必要は無いだろう。

 

 一言母親に謝罪を入れて、二度目の睡眠を決め込んだ。

 

 

 

 暫くしてプルルルル、と響くコール音で目が覚めた。

 

 二度寝から覚めてスマホの着信履歴が何十件と大量にあった事に驚いた。

 

 なぜこんなに着信が? 

 と、不審に思ったが。とりあえず、電話をかけてきた友人に繋げてみるとーー

 

 

 

『やっと出たか! お前、やべーって! チャット欄見たか!? てかあの写真マジ?』

 

 

 興奮の余り、言ってる事が要領を掴めず飛び飛びになっている。

 

 何とか宥めさせようとしたが、良いからクラスチャット確認しろ、と言われて通話が切られた。

 

 一体何なのだろうか、と思い確認してみると。

 

 

 クラスチャットも昨日確認したばかりなのに100件ほど未読メッセージが貯まっていた。

 

 投下されたメッセージは先程の友人と同じく語彙力が消失したとしか思えない、驚愕ばかりのもの。

 

 

 原因はなんだろうか、と上にスクロールしてソレを見つけた。

 

 

 自分の学年がある廊下。

 その掲示板の写真がアップロードされていた。

 

 

 それ自体は変哲も無い単なる掲示板。

 学校で最近配布されたプリントなどが全体を占めている。普段なら誰も見向きもしないものだ。

 

 

 だが今回ばかりは違った。

 驚くべきものがそこに掲示されてあったからだ。

 

 

 そして、その内容とは。

 クラス内で撮影されたと思わしきもの。

 

 自分が刺身で盛られている男体盛の画像。

 更に新しい財布をゲットする際に協力してくれた女友達の女体盛りの画像。

 

 

 ついでに二人がワカメ酒と竿酒をやって飲み合う画像。

 

 

 それらがセットで掲示板に貼り付けられていた。

 

 

「……ナニコレ?」

 

 

 

 

 




欲張りハッピー(地獄)セット!
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