エロゲーオブザデッド (仮)   作:にーと戦士

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8話

 

 

 明くる日の朝。

 

 予想通りに騒ぐ生徒達を遠目に俺は観察を行う。

 

 

「真田くんってあんな事する人だったんだ……」

「え、さすがに合成じゃない?」

「いや完全に本人の身体でしょ!」

 

 

 突如降って湧いた醜聞。

 彼ら彼女らは見事に釘付けになっていた。

 

 

「先生、こっちです」

 

 

 だがそれも長くは続かなかった。

 他の良識ある女生徒が、とりあえずこのままにしては行けないと正義感を発揮したらしく、先生を引き連れて来たからだ。

 

 興奮も冷めやらぬまま道を開ける生徒達。

 

 呼び出された先生は瞠目していた。

 

 それがとんでもなく破廉恥極まりないモノだったからである。

 

 R15の規制ラインをかっとび、R18コーナーの暖簾をくぐった所で尚、滅多にお目にかかれないような代物なのだ。

 

 ましてや、それが未成年の。それも教え子と同学年のものとなれば無理もない。

 

 そして先生は掲示板にて目立つように貼ってあるワカメ酒+竿酒の爆弾写真を見て一言呟いた。

 

 

「うわ、マジかよ。ダッル…………」

 

 

 教師として論外のセリフを吐くのはこの学校には一人しかいない。

 正義感がある女生徒が引き連れて登場したのは我がクラスの担任である烏丸先生だった。

 

 

「え、俺午後休で飲みにいく約束してたんだけど。これ職員会議待ったナシじゃん…………」

 

 

 彼はぶつくさとボヤくと、おもむろに掲示板に貼ってあった写真をひっぺがした。

 

「あー、一応聞くけど、この写真を貼ったもの、もしくは何か心当たりのある人はいるか?」

 

 だが、その問いかけに答える人は当然いない。

 周囲にいる生徒達はお互いきょろきょろと窺うように見回すだけだった。

 それについて烏丸先生は深い溜息を吐き。

 散れ散れ、と手首を振り、肩を落としながら職員室へと戻っていった。

 

 

 

 うーん……。

 

 ち、ちょっと悪いことしたかな……。

 前日、久々に地元の友達と飲み明かすんだとゴキゲンだった彼からすればとんだ災難だった事だろう。

 

 すまん、烏丸先生。

 午後休潰れどころか、対策会議で残業まで行きそうだな。と、哀れな男に向かって黙祷を捧げていると。

 

 

「本当にありがとう。君には感謝している」

 

 

 背後から話しかけて来たのは花村希。

 時間停止能力を持つ、超ド級の危険人物ーーだった男。

 

 

「別に良いって、気にすんな」

「でも」

「その代わり、お前の“時間停止”能力に制限をかけさせて貰ったからな」

 

 そう、あの後のこと。

 いくら花村が悪事には加担しそうにはない男とはいえ、そう容易くポンポンと時間停止を乱用されては日常生活に支障がでる。

 

 だから時間停止への秒数制限と俺の能力についての黙秘。

 それらを催眠術で組み込ませてもらった。

 

 なぜ完全に無力化しないかと言えば。

 時間停止という能力を無為にするのは惜しい、という気持ちもあり、非常事態になった際の協力者として残しておくことにした。

 

 あと、花村は絶対に悪用しないという謎の信頼感があるし。

 

 時間停止能力を得てやる事がコンビニの無断会計と女体盛りだけなのは驚嘆に値する精神だ。

 色々な意味で。

 

 俺が時間停止耐性をオフにする、という選択肢も一瞬浮かんだが、すぐ脳内で却下した。

 

 時間停止能力者が今後も現れないとは限らない。

 花村は例外的に……うん、本当に例外的に色々とショボイ使い道しかしなかったから良かったものの。

 

 他の性欲マシマシの人間の手によれば、いきなり処女喪失&妊娠のコンボ的な危険性がある。

 

 この一件が解決したからといって油断出来る筈もないんだ。

 むしろ一生外せない耐性スキルになってしまった。

 

 

「……この借りはいつか必ず返す。必要があればいつでも連絡して欲しい」

 

 

 そう言って花村は自分のクラスへと戻った。

 

 

 頑固な奴だぜ。まったく。

 だからこそ手を貸そうとした訳だけども。

 

 

 

 昨日、がっちりと熱い握手を交わした以降。

 

 まずはどんな復讐をしたいか話し合った。

 

 何せお互い持ち合わせている能力が時間停止と催眠能力だ。

 これらの能力さえあれば実現不可能な事などほとんど無い。

 

 真田達は美人局なんて真似をするクソ野郎だと心底思い知らされたので、俺の中でやっちゃいけないハードルは相当低かったが故に、なんなら妊娠しないようにするならヤッて良いぞとGOサインを出した。……のだが、なんと花村はドン引き顔で拒否。

 

 理由を聞くと、

 そこまでしたら過剰制裁でしょ、との事。

 

 仮にも女子である俺が下品な事を口走ったからではなく、純粋に下衆過ぎると判断されてのドン引き顔だった。

 

 

 この男……マトモすぎる……。

 

 性欲猿の二次成長期に有るまじき理性だ……。

 俺が前世で同年代の時はもっとエロスに満ち溢れていた記憶しかない。

 

 でもワカメ酒と女体盛りはする予定だったんだよな、と内心ツッコミつつ、協議することにした。

 

 

 まず、第一に撮影された自分の全裸土下座データを消したい、との事だったので、真田のスマホを探して見ることにした。

 

 時間停止を続行し、真田のスマホを首尾よく発見。

 電源ボタンを押し込んでも案の定パスワード入力画面が表示され、その先へ進めなかった。

 花村も時間停止能力に気付いたあと、スマホを奪ってデータを消そうと試みたものの、暗証番号が分からずに困っていたらしい。

 

 今どきクラウド上でデータのバックアップなんて幾らでも取れるからな。スマホ本体を破壊してもなんの解決にもならないと諦めた様だ。

 

 なので脱ぎ散らかした服や刺身、机等を元通りにして時間停止を解いたあと、改めて催眠をかけ、今迄の悪事と脅迫の元になったデータを貰うことにした。

 

 すると出るわ出るわ、悪事の証拠が。

 

 花村以外にも虐めや冤罪をふっかけて謝罪を要求する動画が複数。

 上記に加え、明らかに無理やり迫ったとしか思えない女子生徒のエッチな写真、動画が大量にあった。

 

 案の定、我が友人である明子がノリノリでアヘ顔ダブルピースしてる写真があったのは見なかったことにした。何やってんだコイツ。

 

 真田に詰問した所、バックアップとかのデータは不用心にもとって無いらしく、本人に削除させることによって晴れて花村は自由の身となった。

 

 

 けれども、新たな問題が出てきた。

 

 そう、花村以外の真田に脅迫されている人達の存在だ。

 

 先刻までやりすぎはいけない、と程々の復讐を考えていた花村だが早々に意見を翻し、被害者達の為にも真田に社会的制裁を下すことに決定した。

 

 それで決めたのが竿酒、ワカメ酒という未成年飲酒、及び未成年異性不純交遊の二点セットであった。

 

 いや、一体何なんだよそのワカメ酒にかける情熱は。

 

 と、今度は声に出してツッコミを入れたのだが、素直に性癖です、とキッパリ言い切られたものだから反応に困った。

 

 

 性癖ならしゃあねえか……。

 

 

 という訳で俺が足を付かないように、催眠術を使い、真田達二人で痴態を晒した写真を取らせ、深夜に学校へ忍び込み写真を掲示板に貼らさせたという訳なのだ。

 

 つまり、今後真田達が騒ぎ立て、真実を探る為にいくら元を辿ろうとも当の本人がやった出来事となる。

 

 足がつくはずも無い。

 

 むしろ騒げば騒ぐほど自分の信用度が下がる狂言となってしまう罠よ。

 

 ワハハ、最近変態共がポップしすぎてたから悪人を成敗するのは気持ち良いぜ。

 そう実行した完全犯罪に酔いしれてると。

 

 

 ダッダッダッと勢い良く走り抜ける音がして。

 

 

「……ハァッ、ハァッ、お、おい。ここにあった写真はどうした……?」

 

 

 おっと、どうやらようやく被写体様が到着したみたいだ。

 余程慌てて来たのか荒い息を吐きながらも、何とか声を発している。

 

 誰かが真田に携帯で教えでもしたのだろう。

 身に覚えのない、自分の痴態写真があるとなれば慌てて走って来るのが当然だ。

 

 

「おい、ここにあった写真は、何処にある……?」

 

 

 皆からの注目を浴びながら、彼は人混みを掻き分け、掲示板の元へと進んでいった。

 

 だがそこに貼られていた写真は先ほど烏丸先生が回収済みだ。

 よって、今貼られているのは極普通のお知らせのみ。

 

 目当ての写真が無いことを確認した彼は血相を変え、傍にいた男子生徒に問いかける。

 

 

「それならさっき烏丸先生が持っていったけど。てかあの写真なに?」

 

「俺が知りてーよ! 何なんだあの雑な合成写真はよ!」

 

 

 顔を真っ赤にして叫ぶ真田。

 彼からしたら心当たりのない嫌がらせにしか思えないが周囲の反応は違う。

 

 

(いや……どう見てもあれは合成じゃないだろ)

(私、着替えであの子の裸見た事あるけど、身体的な特徴同じだったんだけど)

(紛れもなく本人だよなぁ)

 

 

 こそこそと小声で囁きあうように話は広がっていく。

 

 

「クソ! 誰だよこんな嫌がらせしたやつ……」

 

 

 地団駄を踏んで憤る真田。

 

 

「なあ、あれほんとにお前じゃねぇのか?」

「……だぁから! ちげーって!」

「あー、まぁ。それは良いとして……今日お前休んでシャワーでも浴びてこいよ」

 

 

 良くねぇッ! と叫ぶ真田。

 それを無視して男子生徒は肩をポンと叩いて耳元で一言。

 

 

「……気づいてねぇの? お前、酒くせぇぞ」

 

 

 それは純然たる事実。

 昨夜、酒を処理する方法として真田達にワカメ酒や竿酒に使用した分のアルコールを交互に飲ませていた。

 

 故に、今。

 真田の身体からは分解しきれなかった分の酒特有のニオイが漂っている。

 

 けれども、それは催眠術で無かった事になった記憶。

 

 真田の主観からしてみれば、昨夜酒など飲んでいないというのに、目の前にいる男子生徒は酒臭いなどとのたまっている。

 

 良くよく見れば気付けただろう。

 彼の顔が少しも笑っておらず。

 心配そうな表情で、ホンの一欠片も嘲笑する様子など無いことに。

 

 だが、頭に血が上っている真田は額面通りに言葉を受け取れなかった。

 

 友人からの身を案じての貴重なアドバイス。

 それは今朝晒された自分の痴態写真を元に。

 完全に“煽って”いるとしか感じなかったのだ。

 

 

「悪いことは言わねぇから、先生達に見つかる前に……へぶらっ」

 

「ナメてんじゃねーぞ!」

 

 

 友人の顔面に一発パンチをお見舞いして。

 苛立ち混じりに咆哮する真田。

 

 するともう収集はつかない。

 殴られた彼は理不尽な暴力に怒り、反撃。

 

 殴り合いの喧嘩に発展し、すったもんだの騒ぎになった際、再び烏丸先生が戻ってきて男子生徒二人の喧嘩を仲裁する。

 

 事情を聞いた烏丸先生は真田のニオイを嗅ぎ、なるほどと納得。

 かったるそうに二人を職員室へ連行していった。

 

 

 ……なんか予想より大事になったけど、社会的制裁を与えられそうなのでヨシッ! 

 

 

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