渡世者のアーカイブ   作:誰かのサブ

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ブルアカアニメのみ履修勢ですが書きたくなったので書きました、ちなみに柴大将推しです




プロローグ

 

 

 

 

その日は朝から雨が降っていた───。

 

 

 

 

 

 


 

 

ガチャリと扉を開く音と共に面会室に一人の大人の男とその付添であろうヴァルキューレ警察学校の制服に身を包んだ金髪に犬耳が特徴的な少女が入り込んできたことでその部屋の真ん中に置かれた透明の仕切り、その向こう側にいた囚人服の少女は俯かせていた顔を上げる

 

"…前に会ったときより、少しやつれたんじゃないかな?"

 

部屋に入った二人の片割れ、シャーレの『先生』は仕切りの向こうの少女へとどう切り出すか迷いながらも口を開く

少女は所謂退学済みの素行不良の生徒で自身が手を伸ばすことの叶わなかった──救えなかった生徒の一人ではあったものの

個人的な意見を言わせて貰うとすればたまに街中で遭遇しても挨拶をすれば返してくれるしそこまで問題のある人間ではないと思っていた

 

だからこそその少女がこんな事をするなんて、と些か信じられない気持ちもあったのだが

酷く窶れた彼女の姿を見れば嫌に納得もいった

 

"まさかこんな事になるなんて───"

 

意図せず漏れ出た言葉に仕切りの向こうの少女の肩がピクリと震える、あぁ違う…そんな事を言いたいわけではなかったのにと先生は必死に取り繕った

 

「…なんで、私を糾弾しないんですか?だって私は───」

 

人殺しですよ?そう続けた彼女は力なく笑う、確かに彼女の言う通り糾弾するべき事柄なのかもしれない

しかし先生はどうにもそんな気分になれなかった

 

"…だったらさ、教えてくれないかな?

──あの人の、月島会長の最期の様子を───"

 

その言葉が意外だった為か、少女は少し目を見開いて視線を彷徨わせたあと

やがて観念したように口を開く

 

 


 

 

 

 

「──あの人は…月島ナルミという女は最後の最期まで大した根性の持ち主でした

20人の襲撃グループで私は先頭2列目、計20の銃口が一斉に火を吹いて…月島会長はピョンとエビが飛び跳ねたように身体が宙に浮き上がり数m先の地面に仰向けで倒れ込みました」

 

瞳を閉じて、その時の出来事の記憶を呼び起こすように考え込み

途端に早まる鼓動、記憶と共に鼻につく濃い消炎の臭いとそれに混ざった濃密な血の香り

そして周囲を囲む仲間達の怒号…それら全てのあの時(・・・)の出来事が脳裏に過ってはどこか複雑な心境と共に私は再度続けた

 

 

「ハッとリーダーの方を見ると彼女は足を抑えて蹲りました…月島会長の撃った弾丸はリーダーの足を撃ち抜いていたようで───」

 

途端に耳にノイズ混じりの耳鳴りが鳴り、あの時『トドメだットドメをさせッ!』と叫んだリーダーの声が反響するように脳内に響き渡る

 

「──追撃に向かった私達が持っていたのは50口径の拳銃

…そこの公安のお姉さんに、取り調べの際『これなら熊だろうが一撃だ』と教えてもらいました」

 

襲撃に際して近距離と言えど後の取り調べで教えて貰った命中弾は全部で17発、内初撃で当たったと見られるのは14発

50口径は先頭の数人のみしか持っていなかったとは言え、一発でも致命的になりかねない生身の人間が多数の鉛玉をその身に受けて───

 

「血の気も失せて自由の聞かない筈の身体で上半身を起こして、それでも自力では体勢を保てなかったのでしょう

片手で地をつき、もう片手で握りしめた拳銃をこちらに向けて──あの人は最期まで笑っていたんです」

 

"笑っていた…?"

 

続けて脳裏に過る、襲撃相手だった彼女の笑顔

それは諦めの境地で出た物ではなく、どこか安心したような柔らかな物で

驚いたように聞き返す先生へ私は深く頷いて続けた

 

「…少なくとも、これから死ぬ人間が浮かべるような物ではなかったです

──その時、私は思い出したんですよ

そもそも、不良でもない普通の学生だった私が裏の世界に飛び込んだのも月島会長に憧れたからだった事に」

 

死に際の笑顔に、私はかつてあの人に憧れてただの一般生徒でいることをやめて裏社会へと飛び込んだのがきっかけだった事を彼女に手を掛けてから思い出した

キヴォトス一番と言われたヤクザ組織の会長を勤め不良生徒達の星であったヘイローを持たない大人の女性(・・・・・・・・・・・・・・)

義理と人情を何よりも重んじたある意味でいえば一番ヤクザらしく、それでいてヤクザらしくない極道の最期だった

 

 

 

 

 


 

 

 

 

面会室のドアが開き、二人の男女が出てきた

片割れはシャーレの先生と言う肩書きの男性ともう片割れには公安局局長の肩書きを持つ少女

二人は其々無言であったが、考えていることはつい先ほどまで面接室の中で対峙していた不良生徒との会話の内容だった

 

「──あ」

 

"…どうかしたの?カンナ"

 

戻りの道すがら沈黙を破ったのはカンナと呼ばれた公安局長の少女で、その声に反応した男性、先生へ渡すものがあったと懐を探り───

 

「もう片方のはスクラップ同然になってしまって、無事なのはこちらだけでしたが──

おそらくは先生が持っていた方が、あの人も喜ぶかと」

 

"これは───"

 

そして手渡された物を見つめて先生は少し目を見開いたようにして固まる、それは彼にとってはよく見覚えのあるものだった

 

"…月島会長が使ってた銃だよね?"

 

「はい」

 

小柄なわりにずっしりとした重みが紛れもなく本物である事を主張するその銃身は従来の物より少し延長された明るい銀色のステンレス製ロングバレルに、グリップは木目の物に変更されたその銃は名を【スタームルガーMark1】という

キヴォトスにおいては大した性能ではなく、それでいて古く使い勝手の悪い銃であるが為に愛用しているのは彼女以外で見かけたことはなかったが、いつだか彼女本人から「一目惚れして渡世入りをする際に購入したもの」と聞いていた

 

"……"

 

じっと手の中の銃を見つめれば銃身に無数の擦り傷があることに気付く

相当に年季が入っていることを伺わせるが、本人の話していたとおりよほど大事にしていたのだろうことがわかる

 

"これ、私が持っていて良いものなのかな…"

 

「むしろ先生以外が持っていても何にもならないと思いますが」

 

いつだったか9㎜以下の弾丸はおもちゃだと言っていた生徒がいたことを思い出して先生は手の中の拳銃がどれほど大事にされていた物だとしても生徒達にとっては火力不足の品物であるという事に気付き、同時にこれで様々な生徒達へ大立ち回りを決め込んできた今は亡き彼女に心の中で尊敬の念を抱く

それにしても

 

"…カンナも結構、あの人に肩入れするんだね

少し意外だったかも"

 

「確かに、公安と言えど警察ですからね

ヤクザと警察は本来なら犬猿の仲と言えますが──あの人の人間性については、尊敬していますので」

 

言っていて自分の言葉に引っ掛かるものを覚えたのか少女カンナは少しばかり複雑そうに表情を歪める、というのも相手はヤクザの会長ではあるが

その実ヘイローを持たない大人の女性、本来であれば力の無き者に部類されるが義理と人情に厚く高いカリスマ性を持っていたことから組員のみならず多くの人々から慕われていた

 

「──ですから、そうですね

公安の身でこんなことを言うのも変な話ではありますが、あの人には生きていて欲しかった」

 

続く言葉は本当に惜しそうで、思わず先生は小さく唸るように息を飲む

 

「根拠なんてありませんけど、実際に私はあの人が死ぬようには到底思えなくて…そんなことあり得もしないのに不死身だと思ってました」

 

"……"

 

伏せ目がちに呟くカンナの言葉にまたしても先生は押し黙る、他でもない彼自身もその口だったから

ヘイローを持っていても死ぬときは死ぬ、ましてはヘイローが無い大人ならそれもまたなおさら

だけれどヘイローもなく、単純な戦闘力でいえば生徒達に遠く及ばず自分と同じく被弾1発が命取り

それでも戦闘となれば部下の誰よりも前に立って

「そのまま死んだち良かぜ(っていいぜ)」と言い放つ彼女に先生自身も強い憧れを抱いた程だった

 

"…私もあの人なら死ぬことはないと、ずっと思ってた"

 

少なくとも彼女の周りにいた人たちは、どんな状況でも折れずに突き進み信じた道をひた走る彼女に対してそう思っていたであろう

彼女の熱に浮かされ、蝕まれてそう思ったのはシャーレの先生であっても変わらなかったのだから

 

"…あの日、あの人をD.U.へ呼んだのは私なんだ"

 

「え…?」

 

"少し話したいことがあってね、シャーレに来て貰う予定だったんだけど

私の仕事が一段落つかずに、D.Uシラトリ区で時間を潰して貰うことになったんだ"

 

色彩の撃退や異なる世界線の砂狼シロコと先生(プレナパテス)との攻防を終えて早数ヶ月、キヴォトスは春を目前として最高学年の生徒は卒業や進学を控えて新たに入学してくる新顔の生徒達もちらほらと見え始めていた

…その中にどこかきな臭い流れを感じたのは先生を含めて表立っては対立していた筈の公安局が名指しで月島に彼女の立ち上げた本部事務所があるブラックマーケットより外に出る際は必ず護衛をつけるように指示をしたほどである

しかし彼女は自身の為に部下の手間が増えることを嫌って護衛をつける事を拒んだ、元々数人程度が相手ならば立ち回り次第で何とか出来てしまっていたのだが数の暴力を前にはどうしようもなかったのだろう

 

"結局、護衛をつけていなかった月島会長は呼び出した私が手持ち無沙汰にしてしまったせいで襲撃を受けてしまった…ッ"

 

「──それは違うと思います」

 

どこか予兆はと言うべきか言い知れない不安は感じていた、しかし彼女程の人ならばとどこか楽観視していた面もあったことはまた事実で

深い自責の念に駆られて項垂れる先生へ否定の声を上げたのはカンナであった

 

「少なくともあの人自身は、死の間際に先生のせいだなんて思っていない筈です」

 

"……"

 

うつむいた先生はカンナの言葉に答えはしなかったが、代わりに脳裏によぎる記憶があった

その記憶の限りであれば──確かにあの人は常にこんな状況になる覚悟が出来ていて

何があってもそれを誰かのせいにすることはないだろうと不思議な確証があった

 

「行きましょう、まだ片付いていない問題が山ほど残っています」

 

"…そうだね、感傷に浸るのは──その後だ"

 

キヴォトス随一と呼ばれたヤクザ組織だった彼女の組織はそれ相応に広域化しており下部組織や構成員も部屋住みを含めるとひとつの学園に匹敵するのではないかと言える程の大きさを持つ

そして頭を勤めていた人間がいなくなったのであれば早急に対処しないと内部分裂などを起こして手のつけられない事となるだろう

そのためにはまず、各下部組織や彼女の会の若頭・会長代行と話し合いもしなければならない

まだ悲しみに暮れている時間は無いと再び顔を上げた先生は、月島会長の愛銃をスーツの内ポケットへ仕舞おうとしてあるものに気がついた

 

"(これは──血痕…?)"

 

銃と言えば金属であるため、その保管には表面に薄ーく油が塗られており錆を防止している

その為油分に引き寄せられ、清掃しても中々落ちない頑固な汚れなどが表面に付着していたのには最初に渡された際に気付いていた

しかし今回はその中に、恐らくはヴァルキューレが回収して一度清掃しても見落とされたほんの僅かに残った赤黒い染みのようなものを見つけてしまった

 

「…?先生、どうかされましたか?」

 

"──なんでもない、なんでもないんだ…"

 

動きを止めた先生を訝しむように見つめるカンナへなんでもないと返しながら、しかし銃から目を離せなくなった先生は先ほどの襲撃犯の一人から聞いた最後の一言が脳裏に過っていた

 

『──意識も薄れて、引く気力もなかったと思いますけど

最期互いに銃を向けて引き金を引く瞬間、月島会長の銃口は上へ向いていたんです』

 

そして襲撃犯達は月島会長へトドメを指してから、周囲に野次馬が集まって来はじめていたことに気づいたという

今となってはどちらなのかは、当人が亡くなってしまっているため定かではないものの

恐らくは通行人に流れ弾が当たってしまってはまずいと考えて、最期の最期に彼女は襲撃犯達へ向けて引き金を引かず

その銃口は空に向いていたという

 

自身の死に際でさえ、一般人の存在に気付き巻き込まないように配慮したその気高さを

そんな誇り高き渡世者の最期を思えば、自然と先生の瞳から涙が伝い落ちた

 

 

 






柴大将が実装したらブルアカ始めたい、頼んだぞY○star
アニメ見て柴大将を「柴の親っさん」呼びしたくなり
悪ふざけでキャラを作りついでにあれこれ設定煮詰めたら女ヤクザを主人公にしたら面白そうじゃねって安易な考えで書きました

あとアニメから入ったので当作の先生はアニ先イメージです
書きたいもの書いてるだけなので次回更新未定です、続きはするんじゃないかな??
気が向いたら書くよ

誤字脱字等あったら教えてつかぁさい
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