渡世者のアーカイブ   作:誰かのサブ

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特に伸びてもないんだけど、ちまちま続き書いたら出来上がっちゃったから投下
文字数も話数も、そんなに長々と書く気はない作品です




一章 キヴォトス1危険な女【悪魔のキューピー 月島ナルミ】編
その女、凶暴につき


 

いくつもの学園が連なった学園都市キヴォトス

その一角であるD.U.地区の裏路地にて一人の女が目を覚ます

女の出で立ちはキヴォトスにおいては異質の部類で、かなり小柄で華奢な体躯に病的なまでに色の抜けた肌

そしてその肌の色とは対照的なネクタイの無い男物の黒いスーツにフェルトハットとヤクザ者さながらな格好をしており、顔立ちだけは可憐で幼い少女のような童顔であるために何とも言えないアンバランスさを醸し出していた

 

「…ここが地獄ち言うとやったら信じてしまうところぜ」

 

自身の現状把握の為に路地から顔を覗かせてみれば、倒壊した街にそこかしこから火の手が上がり

遠くで銃声や怒号が飛び交っていることが確認でき、何だこれは?地獄かここはと思わず呟いた女の表情が強ばった

早くも現実逃避をしたいところであるが、恐らく夢ではなく現実であるのだろう

現に炎の熱も焦げた匂いも感じ取れる、しかし本物の地獄なのかと問われればそれもまた違う

 

(──ばってん、アタシの知ってる世界ともまた違うっちゃん)

 

今の混沌に満ちた状況を打開するため、ひたすら重い頭を回らせてここまでの記憶を辿る────

すると何故だかその記憶の大元はごっそりと抜け落ちていたものの、自分が誰でどんな人間であるのかと言う基本知識

その一部のみ思い出す事が出来た

 

(──名前、年齢に関しては覚えてる限りで間違い無かろうちゃけど…この先はわからんね)

 

近くを見渡し、建物のガラス越しに自分の姿を映し出すとそこには一見して不釣り合いなスーツを背伸びして着たような幼い少女が移っている

しかし自身の記憶では20歳は超えていた筈であるので一応こんな身なりでも大人の女性というわけで女の表情が苦笑いに変わる

そして一番頭を抱えそうになったのが───

 

(職業は渡世稼業──所謂ヤクザ者で記憶の限りやと直系(二次)団体の若頭(かしら)、三次団体の組長ってところったいね

──こんな成りで??)

 

穴だらけの記憶では自分の容姿も思い出せないが、とは言えこんな身なりの者に務まるほど渡世稼業が甘くないことは記憶に残っている

というか今の段階では本当に自分が女だったか男だったかさえ怪しい───

もしかしたら本当の自分とやらはとっくに死んでいて、今は所謂第二の人生ということなのかも知れない

 

(──ま、それはそれで歳は記憶している限りの年齢とそこまで差異ないっち言うんもおかしな事ったい

普通こういうのは赤子からやり直すモノと違うと??)

 

よそ者からして修羅の国と揶揄されることのある女の地元ですら白昼堂々こんな紛争地域みたいなことにはならない

…たまに河川敷からアサルトライフルやら手榴弾やらロケットランチャーが発掘されることはあるが───

 

見慣れない街というのはその通りだがそもそも元いた国、いや世界が違うのではないかと薄々気づき始めていた

だが記憶の中の年齢のままだと言うのも少し疑問が残るところではある、それと───

 

(…道具はあるみたいやね)

 

懐を軽く探り、目当てのものを見つけ引っ張り出す

自身の手の内にあるのはステンレスで出来た銀色の銃身が鈍く怪しく輝くスタームルガーのMk1

命中精度を高めるためにスタンダードモデルの倍近く銃身の長くなっているそれは一番好きな銃だからと渡世入りした際に手に入れて、以来肌身放さず持っている代物だった

 

(まぁ──最悪これさえあればなんとかなるとやなか?

どうにもならなきゃ死ぬだけやけんね)

 

結局のところ、渡世者である以上どこへ行こうが自分は変わらない

なんとかならなければ自分でどうにかする以上道はないし、どうにもならなければ死ぬだけである

これ以上ない程に単純な話しだ

 

 

 

 

 

「おーおー…スゲェところじゃのぉ」

 

ひとまず聞こえてくる銃声を頼りに、一度音の正体をたどりに行くと思わず苦笑いと共にそんな言葉が漏れ出た

人型のロボットやらフルフェイスのヘルメットを被った集団、果てになんだか懐かしさを感じるような所謂スケバンのような格好をしてる者たちがそこかしこで銃撃戦を展開していた

一瞬巷で流行りのサバイバルゲームというものかとも思ったが火を吹く銃口やむせ返るように濃密な硝煙の香り

または外れた弾が周囲の建物に穴を開けたり外壁を破壊したりなどの光景を見ると本物の銃火器を乱射しているということは疑いようもない

 

(何人か頭に喰らっとう筈っちゃけど一滴の血も流さずに耐えてたり倒れたりしても気絶で済みよるんはどういう仕組みばい?)

 

周囲を警戒し流れ弾等を気を付けながら、市街地を突き進む

その道中に見かけた銃撃戦などで被弾してもけろっとしている少女たちを見かけたが記憶の中の普通の人間は銃弾一発で死ぬ可能性がある

疑問が解けないうちは一発の被弾さえしないように気を配る必要があるだろう

 

「──おい」

 

「あぁ?」

 

周囲を視線のみ移すことに留めて警戒は解かないまま歩いていれば、背後よりザリッと何かを踏みしめるような音と声が掛かった為にその足を止めて振り向いた

 

「へへ、こんな所に身なりのいい服着て来ちゃカツアゲしてくださいって言ってるようなもんだろ?」

 

「ほら、痛い目みたく無かったら早く金目のもん出しな」

 

振り向いた彼女の視界に映るのはスケバンの格好をした二人組の少女、見た目的に年齢は15~16歳程だろうか

後ろ手に持ってこれ見よがしに獲物のSMGとSRが見え隠れしている

恐らくは威圧の意味も込めてわざと見えるようにしているのだろう、事実として女の記憶の限り

自身があれを受けてはひとたまりもないことは理解している

…しかし

 

「おい、テメェ!無視してんじゃ──!」

 

怯えた様子もなく、無言のままの女に次第に痺れを切らしたのか

SRを持った方のスケバンが女の胸ぐらを掴もうと詰めよった瞬間

女の姿がぶれたかと思えばスケバンの顔面に女の足裏が突き刺さる

 

「がはっ…っ!?」

 

「なっ─!?て、テメェ──ッ!?」

 

俗に言うヤクザキックを顔面に食らったスケバンは思わず仰け反り、そこに後頭部へ銃底で殴られて一時的に地面へと倒れ込む

我に返った相方のSMGを持ったスケバンが銃を構えるより早く

女は彼女へ銃口を額へと直に押し当てて引き金を引いた

 

「いっ──!?」

 

衝撃で倒れ込んだ彼女の頭部を執拗に狙い、女は1発2発と弾を撃ち

それを気絶するまで続けてから弾をリロードしながら起き上がる気配の無い背後のもう一人へと振り返る

 

「ひっ!?」

 

「──「おい」やら「テメェ」やら、一体誰に向かって言いよっとか?

えぇ?おいキサン、コラァ」

 

色白で童顔な顔に不釣り合いなまでに、額から目尻にかけてくっきりと視認できるほど青筋を浮かび上がらせて睨み付ける女に思わずSRのスケバンは悲鳴を上げる

 

「喧嘩売る相手はよう見て選ばなつまらんぞ」

 

「は、はぃい…」

 

「わかったんならはよ去ねや」

 

言うが早いかスケバンの少女は弾かれたように飛び上がると倒れていた片割れを抱き起こして走り去っていく

 

 

「お、覚えてろ~!」

 

そして捨て台詞と共に遠ざかっていく二人の背中を尻目に女は深々と溜め息を吐いて、ハッとした

 

「結局ここがどこなんか聞き忘れっとう」

 

あちゃ~とわざとらしくかぶりを振ってどうしたもんかと考えながら獲物の拳銃をスーツの内ポケットへしまい暫し考え込む

適任が先ほどまで目の前にいたのだが既に逃がしてしまっている、スイッチが入ると周りが見えなくなるのは我ながら困ったものだと自嘲気味に笑みを浮かべた

 

(いくらなんでもすぐまた絡まれるなんてミラクルはそうそう無かろーもん?

何とかせんと困るっちゃけど…)

 

進まない以上は状況は進まない

女は重い足取りのまま、再度歩き始めた

 

 

 


 

 

「こ、ここがブラックマーケットです」

 

「おう」

 

現在女はキヴォトスにおいて屈指のワケアリが集う街であるブラックマーケットに足を踏み入れていた

先導はボロボロになった赤いヘルメットを被った少女が一人、そんなに頻繁に絡まれることはないだろうとたかをくくっていた女ではあったが

全然そんなことはなく、歩き始めて10分としない内に今度はヘルメットを被った4名の集団に絡まれ

これをチャンス到来とばかりに嬉々として叩きのめして、恐らくリーダー各であると思われる赤いヘルメットを被った少女のみを連れ去りこの世界の事情等を粗方聞き出して

今現在はそのヘルメットを被った少女ですら単独で入るのを躊躇うと言うブラックマーケットに来ていたのだ

 

「…良かね、目ェ腐したようなんがうようよいるばい」

 

「えぇ…なんでそんなの見て喜んでるのこの人」

 

周囲に視線を向け、夢も希望もないといった瞳で

それでも目の奥だけはギラギラとさせた者達が蔓延るこの街の空気感にどこか地元と同じようなものを感じ取り

機嫌が良さそうな女へヘルメットの少女は呆れたような眼差しを向けた

 

「──で、お姉さんはこんなところまで私を案内させて何をする気なんですか?」

 

「あぁ、言うとらんかったばい?」

 

どこか目の前の女に絆されているような気を、ヘルメットの少女は感じていた

ヘイローの無い、それでいて背丈も自分より低い目の前の女は

しかし未だかつて無いほど自身を叩きのめした相手でもある、そんな相手がこんな物騒な場所で何をやる気なのか

少女は興味深げに女の返答を待った

 

「──アタシはこの街で極道をやるつもりちゃけん」

 

「は──?極?え??は!?」

 

女からの言葉は、当然

ヘルメットの少女には理解できなかった

目の前のこの女は確かに、完全武装状態の自身を打ち負かすくらいには荒事に慣れてる

しかしヘイローを持たぬ身であるのならば、自身達は喧嘩の延長戦でぶっ放す銃弾の1発でさえ当たれば致命的なのだ

それなのにこの女はそんな荒事に自ら突っ込む極道を、よりにもよってこんな治安最悪な街でやろうとしているのだ

 

「ちょ…極道ってどういうことです!?」

 

「なんか、極道も知らんと?ヤクザやヤクザ」

 

「いや、それくらいはわかりますけど!私が聞きたいのはそうじゃなくて!!」

 

言ってる内に考えすぎて頭が痛くなったのか、ヘルメットの少女は頭を抱え込みながら「うあー」と唸るようにしながらしゃがみこみ

…ふと、目の前のこの愚かな女を名前すら聞いていないことに気付く

ちょうどいい、せめてこの目の前の女の名前は、自分くらいは覚えておいてやろうかと顔を上げて問いかけた

 

「…そういえば姉さん、名前まだ聞いてなかったと思うんですけど」

 

「あー、そげんやったのう」

 

思えば女のほうも目の前の少女に名乗った記憶はない、何せ絡まれた瞬間に相手の息つくまもなくぶちのめして

リーダー格と思われる目の前の少女を連れ去って離脱したのだ

なんならそんな出会いで、反撃を企てられても面倒だからと心が折れるくらい入念に叩きのめしたつもりではあるが

ごく自然に名前を訪ねられるくらい好印象なことに女は疑問に思うくらいであった

 

「…アタシは鳴海(ナルミ)

月島ナルミ(鳴海)、ただの腐れヤクザたい」

 

名乗った女自身も、尋ねた本人であるヘルメットの少女も知らなかった

月島ナルミというヘイローを持たぬ大人の女が、後にキヴォトス随一と呼ばれるヤクザ組織の大親分になるだなんて───。

 

 

 





話にならないので当作主人公は攻撃力のみキヴォトス人に通じるようにしてます
ヘイロー無しなので紙耐久は引き継ぎ

きままにのんびりと進めていきます
感想、評価、お気に入り増えれば書く気上がるかも?

あと次回からアニメ一話くらいの時間軸に追い付ければって感じです
つづきそうならその時にでも主人公の簡易プロフィール載せる、多分、きっと、メイビー

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