渡世者のアーカイブ   作:誰かのサブ

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とりあえずこの作品は10話だけ頑張って書いてあとは様子見しながらという投稿スタイルにします
書いてて楽しいけどメインとどっちかに集中しないと、数日前から脳内で「このキャラならこういう時こうする」と主人公のなりきり妄想して気持ちを切り替えるので平行して書けないんですよね




悪魔のキューピー

 

月島ナルミと名乗った女に、彼女を知っているリン以外の反応はさまざまな物だった

 

「ちょっとッこの人達を護衛の宛にして良いわけ!?ブラックマーケットを拠点にしたヤクザ何でしょ!!?」

 

「しかも月組と言えばここ最近、勢力を増し始めた新興組織ですよね?」

 

"え?良くない人達なの?"

 

声を粗げるユウカとあくまでも冷静に、しかしリンを責めるように問いかけるチナツとここまで聞いて何故そんな人物をここへ呼んだのか

素朴な疑問を浮かべた先生がリンへと視線を向ける、ハスミは落ち着き払った様子でそれらを俯瞰して見ておりスズミは「月組の月島?」と何かを思い出すように小首を傾げてうんうんと唸っていた

 

「…勿論、ヤクザであることは承知の上です

確かにヤクザを信用したり信頼することは我々連邦生徒会も良しとはしません」

 

「それなら──」

 

「しかし、頼りにはなります」

 

ナルミと言うヤクザに護衛を頼んだリン本人ですら、ヤクザと言うもの自体には否定的な意見である

それを聞いたユウカはだったら何故頼んだのか、そう聞こうとした際に

被せるようにリンはそう言い放った

 

「知っての通り、連邦生徒会長が失踪した現在はサンクトゥムタワーの実権が宙に浮いた状態となっています

権限を取り戻す為にはS.C.H.A.L.Eの部室を奪還する事から始めなくてはなりませんが、この騒動の中では連邦生徒会の人員をあまり割くこともできません

金銭を払えばそこそこの傭兵よりも仕事をしてくれるヤクザに護衛を頼む以外、他に方法はありますか?」

 

「だ、だからって」

 

「それに、これが失敗に終われば

各学園のライフラインも断絶、それで滅ぶ…は少し言いすぎかも知れませんが

全ての学園に少なくない打撃が生じるのです、例え褒められた物ではないとしても

打つ手がまだ残っているのなら、もはやなりふり構っていられないのですよ」

 

それでも今はメリットやデメリットを天秤に掛けた上で、ヤクザに頼みごとをするデメリットよりも仕事をこなしてもらうメリットの方が勝る

ここまで続ければ、もはやリンの意見に苦言を呈する物は居なくなっていた

 

「話しは決まったと?」

 

「えぇ、すいませんが依頼は継続でお願いします」

 

言い合いをジッと黙って見守っていたナルミは、リンへ確認を取ってから一つ大きく頷き

一番声を粗げて否定的に言っていたユウカの目の前まで移動する

 

「…」

 

「な、なによ…」

 

しばし無言で、それでいてじっくりと見つめてくるナルミに緊張を孕んだ声でユウカは問いかけ

その様を見てナルミはフッと温和な笑みを浮かべた

 

「──まァ、あんたの言いたいこともわからんでもなか」

 

「え?」

 

「そこの兄ぃさんと違うて、わしはな~んも後ろ楯もねェ

嬢ちゃん達からしてみりゃ、なんぞ後ろ楯もねぇ胡散クセェ大人が

よりにもよってヤクザやなんやとエラソしよる、警戒するんも当然ばい」

 

ちらりとナルミは視線を先生へと向ける、連邦生徒会長直々に指名したという

わかりやすい後ろ楯があり、それでいて教職という誰が見てもわかる善人である

片やナルミはどうだろうか、キヴォトスにおける大人とは

一部を除き私利私欲にまみれ、己の私腹を肥やす為ならば子供達を毒牙に掛けることに躊躇がない

そんな数ある胡散臭い大人の中でも、ヤクザの組長というわかりやすい悪人である彼女は

子供達の嫌う、俗に言う悪い大人の典型として映ってしまってもそれは仕方のないことなのだ

 

「ばってん、これだけは言うとくぞ

わしらヤクザ──いわゆる渡世人っち言うんは侠客なんじゃ

やけんわしら、その正義に従うて生きとーっちゃん

…そればせんで意味を履き違えとーバカ助がよーさんおるんも否定は出来んっちゃけどね」

 

そう一区切りし、ユウカ以外の全員へと一度視線を向けてから堂々と宣言するように続けた

 

「そもそも、道を極めると書いて極道やけんね?

わしらは任侠道って渡世の仕来りの中で生きとるんよ

基本カタギさんに迷惑かける事しよる奴はヤクザからも嫌われるくさ

ヤクザは言うたらプロの不良ぞ、嬢ちゃんらーの危惧しとーような

なんでんかんでん好き放題やりよう輩はただのチンピラばい」

 

確かにヤクザの中には義理人情も無く好き勝手している者も存在する、しかし大前提として

元々はヤクザ以前に渡世人として守らなければいけない掟というものがあって

それを守れないものはヤクザでは無くただのチンピラだと断言するナルミに誰も何も言えなかった

 

「わしら見栄とプライドで生きとるんじゃ

ワルソ(不良)や悪事してこっちの世界に片足突っ込むようなんならいざ知らず

なーんも悪さしとらんカタギばがじった事は一度も無かよ」

 

そうして一通りのことを言い放って満足したのか、ナルミはリンへと視線を向けた

 

「時間食わせて悪かったね、ほんなら行こかい」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

一行はS.C.H.A.L.Eの部室があるD.U.区内の外郭地区を目指して歩いていた

先頭は月組の10人、その後ろにリン達各学園の代表が5人

そして最後尾にS.C.H.A.L.Eの『先生』が位置取り総数16名の大所帯となっていたが

ヘイローを持たない大人の筈の月組【組長】ナルミは先頭集団、しかもそのさらに最前列に陣取っていた

 

「ねぇ…あの人なんであんな前に出てるの?

普通に危ないんじゃ…」

 

「さ、さぁ…?」

 

10人の後ろを歩く5人の中から少し心配そうな声が上がるがナルミはおろか組員も、なんなら彼女を呼んだリンですら何も言わずに黙々と目的地へ向けて歩みを進める

一応は戦闘になれば加勢する手筈ではあるが、護衛として金を取っている以上

取り逃し等がない限りはこちらで対処すると譲らなかった

 

「…!」

 

あと少しで目的地のビルへとたどり着く

そんなタイミングでピタリと先頭のナルミが足を止めたことにより、後続の15人も足を止めた

何かあったのかと首をかしげる面々には、次第に付近の倒壊した建物の影から現れた武装集団の姿が目に入る

 

"待ち伏せ?"

 

「…みたいですね、先生は下がっていてください」

 

"…あの人は?"

 

先生は状況を判断するために目の前のリンへと聞くが、自身の推測が肯定された上で決して前に出ることの無いように釘を刺されると

いまだに先頭で増えていく武装集団を無言で見つめているナルミへと視線を移す

彼女は動かなかった、しかしそれは恐怖に怯えていると言うよりも

この状況下でも特段危険がないと判断したかのように堂々としていた

 

「へへ、ここで待ってれば連邦生徒会の奴らが来るって聞いてたけど

まさか当たりだったとはね」

 

出てきた人数は目算でおよそ20人、数で言えばこちらが劣っているため

まず負けることはないだろうと踏んでかリーダーだと思われる少女が先頭に出てきてはこちらの最前列にいるナルミの方へとつかつかと歩いていく

 

ヘイローがある時点で身体能力は向こうが上、ましてや線が細く背も低いナルミよりも向こうの方がパッと見での体格も勝っていた

 

「黙りこくっちゃって、怖くて声もでないってか?

えぇ?お嬢ちゃんよ」

 

酷く童顔なナルミはその背丈も相まってパッと見は子供にしか見えない、相手は自分よりも下だと判断して馬鹿にしたようにニヤニヤと笑みを浮かべて恐らくは羊のように縮こまっているであろう哀れなお嬢ちゃん(ナルミ)ヘと挑発の言葉を投げ掛け

後ろで見ている取り巻き達も一様に下卑た笑い声を上げる

 

「──今、何て言うたんない?

 

しかし余裕の表情は身体の芯から冷えるようなナルミの一言によってすぐに動揺へと変わる、対照的にナルミの部下の後続9人はそら始まったぞとニヤリと笑みを浮かべ

さらにその後続、先生を含めた6人はつい先程とは似ても似つかないナルミの様子に驚愕することとなる

 

「キサン誰に値打ちこきよるんかコラ、えぇ?」

 

眉間に皺が寄り、こめかみにくっきりと視認できるほどの青筋を浮かべ目尻をピクピクと痙攣させる顔立ちに似合わないまるで別人のような形相に

しかしどこか見覚えがあるのか向こうの取り巻きの中から何人かが目を見開いて表情を青くしていた

 

「…あっ」

 

"ど、どうしたの?"

 

そんな中、後方ではそれまで時折思案顔で唸っていたスズミが何かを思い出したかのように声をあげ

ナルミの変化に肝冷やしていた先生が聞き返した

 

「月組の月島…思い出しました

数か月前までトリニティ自警団内にて要注意人物として警戒していた人です

今現在キヴォトスにて尤も危険な人物だと、【悪魔のキューピー】の別名で不良達から恐れられていました」

 

"なにその不穏な別名!?"

 

続けてスズミの放ったナルミのもう一つの側面に思わず驚いたように目を見開く先生に、スズミはようやく合点が行ったとばかりの様子で続けた

 

「小柄かつ華奢な体躯にベビーフェイス、普段は物腰も静かで声色もおっとりと優しい

しかし一度頭に血が上ると誰も手が付けられないほどの凶暴性を持ち、まるで瞬間湯沸かし器のように穏やかな菩薩が阿修羅へと変わる

故についた呼び名が───。」

 

"──悪魔の…キューピー…。"

 

まるでそれこそが彼女の別名の所以なのだろうと、確認するように聞き返しそれを肯定するようにスズミが頷く

その直後に「ぎゃあああ」と前から悲鳴が上がり

弾かれたように視線を向けた先生の視界に入ったのは血の滴る鼻っ面を抑えて踞るリーダー各の少女と腕を振り抜いた状態のナルミでその手のひらには銃底部を先端にして、銃身を逆に持った銀色の拳銃を持っており

すかさず踞った少女の腹部へいわゆるヤクザキックを放ち追撃を入れた

 

"な、なにが…"

 

「…鼻っ面に拳銃を振り抜いて、思わず踞った所に蹴りを」

 

「うわー、容赦ないわねあの人…」

 

一瞬目を離した隙にいったい何があったと言うのか、先生が呟くと一連の流れを見ていたハスミとユウカが引きつった表情で続けて思わず先生の表情も引きつる

 

「詰められてからの反応が遅すぎるんじゃ、そげなとでこのわしに勝てるわけがなかろうもん

──修羅の世界でモノが言いたきゃ、地獄ん鬼にでもなって出直してこんか」

 

追撃により地へ倒れ伏したリーダーの少女の眉間へスーツの内ポケットから出した拳銃による一撃を入れ、息の根を止めて*1から

まさに悪魔のような形相で視線を向け、思わず「ひっ」と短い悲鳴が残る武装した少女達からあがった

 

「──コラ腐れ共、わしらをコケにしてタダで終われる思いよっとか?全員ぼてくりまわすけん覚悟せぇよ」

 

 

"無茶苦茶だ…あの人"

 

今や地に沈みピクピクと身体を震わせている目の前の武装集団のリーダーの少女は、先ほど挑発の意味をこめてナルミを侮辱したのだが

ナルミはちゃっかりそれを自分ではなく自分たちを侮辱したものだと理論をすり替えて建前を作る

訂正しようにも発言したリーダーはナルミにやられて意識を手放している為に不可能である

あまりにも酷いこじつけ論に先生はドン引きして苦い笑みを浮かべた

 

「さて、うちらも姐さんだけにカッコつかすわけにゃ行かねぇし、一丁行くぞッ」

 

『応ッ』

 

さてそうして駆け足で武装集団に詰め寄るナルミの後を追うように後続の部下9人も続く

 

「てめぇ等誰の姐さんに生意気言ってやがんだコラァ!」

 

ナルミの殺気に飲まれて及び腰になった武装集団など敵ではない、さらに先陣を切る生身の人間である筈のナルミはまるで全ての弾道が見えているかのように射撃を回避し

後続の9人はそもそも被弾を物ともせずに真っ正面から強行突破していく

 

"す、すごい…"

 

あまりにも荒事に慣れすぎている、それを証拠に当初は武装集団に対して半数程度の戦力であったナルミを含む黒スーツの集団が

あっという間に乱戦の中で互角の数まで飲み込んでいく

が、しかしそれでも

中にはせめて一矢報いろうとナルミや組員達の脇を抜けて、さらにその後ろの先生達6人へと向かってくるものも中にはいる

 

「下がってくださいッ先生!」

 

"──いや、ここは私が指揮を取る

みんなは力を貸して欲しい"

 

前の10人が取りこぼした何人かがこちらへと向かってくる、流石に危ないと声を張り上げたユウカに

逆に手を貸してほしいと待避を拒む、先陣を切る10人を飛び越えて

やっとたどり着いた先に待ち受けるのは先生と呼ばれる腕のたしかな大人の指揮下のもとにきちんと統率の取れた隙のない攻撃を放ってくる6人の生徒達

 

数の上では圧倒していた筈の武相集団が逃げ帰るまでにそう時間は掛からなかった

 

 

*1
実際には気絶させただけだが、あまりの気迫にそう見えるだけ






あんまり長々書くと見るとき気が滅入る人多そうだからやりたくないんすよねぇ
よって飛ばし飛ばし書いとるのはわざとです、長々書いたってストレスフリーに一気に読める作品のが皆好きでしょ?
話の進み方が急に感じたらごめんやで

そんでもって感想、評価、お気に入り
この作品、ちょっといいかもって思ったら
是非是非押したってちょーだゃーよ

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