渡世者のアーカイブ   作:誰かのサブ

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26年一発目よろしくお願いします




ヤクザと砂漠

 

ブラックマーケット484番通り、現在キヴォトスで一番勢いがあると目されるヤクザ組織【月組】は無法者達の行き来するこの地に事務所を構えている

 

シャーレの部室奪還作戦を終えて早数日、組を取り巻く状況は先生赴任前とさほど変わることはなかった

 

(ばってん七囚人?やらが脱獄しとる言うんは少し厄介かも知れんね)

 

ナルミは先日請け負った依頼中を思い出して一人思案に明け暮れる、あの日

自身は別のフロアにて不良達の制圧に動いていた為に知るよしもなかったが、なんと護衛対象である先生が七囚人と呼ばれる一連の騒動の親玉と接触したらしい

幸い向こうは戦闘の意思はなくそのまま逃げていったようだが

一つかけ違えがあればあの場で先生は死んでいたかも知れない、無理に押し通してでも先生の護衛についた方が良かったかと反省はあるが済んでしまったことはこれ以上悩んでも仕方の無いことでもある

 

 

──prrrrr

 

「…ん?」

 

そんな時、事務所内の電話が鳴り響く

今日の事務所番は掃除のものや日用品の管理を行うものは来ているが、仕事のために電話番の者までは手が回らず不在であった

そのため、仕方なしに事務所に一人残ったナルミが受話器を上げて電話に出る

 

「──はい、月組」

 

『"あ、その声は月島さん?"』

 

──ガチャ

 

ナルミは受話器から聞こえてきた声を聞かなかったことにして受話器を置いて電話を強制的に切った

ふぅ、とため息を吐いたその表情にはどことなく疲労感が滲んでいる

 

 

──prrrrr

 

「…」

 

再度電話が鳴り、ナルミはとたんに苦虫を噛み潰したような露骨に嫌そうな顔をする

しかしかかってきた以上は出なければならないため、わざとらしく大きな舌打ちをして電話を取った

 

「──はい、月組」

 

『"なんで切ったの!?"』

 

「なんではこっちのセリフたい!どこにかけとるかわかっとうっとや!?ヤクザ事務所ぞここ!!」

 

案の定、先ほどの電話と同じように受話器からはシャーレの先生の声が聞こえてきて思わず頭を抱えたくなった

いくら数日前に護衛をした相手といえど、向こうは表舞台に立つ人間である

自分のようなものと関わりがあるとわかればそこに付け入ってくる面倒な輩だっている筈だ

そのため護衛任務の終了後、ナルミは連絡先を聞き出そうとしてくる先方と無駄な会話を挟むことは一切せずにそそくさと撤収をしたのだが

 

「…誰から聞いたんかこの番号」

 

『"リンちゃんからだよ!"』

 

「…あの嬢ちゃんはいったい何を考えよるんか」

 

はぁと漏れ出たため息に受話器越しの先生が苦笑いをし、ナルミは誰のせいでこんな思いをしてるのかと少しばかりイラッとした

 

『"実は月島さんに聞きたいことがあって"』

 

「お前スゲェのぅ、この流れから質問かいね」

 

『"で、その聞きたいことなんだけど──"』

 

「あ、わしの言葉はシカト?」

 

ナルミの苦言の一切を無視して話を進める先生に苛立ちを募らせるナルミではあるものの、なんだかんだ話を聞いてる時点でナルミもそこそこお人好しである

 

『"アビドスって知ってる?"』

 

「…あー…」

 

そうして先生から発せられたアビドスと言う単語に、ナルミは受話器越しでもわかるほどに口ごもった

 

「…アビドスがどうかしたと?」

 

『"実はアビドス高等学校から救援依頼が来ていて、初任務を兼ねて今から向かおうかと"』

 

「ほー、精が出るこっちゃのう

遭難と熱中症には気を付けんといかんぞ、一面砂漠だらけのほぼなーんも無かとこっちゃけん

市街地にすら店もほぼ残っとらんっちゃん」

 

『"…え?"』

 

呆然としたような声を上げた先生にナルミは小首をかしげる、普通自分がこれから向かう先は把握している筈であるが

向こうは土地の情報をヤクザに訪ねてくるくらい抜けている男である、段々ナルミは嫌な予感を感じてこう切り出した

 

「…まさかこれから向かうのになんの用意もしとらんのか?」

 

『"…はい"』

 

「はいじゃなかろーもん!?今どこにおるんか!!?」

 

『"…アビドスの最寄駅です"』

 

「バカじゃなかと!!?」

 

思い立ったが吉日とはいうが、まさか思い立ったがままに行動する馬鹿者が知り合いに存在するとはと

ナルミは天井を見上げてため息を吐いた

 

『"…そっか

嫌に何もない場所だなとは思ったけど、私の勘違いではなかったんだね"』

 

「普通確認してから行くやろ…ッ」

 

いまだに呑気なことをほざく先生に思わずナルミは乾いた笑みを溢す、いくらなんでも考えなしにも程がある

 

「…で、アビドスのことを聞く以外になんか用はあるんか?」

 

『"アビドス高等学校まで送っていって欲しいかな?"』

 

「キサン、わしのこと便利なタクシーかなんかと勘違いしとりゃせんか??」

 

この状況下で他にも何か用があるか聞き返してみれば随分とふてぶてしい頼み事に思わず返答に棘が入ってしまう

おそらく先日の護衛依頼で車に乗っていった事もあって電話してきたのだろうが

 

「…事務所の若いもん向かわせるけん、絶対そこ動くなよ」

 

『"ほんと!?"』

 

あいにくと今日の今日で出せる人数は限られている、本来なら自分が行った方が手っ取り早いのが人手不足なことも相まって事務所を離れることもできない

しかし数日前の護衛の一件で、このキヴォトスという都市における先生の重要性もナルミは充分理解している

なによりここで見捨てて死なれたらさすがに目覚めが悪い

 

「あと流石に今回の一件は七神の嬢ちゃんにも話す、良かろ?」

 

『"え…"』

 

「返事は?」

 

『"は、はい…"』

 

ひとまず組員に迎えに行かせることは確定したといえど、流石に今回ばっかりは考え無しが過ぎる

一度七神リンよりこっぴどく叱られた方がいいと、ナルミは思った

 

 

 

 


 

 

 

場所はアビドス郊外、現存する唯一の最寄り駅となった場所で

シャツとスーツズボンの若い男性は額に玉のような汗を浮かべながら苦悶の表情を浮かべる

 

"暑い…暑くて干からびそう"

 

先程の電話相手、ヤクザの組長であるナルミとの電話が終わって早一時間ほど時間が経っていた

いかに暑くとも飲み物を買おうにも駅に備え付けの自販機は壊れており使い物にならず、付近の店を探す余力もない

水分が取れないと思うと余計に暑く感じて止めどなく汗が流れ続ける

まさに【動いてないのに暑いよ~】な状況である

 

("月島さんが人を送ってくれなかったら、本当に不味かったかも…")

 

持ってきていた頼みの水分も飲み干し、辺りに無事な自販機もない

次第にぼんやりとした鈍い痛みが頭に走り、自身が軽度ではあるが熱中症に陥りかけていることを嫌でも理解できた

 

("…ん?")

 

そんなとき、ふと視界の端に人影を見つけてそちらへと視線を移す

そこにいたのは黒の喪服のようなドレスに身を包んだ長い銀髪の少女、物鬱げであまり感情の読み取れない表情をした彼女は少し離れた建物ある辺りからこちらをジッと凝視していた

砂漠と言う現在地から見ればかなり異様な出で立ちをしており、その姿は一見して亡霊のようにも見えるが

彼女の頭上を照らす曇ったようなヘイローが彼女が亡霊ではなく生徒であると言うことを呈していた

 

"あの…?"

 

距離としては100mも離れていないため聞こえそうな距離ではあるが、声をかけても特にこれといった反応もなく

しばし見つめあってから満足したように少女は建物の影の方へと消えていく

 

"ま、待って…!"

 

何故か先生は、その少女を追わなければいけないような気がして

彼女が消えた建物の奥、その裏路地へと駆け足で追いかけた

 

"待って!止まって!!"

 

路地に入れば近くの曲がり角へと消えていく少女、それを追って行けばさらにまた別の通りへ消えていく少女の姿を

先生は限界の近い身体を引きずるように追いかけていく

 

気がつけば──

 

 

"あ、あれ…ここは…?"

 

どれほど彼女を追いかけていただろうか、とうの昔に市街地を抜け

先生はアビドス砂漠の真っ只中に一人ポツンと取り残されていた、先程まで見えていた少女の後ろ姿もこんな開けた場所である筈なのに見る影もない

 

("あー…自覚したら身体が、詰みってやつかな?")

 

バタリと先生はその場にうつぶせで倒れ込む、酷く頭がボーッとして

地に面した身体は灼熱の砂の上に倒れ込んだにも関わらず、不思議と熱さは感じなかった

 

("動くなって言われてたのになぁ、月島さんの忠告を素直に聞いておくべきだったなぁ…")

 

もはや自由の聞かない身体ではタブレット端末──『シッテムの箱』にて現在地を知ることも助けを呼ぶことも叶わない

戻ることも進むことさえも今は出来そうになかった

 

("アビドスの子達にも…結、局…会えないまま…か")

 

徐々に遠退いていく意識のなか、まだ見ぬ自分たちを呼んだアビドス高等学校の生徒達にごめんと謝って

先生はゆっくりと目を閉じた

 

 

 


 

 

──prrrrr

 

ほぼ同時刻、月組の事務所に備えられた電話が鳴り響き

電話番のいない本日はナルミが受話器を取った

 

「─はい、月組」

 

『姐さんッ大変です!大変なんです!!』

 

受話器越しに酷く焦った様子の組員の大声に一瞬受話器を耳から話してナルミは渋い顔を浮かべて小さなため息を吐く

 

「…そんな大声出さんと聞こえとうよ、少し落ち着きんやい」

 

『あ、す、すいません…でも大変なんです!』

 

嗜めるように言ったナルミに意に介さずと言った様子の電話相手、アビドスへ向かった数名の組員の一人に苦い表情を浮かべながら

受話器を耳と肩で固定しながら内ポケットからタバコを取り出して1本咥え込む

 

「おー、ほうか

ほんならなんがあったんなら?」

 

『アビドス駅とその周囲に先生がいないんですよ!』

 

「…あ!?」

 

しかし続く報告に、ナルミは思わず咥えていたタバコを取り落とす

受話器は落とさなかった為に、幸か不幸か状況の詳細がナルミへと告げられた

 

『着いたのは結構前なんですけど、どこ探しても先生がいないんですよ!』

 

 

「……」

 

『ねぇ…姐さん、これどうしましょう?』

 

不安そうに、それどころか僅かに声を震わせながら続ける組員を安心させるべく

ナルミはゆっくりと深いため息を吐いてから口火を切った

 

「状況はわかった、ほんなら1人2人駅に残して

他の奴らはアビドス高等学校、もしくは市街地の方を探索せぇ

こっちは連邦生徒会の方に連絡して安否確認が取れんか聴いてみるわ、最悪わしが直接そっちに向かうことになるかも知らん」

 

『わかりました!』

 

指示を聞いて、『失礼します』と電話は切れる

回線が完全に切れたのを確認し、キョロキョロと周囲を見渡して事務所に誰も残っていないことを確認してから

ナルミは持っていた受話器を固定電話へと叩きつけた

 

「あンのバカ助がぁああッ!動くな言いよったろうがッ!!ジッとしとれんのんかッ!!?」

 

誰の目もなく、気を張る必要の無くなったナルミの間違いなく今日一番の怒号が事務所内に響き渡った

 





なんかこの作品の構想を練っている間に、今まで長らく実装待ちとなってた生徒が続々実装されて
これこの作品どうしよって迷ってた時期もありましたが

『この作品世界線でのキヴォトス、並びに生徒達はこう!所詮二次創作!原作とはほぼ関係ない!!文句ある!!?』ってスタンスでやっていこうと思います

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