渡世者のアーカイブ 作:誰かのサブ
メインの方の息抜きで書いてるから内容そんなに無いのに結構間が空いてしまった
まぁ息抜きにきちんとした投稿ペースを求めんで貰えると助かります
『──現状、先生本人、及び先生の身柄を保護したという連絡はこちらでは受けていません』
「…ほうか」
部下から先生失踪の連絡を受けたナルミは、まず真っ先に連邦生徒会へ問い合わせをかけたものの
電話を変わった七神リン首席行政官より足取り不明の返答を貰って内心で深いため息を吐きながら通話を切る
(やっぱアタシも行かないかんよなぁ~)
考えれば考えるほどため息が出る、一体なぜ自分がこんな無駄苦労をしなくてはいけないのだろうか
しかし迎えを寄越すと言ってしまった手前、もし先生を見つけることが出来ずに死なれでもしたら下手打ちになるのではないかと考えると
やはり責任者の自分が出るしか無いか、とようやくにして重い腰をあげる
…とはいえ───。
(砂漠に行くっちなると前準備も必要やけん…流石に今日の今日は厳しかね
最悪日を跨ぐこつ考えりゃ宿泊先も考えないかんし…)
ナルミは何度目かわからないため息と共に未だ使いなれないスマホの電話帳からお目当ての相手を見つけると迷わずにタップする
相手も常に閑古鳥の鳴くアビドスで商売をしてる身な為、基本暇なのか数コールもしない内に回線が繋がる
「──あ、親っさん急に電話してすんません
実は折り入って頼みがあるんですが───。」
翌日、朝一番に事務所の電話が鳴り
アビドス行きの準備を進めていたナルミに代わりその日の事務所当番が電話に出た
「──はい、月組」
準備の手を止める事なく、その横で聞き耳を立てていたナルミは当番者が二言目には砕けた口調になったことから外部では無く身内からの電話であることに辺りを着けているとその目の前に受話器を差し出された事でピタリと動きを止めた
「アビドスへ向かった救助チームからです
先生はアビドス高等学校の生徒達に救出されて無事だったようですよ?」
「おー、ほうか」
ナルミは受話器を受け取ってから電話を変わった
「無事に見つかったんか?」
『あ、姐さん!そうなんです
一応発見されたときに熱中症にはなってたみたいですけど、今はほぼ回復してるみたいです』
「…まぁ死んどらんで何よりたい」
『…で、先生から何ですが連絡しようにも中々アビドスでゴタゴタに巻き込まれて連絡が出来なかったと謝ってました』
「元々アビドスには救援依頼で向かっとったみたいやけんね、まぁそれも仕方なかろ」
『それで何ですけど…はい?──直接話す?えぇ…??』
「…?なんか?誰かそこおるんか?」
電話越しに組員の少女が徐々に何かに対し困惑したような声をあげた事から、一緒に救助に向かった別の組員ではない第三者と一緒にいるとナルミは当たりをつけたところで
ここ最近聞き覚えのある声が電話から聞こえてきた
『"昨日はすいませんでした、せっかく助けを寄越して貰ったのに…"』
「…あー、まぁ無事やったんならそれで良かっちゃん」
電話を変わった相手は救助予定であったシャーレの先生であった為、おそらく組員達はアビドス高等学校に直接向かったのか等考えながらそんなことを言う
ナルミ自身、昨日は勝手に動いた事で先生に大しての文句もかなりあったのだが一晩寝た事でだいぶ溜飲も下がった
『"改めて別のお願いがあるんだけど、依頼できたりしないかな?"』
「いやお前…こっちヤクザやけんね?
そう言うのは…」
『"現状、月島さん達にしか頼めないんだよ"』
真剣な声色で返ってきた言葉に思わずナルミは唸ってから深々とため息を吐く
「…言うてみぃ、ほんなら」
『"今アビドスに来てる月島さんの組員の子達を、護衛といった形で雇わせて欲しいんだ
もちろん、正規の値段は払うから"』
「あー…まぁそれくらいやったら」
シャーレの先生はまだキヴォトスに来て日が浅い、ともなれば手を貸してくれるようなツテも限られているのだろう
アビドス高等学校にいる以上はアビドス高等学校の生徒達が護ってくれるだろうが、そもそもあの学校は生徒数が片手の指で収まるくらいしかいない
それが周囲の不良グループなどに連日のように襲撃を受けてるといった話も聞くので戦力は一人でも多く欲しいのだろう
「…話しはわかった、ほんなら七神の嬢ちゃんの方に連絡入れとくけん」
『"ありがとう!"』
「…それと、わしも今日から用事で数日そっち行くけん
詳しい話はその時詰めよや」
『…え?』
遅れて返ってくる困惑した声色にナルミは満足げに電話をガチャ切りすると荷物を手に立ち上がる
「ちょっと親っさんところ数日行くけん、留守番頼むわ」
「お一人で、ですか?」
「あんま大人数で押し掛けても親っさんに気ィ使わせるけん、わし一人で良か」
残る組員に声をかけ、いざ出発しようとするもそこに当番の組員達は待ったを掛ける
というのもナルミは自身の家業道具である拳銃こそ持ってはいるものの、ヘイローのないただの大人の女であるからだ
もしも銃撃戦に巻き込まれ、流れ弾の一つでも致命傷を負いかねない
その事をわかっていて、ナルミはニッと笑みを浮かべた
「心配要らんよ、少なくとも
「…それもそうですね」
ナルミがキヴォトスに来てまだ半年程、さらに言えばブラックマーケットに事務所は構えていてもナルミ本人は割と各地を転々としてる為
実際にブラックマーケットで活動していた期間は精々半分の3ヶ月程が良いところだろう
しかしその僅か3ヶ月にして、ブラックマーケットの不良生徒やチンピラの市民達は深く刻まれた恐怖の記憶がある
それは「【悪魔のキューピー】月島ナルミには手は出すな」である、本人が銃弾一発で致命傷になり得ない脆弱な肉体ながら
何故か彼女の攻撃は生徒やロボットに至るまで幅広く通る、ちょっかいをかけた事を最後に二度と歯向かう気が起きないまで徹底的に叩きのめされた者の数は優に三桁を越えた
ならず者の蔓延るブラックマーケットの者の達でさえ、ナルミと言う人間は理解不能な理不尽の権化であり
彼女が一度車に乗って街に繰り出せば前の車は無条件で道を空けるし、通行人はひたすら壁と同化する
ブラックマーケットにおけるナルミの白いクラシックモデルのオープンカーは恐怖の象徴であった
「ちょくちょく定時連絡は入れるけん、行ってくるたい」
「無事に帰ってきてくださいね?」
組員達の声に片手を上げて事務所を出てから、その目の前に斜め付けされた自身の車に乗り込む
鍵は指しっぱなしだ、どこの学園からも治外法権な治安最悪のブラックマーケットでさえ
彼女の車に手を出すバカな輩はいない、そんなことをすれば地獄の果てまで追われる身になるだろう事は想像に容易いのだから
「~♪」
鍵を捻って短いクランキングの後、エンジンが掛かる
V12気筒特有の澄んだ音色に口元を緩めてシフトレバーをDの位置へ叩き込むとアクセルを踏み抜いた
一方アビドス高等学校へたどり着いた先生は昨日に引き続き数多くの問題に頭を悩ませていた
今朝からナルミの寄越した組員達が戦力として増えた為に本日のヘルメット団からの襲撃こそ昨日に比べて楽に対処できたものの、それでも人手不足や借金問題が残っている
加えて…
「…なによ」
"あ、あぁ…うん、別に
気にしないで?"
ちらりと視線を向ければキッとした鋭い表情をアビドス高等学校1年、廃校対策委員会の黒見セリカに向けられたことで内心苦笑いを浮かべる
ここへ運ばれた当初は救援要請を受けて来たと言うこともあり、他の生徒…2年の十六夜ノノミや先生をアビドス高等学校まで連れてきた張本人の砂狼シロコ
救援要請を出した1年の奧空アヤネの3名からは割と好印象であったように思えるのだが
態度に出さないまでも3年の小鳥遊ホシノや現在進行形で態度に表れている黒見セリカ等警戒している生徒もいなくはない
("…やっぱりポッとでの大人じゃ信用はされない、か…
この辺は私の頑張りで認めてもらうしかないかな")
ついで視線を向けた先には対策委員会の部屋の隅で自分の愛銃の手入れに勤しむ5名の少女達である、ネクタイレスの男物のスーツに身を包み
襟には【月】と書かれた丸バッチを着けた彼女たちは現在先生の護衛としてここにいるナルミの寄越した組員達で名前をそれぞれ菅原フミ・松方ヒロミ・金子ノブヨ・中村スズ・土居キヨと言う
"え、えっと…みんなもこっち来て一緒に話さないかな?"
現在は1年生の奧空アヤネ主導の定例会議の途中であったのだが、5人は会話に参加せずに隅っこで黙々と作業を続けていた為
助け船を出してもらう意図も兼ねてそう提案してみたのだが一度顔を上げた菅原フミが首を横に振った
「すんませんが、あっしらはあまりカタギさん達に迷惑を掛けるなと姐さんより厳命されておりますので」
"話すくらいなら迷惑にならないと思うけど…"
「渡世の人間とカタギさん達が関わって、泣きを見るのはいつの時代もカタギさん達ですよ
関わりは最低限に、関わりがなければかけようにも迷惑はかけれませんからね」
"……"
あくまでも静観を崩さないその姿勢に先生は思わず口を噤んだ、確かに本来であるならばヤクザが一般市民へ関わると大抵ロクな事にならず
割りを食うのは関わりをもった一般市民の方である
カタギに余計な飛び火を食わせない為にも、そもそも関わらない
そう語るフミの言葉は一見してとても正しいもののように先生は感じた
しかし
"…それは、少し寂しい生き方じゃないかな"
「ははっ、そう見えるかも知れないですね」
それは逆を言えば酷く閉塞的な生き方でもある、凡そ子供が納得して良い生き方ではない
そう思って言葉を紡ぐが、彼女たちはニコニコとそれらを受け入れた上でさして気にした様子ではなかった
「良いですか?先生
先生の言うそれは、明日の身の保証がされた人間が気にすべき事ですよ
無論、それが悪いこととは言いませんが…」
"…それは、どういう──"
フミの言葉に先生は思わずピタリと固まり、直ぐにその言葉の意味を聞き返すとフミはいつの間にやら会議を止めてこちらの様子を伺うようにアビドスの5人がこちらを見ている
「…例えばここ、アビドスは生徒が少なく寂れた学園です
しかしそれでも学園である以上は、生徒は身の安全が保証されます
わかりますか?この言葉の意味が」
"…いや"
「どれだけ寂れていようが、運営がギリギリであろうが学園は学園です
当然、所属する生徒は学生として身分が証明されます、では逆に
退学等で学籍を失った生徒はどうなると思いますか?」
学籍を失った生徒、そうフミが続けたところで察しのついたアビドスの5人は少し驚いた様に目を見開く
反面、まだキヴォトスへ来てまもない先生はピンとこないようで怪訝そうな表情を浮かべていた
「キヴォトスは学園都市です、生徒の身元は学籍によって保証されます
早い話、学籍が無いのはキヴォトスでは戸藉を失うのと同義です
人は生きていくだけで金が掛かりますが、学籍の子供をまともな会社は雇いません
そうなれば自然と、他者を傷つける事で日々を生き長らえる生活を送ることになります」
それこそがキヴォトスにて問題になってるヘルメット団やスケバン集団を筆頭にした
退学者たちで構成された不良グループの実情である
無論、そのほとんどは自身の狂暴性等が招いた身から出たサビが回り回って自分に帰ってきた場合が殆どである
しかし中には女子生徒しか存在しない学園内特有の陰湿さに耐えきれず、または政治戦争に負けた、または嵌められたり単純に学力がついていかなかったり等と言った理由の者も確かに存在している
しかし残酷なのは、如何なる理由であれ学籍を失った時点でキヴォトスでは【学籍無し】と一括りにされる
早い話が人権を失うのだ
"──まさか、君達は…"
「はい、月組構成員は
かつて自分の所属していた学園から除籍処分を受けた者達が大半を占めてます」
銃撃戦が日常茶飯事、基本大人は信用できないキヴォトスにおいて
学園を追い出された者達は腕が余程立つものでない限り一人で生きていく事など不可能である
そういった手合いは徒党を組んで生きていくわけだがそれにも限界や各々の折り合いがつかなかったりと問題がある
その点で言えば絶対的な主としてナルミが君臨し、その圧倒的な暴力性やカリスマ性に心酔して着いていくことを選ぶ月組の構成員達にはそれが無い
ヤクザと言う組織上、中にはどうしても悪さや問題行動をがやめられない者達も存在するが
耐えるならば元は悪さを100起こしていた子供が、月組で面倒を見る事で30に抑えられ
更に他組織に大きな顔をされては叶わないからと、地区で悪さをする余所者がいれば構成員達が率先して潰して回る
月組のシマであるブラックマーケット484番通りからその先全て、あるいはそれ以外のマーケット全域に潜む不良や悪い大人達ですら月組の見えるところでは悪さが出来ないほど絶大な影響力を持っており
ヤクザという組織でありながらも治安維持に貢献をしているところが行政側から必要悪として黙認されている側面もあった
"だけど、特にヤクザらしいことはしてないよね
私の方でも君達の組織は少し調べさせて貰ったけど…"
初めて七神リンに紹介されたあの日から、先生は月組という組織と
『姐さん』として組長に君臨するナルミのことは自身の優秀なOSの入った端末を通して可能な限り調べ上げた
そこでわかったのはヤクザを名乗る組織でありながら
その実、本当のヤクザの様にアコギな商売は一切と言っていいほど行っていないという点である
「いかに仕事は全うであろうと、ヤクザという組織自体が恨みを買いやすいんですよ
…姐さんは、あっしらがいつか大人になって社会に出る時に買った恨みがどこかで足を引っ張るだろうからと
むしろヤクザらしい仕事は禁止されてます」
本来、金になる仕事であれば何でもするのがヤクザの仕事である
博打に路商、不動産に飲食店等の店舗経営
果ては用心棒・恐喝、金貸しに風俗、薬物売買と多岐に渡る
その中でも特に恨みを買いやすい金貸し・風俗・薬物売買は組長のナルミによりNGが出されており
薬物に至っては手を出した瞬間如何なる理由があっても即時破門とまで言われている
また、じゃあ恐喝は良いのか?となるかもしれないがこれは一般人やちゃんとした企業を相手にした場合はNG
悪い噂の絶えないような真っ黒な企業を相手に絞れるだけ絞ってやる分にはよしとされている
聞けば聞くほどに、子供たちのその後を考えて組織を整えているナルミに思わず内心で舌を巻く
「本来、学籍を失った生徒は野垂れ死ぬのを待つか
裏社会に飛び込んで使い捨てられるかのどちらかです、学籍を失ってから行方不明になった元生徒は結構いますからね」
"でも君達はそうはならなかった"
「はい、あっしらは姐さんに会えましたから
野垂れ死ぬか使い潰されるかしかなかったあっしらに、姐さんは居場所をくれました
食うに困らない程の仕事を任せてくれました、これ以上を望んではバチが当たるというものです」
そうしてニッコリと微笑んで締めくくったフミを見る限り、それが先生の言った「寂しい生き方かもしれない」と言う言葉に対したアンサーだったのだろう
フミは唖然としたようにこちらを見ていたアビドスの5人へペコリと頭を下げた
「すんません、長話が過ぎましたね
つまらねぇ話で会議の腰折って申し訳ない」
「い、いえ…」
「不良ちゃん達にも色々とあるんだねぇ~」
フミの言葉に反応を示したのは司会進行の一年生、奥空アヤネと最年長の三年生の小鳥遊ホシノである
他には十六夜ノノミはニコニコとした表情を崩さず、砂狼シロコは掴み所のないクールフェイスでフミ達をジッと見つめ続けている
黒見セリカは未だ動揺したように表情を苦しげに歪めていたがすぐにかぶりを振った
「その、私が言えた事じゃないと思うけど
なんか困ったら言ってきなさいよ、力になるから」
特にセリカはしっかりしているようでその性質はとても素直で悪く言えば騙されやすい、これまでも悪い大人に散々いいように騙されてきただけに感情移入してしまったのだろう
それはセリカだけでなく、おそらくアビドス生徒の他の4人も同じで
先程まではどこかピリピリと張り詰めた空気でフミ達に対しても警戒心を露にしていたが、完全に警戒を解くといかないまでも多少なり受け入れられているようにも見えた
マジで更新までに色々と実装され過ぎてもはやプロットだだ崩れですが、そのまま突き進みます
原作はあくまで原作世界線のキヴォトスです、この世界線はヤクザの姐さんが追加された世界線なので原作とは違います
苦しい言い訳に聞こえるかもしれませんがこのまま進めますよ
はい、感想・評価・お気に入り等
この作品、ちょっといいかもって思ったら
是非是非押したってちょーだゃーよ