あなたと一年戦争   作:ネムノキ

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あなたはジオン軍人です2

 宇宙世紀0078年7月30日。太陽・地球系ラグランジュ3にある小惑星『ベルクヴェルク』に建設された基地の第一期工事は完了しました。

 今のベルクヴェルクは、チベ級重巡洋艦(格下げされました)が余裕で入る大型ドック四基、ザクⅠの生産ライン二本、オッゴ生産ライン一本と一般市民六万人、ジオン軍人二千人が住む立派なコロニーになっています。

 なお大型ドックはジオン公国に持ち帰ったり基地建設の資材確保のために掘った穴を流用したもので、あなたが意図して建設させたモノではありません。そのため防弾性能は対デブリ装甲程度のヨワヨワなモノです。港湾部分の防弾性能はちゃんとしているのですが。

 

 そんなドックでは現在、総司令部から依頼された、ヤップ級大型輸送艦が四隻、建造されている真っ最中。港湾区画では、先に建造されたムサイ級系軽巡洋艦八隻が艤装とシミュレータ訓練の真っ最中。

 いよいよ一年戦争か、とあなたはボケーッと考えています。どうせジオンは負けるし連邦は滅茶苦茶になるし最後は月光蝶で人類滅亡だー! と投げやりに考えているため、積極的に動く気がないのです。

 動く気がないのに仕事をしてしまう辺り、前世から残ってしまった社畜精神が頭をのぞかせているのですが、どうやらあなたは見て見ぬふりをしているようです。

 

 8月20日。

 とうとうあなたとデギン艦隊、そして完成したムサイ八隻とヤップ四隻はジオン公国への帰還の途に就いてしまいました。ヤップの中身は、

・ザクⅠ一〇〇機

・120mmザクマシンガン二〇〇丁

 ・弾倉二千

 ・砲身四〇〇

・ヒートホーク二〇〇本

・オッゴ四〇機

・その他医療品や燃料等

 がギッシリと詰まっています。

 オッゴと医療品はあなたの『とある思惑』のために用意したもので総司令部からの注文があった訳ではありませんが、その他は総司令部の発注通りの数です。

 

 

 

 宇宙世紀0078年11月26日。

 あなた達はジオン公国に到着。注文の品の納品も終えて暇になったあなたは、部下をジオンのコロニー中に走らせて、自身は月面都市フォン・ブラウン市に来ていました。

 フォン・ブラウン市を観光ついでに、あなたは町工場レベルの工場を見学したり買収したりしています。買収された工場が製造しているモノは『義肢』『義眼』『小型テレビ』『医薬品』『缶詰』などなど。ついにはフォン・ブラウン市付属で鉱脈の枯渇から廃棄計画の進んでいる都市オルドリン市までも買収してしまいます。

 監視していた連邦のスパイはあなたの行動を、

 

「戦争の準備」

 

 だと見抜きましたが、当時キシリアとその部下の暗躍対策で忙し過ぎたので、あなたの動きを黙って見ているしかありませんでした。

 

 12月25日。

 あなたの送迎のため、『ヒンデンブルク』『ナーエ01』『ナーエ02』『ヤップ13』といういつものデギン艦隊の艦艇がオルドリン市に入りました。

 オルドリン市はあなたがフォン・ブラウン市で買収した町工場や、部下がジオン公国にて買収したり味方に付けたりした企業の引っ越しで大忙しです。『ヤップ13』どころか『ヒンデンブルク』まで荷運び役になっているほどで、あなたは半ば思い付きで動いたことを、ほんのちょっとだけ後悔しました。

 

 

 

 なんてしている間に宇宙世紀0079年1月3日。ジオン公国は地球連邦に宣戦布告、後に『一年戦争』と呼ばれる激戦の始まりです。

 『ヒンデンブルク』『ナーエ01』『ナーエ02』からなるデギン艦隊主力はその日。たまたまオルドリン市上空を通りがかった、サラミス級巡洋艦二隻からなるパトロール艦隊に奇襲をしかけ、一隻のエンジンを破壊後拿捕、一隻を降伏させました。このパトロール艦隊は連邦軍の左遷先でやる気がなかったことが勝因です。

 

 降伏させた二隻をオルドリン市で収容、鉱山労働者の寮だった区画を転用した捕虜収容所に入れて形だけの尋問をしている間に、1月10日。『ブリティッシュ作戦』コロニー落としは失敗。シドニーが街から湾に変わったりしました。

 ブリティッシュ作戦の失敗は、デギン艦隊を動揺させませんでした。義肢や医薬品といった、長期戦で不足するモノを優先的に確保させられていたことから、あなたが短期決戦であるブリティッシュ作戦の失敗を先読みしていたことは明らかだったからです。

 なおそんなことすら気付かないあなたは、コロニー落としやその失敗に対して、特に何も感じず引っ越し作業を続ける部下達に、

 

「こいつらもジオン星人なんだなー」

 

 と勝手に絶望したりしています。

 

 1月13日、再度のコロニー落としの準備がオルドリン市の目と鼻の先、サイド5にて始まります。デギン艦隊も存在を思い出されたのか、総司令部から出撃依頼がなされました。

 15日、ルウム会戦が始まる中、デギン艦隊は後ろの守りを任され、警備以外暇していました。

 友軍が敵軍と激しい砲撃戦を繰り広げ汚い花火があちらこちらで出来る中、デギン艦隊と同じように暇してる部隊をあなたは見つけます。

 

「何しているんですか?」

 

 気になったあなたは、その部隊に通信を送ります。

 第603技術試験隊を名乗るその部隊は、ヨルムンガンドとかいうでっかい大砲の試験を行いたいのに、必須の観測データが来ず困っているそうです。

 

「よし手伝おう!」

 

 でっかい大砲という『男のロマン』に惹かれたあなたは、偵察型オッゴを前線近くに、おまけの武装型オッゴを護衛に派遣。そのデータを603試験隊に直送してやります。

 すると待ってましたとばかりに、ヨルムンガンドは砲撃を行い、一射目にしてマゼラン級戦艦を貫通・爆沈させ、かすめた二隻のサラミス級をも轟沈させます。でっかい大砲は最高だぜ! 『ヒンデンブルク』艦橋は大興奮です。

 冷却に時間がかかる上に砲身の負荷が酷いらしく、ヨルムンガンドはルウム会戦にて六発しか砲撃出来ませんでした。しかしそれで戦艦三隻、巡洋艦十一隻を撃沈しているので十分でしょう。

 と思っていたところに総司令部から怒鳴り込まれます。

 

「あれは高過ぎるから使いたくなかったんだ!」

 

 なんとヨルムンガンドの砲撃は、一発でザクⅡが三機も作れてしまうほどお金がかかるというのです。そんなお高い大砲をバカスカ撃てば、ジオンの財政が死んでしまいます。

 それ以上にモビルスーツの強さを知らしめたいという総司令部の思惑もあって、ヨルムンガンドはただの囮に使うはずだったそうです。

 

「兵器なんですから使ってこそでしょう」

 

 あなたはしたり顔で言い訳しましたが、内心はガクブルでした。

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