あなたと一年戦争 作:ネムノキ
宇宙世紀0079年1月16日。
再度のコロニー落としは失敗したものの、ザクの力でルウム会戦に勝利したジオン艦隊は追撃戦に移っています。
そんな中、あなた率いるデギン艦隊は、『ヤップ13』にオルドリン市に移った企業の保有する船、降伏させておいたサラミス級一隻に、ルウム会戦後に鹵獲・修理したマゼラン級一隻、サラミス級三隻も追加で動員して、崩壊しつつあるサイド5から必死の救出任務に当っていました。
原型を留めている艦艇を爆破したり発砲したりしないよう処理後、艀替わりにして避難民を詰め込んだり。艦の外側にシャトルをくくりつけたり。オッゴで脱出ポッドを牽引したり。とにかく出来ることはなんでもやって、サイド5の人々をオルドリン市に運び込みます。
ですが避難らしい避難活動が出来たのは17日まで。その後はシェルターに生き残ってしまった人々を、デブリの海を切り開きながら救助する形で続けます。
総司令部からのストップが入る25日まで、デギン艦隊はサイド5の救助を続けました。
このような行動を取ったのは、ベルクヴェルクの建設中から現在まで、人員不足から困っている経験から、
「どうせサイド5なくなるからそこから人持って行こう!」
という身勝手な計画を内心で立ててのことでしたが、そのことをわざわざ誰かに言ったりは、時間的余裕がなかったのでしませんでした。
そのため外面的にはただの救助活動にしか見えず。人道的に見えるあなたの動きに共感したオルドリン市の人々は自発的に船を出し。更に捕虜の中からも「救助だけは」と協力する人が出て。
お陰で十八万人の民間人と四千人の捕虜、五百人のジオン負傷兵を得ることが出来ましたし、フォン・ブラウン市と安価で食品医療品を購入する契約も結べました。
こうなった原因をあなたはいまいち理解していませんでしたが、まあ便利だからヨシッ! と気にしないことにしました。
ジオンが捕虜にしたはずのレビル中将が何故か『ジオンに兵なし』なんて演説をしていた1月31日。救助活動と負傷者への応急処置が終わったオルドリン市では、人体実験? 人体実験、かなあ……? 一応は人体実験に分類されることが行われはじめました。
それこそ『義肢の高性能化』です。
救助した人々のうち、ジオン軍人は総司令部が回収していったので、連邦軍人の捕虜やサイド5の民間人の希望者相手に、より使いやすい義肢や義眼、義耳を開発しては使わせてフィードバック、改良を繰り返しました。
リハビリには、ルウム宙域で回収したデブリの選別や救助作業で使った元艦艇な艀の解体・修理作業を中心にさせて、それでも物足りない者は鹵獲・修理した連邦艦から武装を抜いて格納庫や貨物庫に変えた船を貸し出し、ルウム宙域でオッゴに乗せてデブリ回収をさせます。
リハビリもデブリ回収もジオン軍人たるあなたが言いつけたことですが、不思議とサイド5難民は不満を口にしませんでした。
あなたは、
「手足とか目とか、ないよりあった方が便利でしょ」
程度の感覚でいます。そして戦争で手足が飛ぶのはよくあることだと前世知識から理解していたため、その不便をなくすために戦前から準備していたのですが、周囲は勝手に深読みしていました。
義肢や義眼を、例えば脳波なんかで動かせる技術があれば、それを流用した時とんでもなく強くなる兵器があります。そう、モビルスーツです。このことはザクⅠがロールアウトしてから度々言われていたことです。
デギン記念研究所の部下達は、義肢や義眼開発にかこつけてモビルスーツを脳波コントロール出来る技術を造る気だと、あなたの動きを理解していました。
サイド5で救助された人々は、決死の救出作業の後、高価で最先端の義肢を与えてくれたデギン記念研究所に感謝していましたが、それとは別に故郷を再建したい、という意思もありました。
なので直談判してみたところ、
「とりあえずデブリ回収からしたらどう?」
と、再建のための第一歩にGOサインを出してもらえ。そのための作業用ポッドや船(鹵獲した連邦艦)まで貸し出してくれると言います。
だから喜び勇んでデブリ回収に乗り出しましたし、デブリ選別もリハビリに丁度良いと頑張りました。
1月31日の『ジオンに兵なし』演説で講和会議は破綻し、代わりに『南極条約』が結ばれ戦争における様々なルールが定まりました。
その直後2月1日に地球方面軍が設立され、7日に地球降下作戦が始まったことで、兵站線の維持程度しか出番のない宇宙攻撃軍への予算や物質の配分は酷く削られるようになりました。
そこへあなたは交渉を持ち。ザクⅡF型の製造ラインひとつを安価で売却してもらい、そのラインで製造したザクのほとんどを宇宙攻撃軍へ売却。またルウム宙域で回収後修理したムサイ六隻を宇宙攻撃軍へ譲渡、またこれから建造するムサイは優先的に宇宙攻撃軍に売却。代わりにサイド5でのデブリ回収に支障が出ないよう警備を強めてもらいました。
これにより、
サイド5でデブリを回収
↓
デブリでザクやムサイを作って売る
↓
売った金でサイド5難民を養う
↓
養われたサイド5難民がデブリを回収
というループを構築。あなたとデギン記念研究所は、そのループの余剰から勢力を拡大していく道を取りました。