あなたと一年戦争 作:ネムノキ
あなたは、ルウム宙域でのデブリ回収と、配下の組織であるデギン記念研究所、『ルウム同胞団』に『オルドリン組合』の統制や書類仕事に各所への根回しで忙し過ぎて、時期的に『機動戦士ガンダム』が始まっていることに気付いていません。何ならルウム宙域に後のデラーズ・フリートの『茨の園』が出来るはずだったことすら、忙し過ぎて忘れています。
サイド5難民からなる『ルウム同胞団』と、ルウム宙域のデブリに商機を見出したルナリアンからなる『オルドリン組合』がいつの間にか出来ていたことに驚きましたが、それ以上に驚いたのは、ルナツー司令官のワッケイン少佐とデギン・ソド・ザビの交渉ルートとして、あなたとオルドリン市が使われていることです。
交渉と言っても、捕虜交換や南極条約が守られているかの探り合い程度ですが、神経がすり減ることに違いはありません。
まあ、ルウム会戦後のサイド5で『決死の救出』を行ったせいで名前が売れ過ぎてしまったことが原因なので、悪いのはあなたです。諦めましょう。『決死の救出』はプロパガンダだ? それも込みで軍の給料を貰っているのでしょう? 諦めてください。諦めろ。
今あなたの配下にある兵力は、
・チベ級重巡洋艦『ヒンデンブルク(ザク8機)』
・ガガウル改級防空駆逐艦『ナーエ01』『ナーエ02』
・ヤップ級輸送艦『ヤップ13(オッゴ40機)』
・マゼラン級戦艦『ダスト01』『ダスト02』
・サラミス級巡洋艦『ヒロ03』『ヒロ04』
と鹵獲艦が増えていますが、その四隻は月に逃げたものの再建の見通しの立たないサイド1・2・4の難民のうち、ベルクヴェルクへの移民を希望した二万人を運ぶ船団の護衛に付いているので、使うことは出来ません。
またルウム同胞団の下に、兵力にカウント出来ない輸送艦改造型の艦船が、
・マゼラン級:四隻
・サラミス級:二十隻
と中々の数あります。その上で作業用のオッゴを一四〇機保有しています。これで武装があれば立派な艦隊ですが、デブリ回収作業に武装は邪魔でしかないので取り除かれています。
そんな艦艇から取り除かれたりデブリからサルベージされた武装の多くは宇宙攻撃軍、厳密にはソロモン要塞に売却されて要塞砲になったり機雷の原料になったりしています。ソロモン要塞に幾ら武装を売りつけてもソーラ・システムで焼かれるから実質〇個理論を内心に展開することで、あなたは自身のジオン軍戦争継続への多大なる助力を正当化しています。
その他これまでに宇宙攻撃軍へ納品した諸々の累計は、
・ザクⅡF:二百機と部品多数
・オッゴ:百機と部品多数
・ムサイ:十六隻
・その他弾薬多数
と多大な数になり。その利益とルウム同胞団の奮闘のお陰で、サイド5テキサスコロニーの再建が始まっているほどです。
テキサスコロニーという名前は、あなたの前世知識に引っかかる何かがありましたが、寝不足の頭と疲弊した身体で書類の山を倒すのがしんど過ぎるのにこれ以上仕事を増やしたくないので、スッパリ忘れることにしました。
あなたとあなたの派閥が仕事に忙殺されていた宇宙世紀0079年9月20日。ワッケイン少佐から緊急通信が入りました。
「月にいたはずのスペースノイド難民が一万人以上いない。何か知らないか?」
「ベルクヴェルクへ希望者を二万人移民させているところです。それとは別件ですか?」
反射的に返したあなたの発言に、ワッケイン少佐と映像に映る彼の部下達は大混乱に陥りました。どうやらワッケイン少佐らはベルクヴェルクの存在を知らないようです。
デギン公王から連邦政府へ話が行っているはずだ、とあなたは正直に言いました。ワッケイン少佐はその確認を取る、と通信を切りました。
翌日、顔を真っ赤にしたワッケイン少佐が怒鳴り込むようにあなたに通信を入れてきます。
「あの老いぼれ政治屋共! こんな大切な話を軍に回していないとか、頭スッカラカンなのか!?」
なんということでしょう! デギン公王から連邦政府へ伝えられていたベルクヴェルクの話は、連邦軍へ知らされていなかったのです!
通達中に一週間戦争が始まってそのゴタゴタからどこかで伝達ミスが起こったようですが、この重大な連絡ミスのせいで連邦の政府と軍の間に深い溝が出来つつあるようです。が、あなたは連邦軍人ではなくジオン軍人なので気にしないことにしました。
それはさておき。
ワッケイン少佐は、戦後で構わないからベルクヴェルクに連邦軍の憲兵隊を派遣したい旨を伝えてきました。戦後の話を、それも懐柔出来れば自分達の利にもなる話を断る必要もないので、あなたは戦後の連邦軍憲兵隊派遣を容認しました。
だってベルクヴェルクはまだまだ人手不足なのです。連邦軍からの監査を受けてお墨付きを得た上で、地球からの移民を受け入れられるなら、これほど都合の良い話もありませんから。
なおこの対談の余波で、アクシズや火星基地といったジオンの秘密基地の存在が早々にバレてしまうのですが、そのことをあなたが知ることはありませんでした。