あなたと一年戦争 作:ネムノキ
宇宙世紀も0079年10月に入り、連邦軍が本格的にモビルスーツを投入してくるようになりました。
モビルスーツだけでなく、モビルタンクにモビルポッド、戦闘機、艦艇と続々と新型を開発しては量産、前線に叩きつけてくるという連邦の底力に、あなたとその派閥はジオンの敗北を既定路線と見るようになりました。
ですがせめて良い負け方をしないと故郷が地獄になります。抵抗の一環として、デギン記念研究所はコツコツ開発していた新型モビルスーツを、ルウム同胞団によるデブリ回収艦隊の護衛に付けました。
新型モビルスーツの外観は、サブアームの二本付いたザクⅠです。
ですがこのザクⅠ、
・モノコック構造からセミモノコック構造へ変更
・装甲の一部に炭素複合材を採用
・装甲の一部を超硬スチール合金と炭素複合材の複合装甲に変更
→本体重量が50.3トンから46.2トンへ軽量化
・関節にマグネットコーティングを採用
・思考操作を全面的に採用
・全周モニターを採用
→滑らかで素早い動作を直感的に出来る
・コックピット周りの装甲強化
・コックピットを脱出ポッドとして射出可能
・対ビームコーティング塗装を全面的に採用
→サバイバビリティを大きく向上
・排熱をより効率的に推力に変換出来るシステムに更新
→推力が40700㎏から44900㎏へ向上、燃費は大幅に向上、帰艦後の冷却時間を短縮
・ドロップタンクを装備可
・流体パルスシステムの配置等見直し。整備性も向上
と、もはや別物になっています。
デギン記念研究所は、このザクを『O・ザク』と命名しました。
早い話が、リユースじゃないサイコ・デバイスを積んだサイコ・ザクみたいなモノです。
デギン記念研究所は、O・ザクをベルクヴェルクの次期主力MSに採用することを決定。ベルクヴェルクでは、ザクⅠの生産ラインをO・ザクのラインに大改造しているところです。
O・ザクはザクⅠやオッゴより訓練時間が短くて済みますので、万が一ベルクヴェルクの民間人を動員することになっても、これでなんとかなるでしょう。
なお訓練の簡略化は兵士不足に悩むジオン公国にとって大きな課題となっており。仮にO・ザクを総司令部に提示すれば、ゲルググやギャンを差し置いて制式採用されることでしょう。しかしギレンの利になることをそこまでしてやる義理や恩をあなたは感じていないので、O・ザクはあくまでデギン派だけで使う予定です。
人が死に過ぎたせいでジオン兵の質は悪化の一途を辿っていますが、連邦軍の兵の質の低下も凄まじいモノがあります。なにせ連邦・ジオンが南極条約の補足事項で明記した『ルウム宙域での戦闘禁止』を平気で破る艦隊が出現するようになっているのです。
なおこの補足事項は史実にはなかったモノですが、あなたの仕事にとってこれは便利なものなので、これによって生まれる史実との差異にあなたは目を瞑っているようです。
まあそんな条約違反艦隊は、デブリ回収艦隊の護衛に付いたチベ級重巡洋艦『ヒンデンブルク』とそれに積まれたO・ザク八機に、艦艇もMSも動力炉だけ爆発しないよう上手く壊され。降伏させられた後ガガウルにオルドリン市まで曳航され。曳航先で解体されてソロモンの要塞砲になったり浮き砲台になったりア・バオア・クーの建材になったりしています。
捕虜の方は、考え無しに敵に資源をプレゼントしてくれる奴らは連邦にいた方が良いので、優先的に捕虜交換に回しています。中には四回も捕虜としてオルドリン市に収容された兵士すらいるのですから、やはり連邦の人手不足も深刻なのでしょう。
10月4日。デギン公王の可愛がっていた、末っ子ガルマが戦死しました。
デギン公王は大きなショックを受けましたが、それ以上に6日の国葬で長男ギレンがガルマの死を政治的に利用したことに打ちのめされました。今更になって自分達が戦争をしていることを、殺し合いをしていることを、家族の死すら利用しなければならない立場を、理解したからです。
デギン公王はすっかり弱り、あなたやオルドリン市を使って講和の道を模索し始めます。そのことでギレン総帥に余計に睨まれてしまったあなたは「勘弁してよ」とため息をついてそれとなく不満を示してみせたら、報奨不足だと思われたのか准将に昇進させられました。違うそうじゃない。
改めて確認しますが、あなたはジオン軍人です。ですがあなたの所属はデギン公王直下の『デギン記念研究所』です。突撃機動軍や宇宙攻撃軍、総司令部ではありません。
つまりあなたは、キシリア派・ドズル派・ギレン派のいずれでもない『デギン派』とかいう原作では登場しない派閥に所属している訳です。
デギン派は小さな派閥で頭はデギン公王ですが、実働のトップはあなたです。それほど人がいませんし、デギン公王もまさか月面都市ひとつを占拠するまで派閥が成長するとは考えていませんでした。しかもこの調子なら、再建後のルウムすらデギン派に入ってしまいそうです。
ギレン総帥からすれば、己が手を出せない範囲で成長する、敵対する可能性のある派閥は不要です。ですがデギン派がなければ宇宙攻撃軍の再建はもっと遅れていたでしょうから、これの存在は認めねばなりません。
ギレン総帥は悶々とした不満を溜めていました。