あなたと一年戦争 作:ネムノキ
ギニアス・サハリン少将をオルドリン市の精神科に叩き込み。アプサラスⅢを修理しながら解析し。地球から脱出してくるジオン将兵を回収し。忙殺されている間に、宇宙世紀0079年12月23日になりました。
ここでようやくあなたは前世知識を思い出します。
「そろそろソロモン攻略戦だ!」
ソロモン要塞がソーラ・システムで焼かれて、ジオン軍がボロ負けする戦闘です。
ソロモン要塞が落ちると、オルドリン市とジオン公国との往来は不可能になるでしょう。別にそれは構わないしオルドリン市の降伏準備も進めているのですが、せっかく必死に助けてきた兵士達がソーラ・システムで蒸発するのはなんだか勿体ないと感じます。
なのであなたは、『ヒンデンブルク(O・ザク八機)』『ナーエ01』『ナーエ02』『ヤップ13(アプサラスⅢ)』を率いて、ソーラ・システムがあるであろう宙域へ進撃します。
予測していた宙域では、ティアンム中将率いる連邦軍第二艦隊がでっかい鏡を展開しつつ護衛に当たっていました。
「鏡ではなく、それを制御している艦を狙え!」
あなたの指示の下、O・ザク八機とアプサラスⅢ、『ヒンデンブルク』は突撃します。『ナーエ01』『ナーエ02』『ヤップ13』は念のため後方待機です。
ギニアス・サハリン自慢のモビルアーマーを、デギン記念研究所の技術でマイナーアップデートした『アプサラスⅢ改』とでも言うべきMAは、ソーラ・システムの鏡ごと艦隊を宇宙の松明に変えていきます。
サイコ・ザクモドキなO・ザクは次々に連邦艦を花火に変えていきます。ちょっと強すぎです。
『ヒンデンブルク』はそんな彼らが開けた道を堂々と進んで、射程に入った、大混乱の連邦艦にメガ粒子砲を叩き込むだけの簡単なお仕事を進めていきます。
『我て……』
ティアンム中将が第三艦隊とホワイトベース隊に送ろうとした通信は、ミノフスキー粒子に阻まれて雑音に成り果てました。
第三艦隊は予定時間になっても照射されないソーラ・システムにイライラしています。十分過ぎても照射されず、不気味に感じはじめたワッケイン少将(昇進した)は連絡艇を第二艦隊へ派遣。
『第二艦隊は壊滅しています! 繰り返します! 第二艦隊は壊滅しています!!』
ソロモン攻略戦が始まって三十分、連邦軍は当初の作戦が破綻したことを悟りました。
連邦軍第三艦隊は撤退をはじめます。たまたま進路の関係でホワイトベース隊が殿軍を務める形になり、ガンダムとアムロ・レイの活躍によって損害は軽減されましたが、それでも激しい追撃戦に第三艦隊は四割の艦艇を喪失。残る艦艇も戦えるのはうち半数といった有り様でした。
先のジャブロー戦により生産拠点が破壊されてしまった連邦軍に再建の見込みはなく。ルナツーに引きこもるしかありませんでした。
宇宙世紀0079年12月25日。
そんなルナツーに、グワジン級戦艦『グレート・デギン』が『ヒンデンブルク』をエスコート役にやって来ました。ジオン公国公王デギン・ソド・ザビの電撃的来訪です。
ワッケイン少将は、地球連邦軍最高指揮官とかいうイカツイ階級に就く継戦過激派のヨハン・イブラヒム・レビル大将が出てくると色々面倒臭くなると判断。独断でデギン公王と会議を始めました。
話は素早くまとまり、この日の18時付で連邦・ジオンの停戦が成立しました。
なおあなたはそんな胃の痛くなる会議でお茶汲みをしていました。いるだけで胃が痛くなり、会議終了すぐ後に胃薬を飲んだものの効きませんでした。ガッデム。
翌26日。
勝手に停戦を決めたワッケイン少将とそれを是とした連邦政府にブチギレながら、レビル大将はデギン公王と対談します。
「ところで、連邦軍の予算は大丈夫なのかね?」
開幕突っ込まれた爆弾に、レビル大将は黙るしかありませんでした。
この一年戦争、史実と違いあなたとデギン艦隊が連邦艦を降伏・鹵獲しまくり、捕虜を取りまくっては捕虜交換でお金と引き換えに渡していたこともあり、連邦軍の財政は史実以上に悪いです。
反面ジオンは地球から帰ってこれなかったはずの兵士計六十一万人を回収した(うち十八万人は戦死しましたが)ため、遺族に支払うお金が減っています。またソロモンやア・バオア・クーの建材に鹵獲艦を使えたお陰で、そっちの予算も少し浮いています。
なので予算の面だけから見れば、連邦軍はもう戦える状態にありません。ジオンも、出来てあと一会戦だけでしょう。
たった一会戦だけの差ですが、それが決定打となりました。
宇宙世紀0079年12月31日。
ルナツーにて、地球連邦とジオン公国の講和が成立。
ジオン公国は独立国になりましたが、地球連邦が加速させる宇宙移民を積極的に支援すると決まりました。具体的には、崩壊したサイド1・2・4の再建はジオン公国持ちです。
え? ギレン総帥が騒がなかったか、って?
彼なら、自分が読めなかったソーラ・システムの存在を、内心下に見ていたあなたが読んだ上で殲滅したせいで一時的に混乱。そこをキシリアに襲われて反撃したものの、この『喧嘩』の傷が酷くて二人揃って死んでしまったので、騒げる状態にありませんでした。
少なくとも、表向きは『そういうこと』になっています。
宇宙世紀0080年1月2日。
一年戦争関連の事務仕事をひと段落させたあなたは、ベルクヴェルクへの『帰国』の途に就きました。
そう、あなたがデギン公王について行ったのは、『サイド5』ルウムの再建を自分達がやっていたことを名目に、ベルクヴェルクとその周辺宙域を自治領にすべく交渉するためだったのてす!
……連邦もジオンもこき使ってくれたから、それくらいのご褒美を要求しても良いだろうとゴネてみたら上手く行き過ぎただけですが。
ともかく。
こうして一年戦争は終わりました。
ア・バオア・クーまで戦わなかったことでジオン残党が各地に散ることもありませんでしたし、連邦軍が肥大化出来るだけの戦果も理由となるジオン残党も存在しなかったためティターンズが出現することもありませんでした。
今太陽系にある三つの国家『地球連邦』『ジオン公国』『自由都市ベルクヴェルク』は、好き嫌いあるでしょうが、協力して宇宙に出ていくことでしょう。
あなた「なんかちがう気がする」