『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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九話

 

 紅い月が昇り、緑の月がそれを追うように続くと遅れて暗雲が渦を巻き、雷電竜が吠えた事で甲高い雷鳴と共に青白い光が寄空を切り裂き、雨粒の最初の一滴が大地に吸われる。

 

 今夜の雨は今、動いているゴブリンの群れにとっては天与の恵みであり、混沌の加護であった。

 

「GORRB!!」

 

「GOORBGRGO!!」

 

 もっとも普段においてはゴブリンは雨を罵っている。今日は自分たちにとって都合が良いので喜んでいるだけなのだ。

 

 夜の闇と雨に紛れて行動しているゴブリンの群れは獲物と定めている村を己が欲を満たすために侵略しようとしていた。

 

 

 

「GOROBOG!?」

 

しかして昨日までは無かったはずの柵によって行動を阻まれてしまう。物見役が報告した事とは全く違うので怒りのままに物見役を棍棒で滅多打ちにしながら、殺す。

 

 「GORBG!!」

 

ゴブリンを阻むために設計された柵のせいで通り抜ける事もよじ登る事も出来ないゴブリン。一匹が川に柵が無い事に気づいて飛び込んだが杭によって串刺しとなり、渡河は断念。

 

 

 そうして村を一周しようかというくらいに周りを移動していると……。

 

 

 

「GOROGRB……」

 

 柵の末端に他と違って紐が括られていないのを発見、しかも自分たちが通り抜けられるくらいの隙間があるのを発見。そうしてゴブリンの群れは村の中へと入り込み……。

 

 

 

「ふっ!!」

 

『GOROGORB!?』

 

 ゴブリンの群れが雨の勢いや風の勢いにも左右されずに投擲物が炸裂する間合いまで踏み込むのを待っていた投擲手が立ち上がり、傍に置いていた手で投げるのに丁度良い長さに調整した手製の投槍、石に瓦礫、ナイフに包丁に投擲用に切り詰めた農具、片手で持てる鍋や皿、使わない瓶など手に持てるだけのものを次々と手にとっては豪速かつ、精確に投擲していく。

 

 投擲物はその全てがゴブリンに炸裂する事でその身を穿ち、あるいは砕いて死体として地面に倒れさせていく。

 

 

 

『GORBB!!』

 

 完全にゴブリンたちに対して機先を制した投擲手は一方的に二十のゴブリンの群れを全滅させたのであった……。

 

 

 

「さてと……後始末だ」

 

 雨が止み、夜が明けるまで様子を見……その後、北の山周辺を探索し、洞窟や遺跡は無くとも何らかの仮で作られたゴブリンの巣があって、そこに生き残りがいないかの確認もしていく。

 

 後は荷車を購入し、投擲に使った物やゴブリンの群れが持っていた中で使える武器などを拾っていきつつ、ゴブリンの死体の始末や村人と一緒に杭や柵などの片付けもした。

 

「じゃあ、これで俺の仕事は終わりだ」

 

『ありがとうございました』

 

 仕事が終わったので村を去ろうとする投擲手に対し、村人たちは全員、頭を下げて礼を言った。

 

「お兄さん、ボク達の村を救ってくれてありがとう、大好きだよ」

 

寺院で育てられている黒髪の長い少女であり、投擲手に良く懐いている彼女は投擲手に近づき、礼を言いながら自分に視線を合わせるため屈んでいる投擲手に礼を言うと彼の右頬に口づけした

 

「こっちこそ素敵な報酬をありがとよ」

 

 投擲手は礼を言いながら、少女の頭を優しく撫でた。

 

 

 

「えへへ……お兄さん、ボクも大きくなったら、お兄さんみたいに皆を助けられる冒険者になるよ」

 

「それは光栄だ……楽しみに待たせてもらう。その時が来たら、一緒に戦ったりなんかもしよう」

 

「うん」

 

 そうして、二人で交易神に冒険者としての誓いを交わしたりすると村人たちに見送られる中、投擲手は去って行くのであった。

 

 その日の夜、少女は夢の中で聖剣を手にする夢を見ながらも朝になって起きるとその事を綺麗さっぱり忘れたのであった……。

 

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