雪山近くの村が出したゴブリン退治をしに向かい、そのまま消息を絶った令嬢の冒険者の一党の捜索に来たゴブリンスレイヤーに森人剣士に女神官と妖精弓手に牛人戦士と鉱人道士に蜥蜴僧侶の七人の一党。
彼等はゴブリンが雪山近くの村を襲って略奪を働こうとしていたところに遭遇。すぐに救援と討伐に動き、どちらも見事に達成できた。
しかし、ゴブリン達は死体をそんなに損壊してないし、そもそも一度村人たちを村の中央に連行するなど普段のゴブリンのそれとは違う行動ばかりをしていた。
ゴブリンにそうした指示をする知能を有した上位種がいる証だ。少なくともゴブリンロードのようにある程度、言う事を聞かせられる能力があるのだから……。
そして、村を襲ったゴブリンの数は二十で多いのだが、その行動からして村を襲ったのは大きな群れで本体がいる場所から来たのだとゴブリンスレイヤーは推測した。
ともかく、また夜にゴブリンの群れが夜襲を仕掛けてくる可能性は限りなく低いだろうが、油断はできないので備える事にして村で一泊させてもらうように頼んだ。
更にゴブリンの本隊がいる拠点にあたりをつけるために山の地図を貰う事にし、令嬢の冒険者の一党の情報提供も求めた。
その後、実はこの雪山の辺りはかつて火を噴く山であり、土を伝って火の精霊が水を温める事で温泉が出来ていた。
雪中に東屋めいて拵えられた屋根の下、石で囲まれた温泉が湯気を上げている。
洗い場には石を組んで作られた浴槽神の裸体があった。
そんな温泉に女性陣が入る事になった。その間、ゴブリンスレイヤーはゴブリン襲撃に向けた見張りをするし、女性陣が出た後に温泉に少し入る事にもしている。
寒さに種族柄、どうしても弱い蜥蜴僧侶にも身体が温まるので後で一緒に入るよう勧めたものの、『泥の方が性に合ってる』と断った。
「全てが終わった後にまた入らせてもらうとしようか」
温泉の心地をゴブリンスレイヤーは楽しみながら、終わった後にまた入らせてもらう事を決めた。
ともかく、ゴブリンスレイヤーは温泉を楽しんだ後、少しするとゴブリンスレイヤーの一党で集まり、皆で宿を取っている酒場で蜂蜜酒の注がれた杯に芋料理だけが並ぶ大卓を囲んだ。
「あんまり、歓迎されてないんでしょうか?」
「そんな事は無いと思いますけど」
いくら冬、雪に備えて節約せねばならないとはいえ、芋しか無い事に牛人戦士と女神官が疑問を口に出す。
「いんや、聞いた話だが前の冒険者がしこたま買い占めたらしい」
鉱人道士が頬杖を突きながら言った。
「そんなに?」
「ゴブリン退治に必要だ、つーてな」
「うぅん、そういうのって……」
「村人にとっては脅しのようなものだな」
「もしかすれば、必要であったのやも……」
「必要なんですか?」
「時と場合と状況によるとしか言えんな」
女神官と鉱人道士、牛人戦士に森人剣士、蜥蜴僧侶、皆の話の中で女神官からの問いにゴブリンスレイヤーは答える。
「巣穴を持たず、徘徊する部族も無いでは無い。追跡が長期に及ぶ事もあるからな」
「でもこっちは時間かけてられないわよ」
ゴブリンスレイヤーの言葉に妖精弓手が蜂蜜酒を舌で楽しみながら答える。
「巣穴の中は不明、数も不明、冒険者がまだ生きている可能性だってあるし」
「村人が攫われていないのは幸いだ」
そうして、ゴブリンスレイヤーは山の地図を広げる。ゴブリンスレイヤーが色々と細かく詳細を付け加えたりもしていた。
「猟師によるとゴブリンの住み着きそうな巣穴はここにあるそうだ」
「でもさ、村人が攫われていないならどうしてすぐに潜らなかったんだろ?」
「先の冒険者が何を考えたかは大凡の想像はつく。薬師の娘から聞けば件の冒険者は材木なども買い付けて言ったそうだ」
「材木……薪じゃねぇから燻すんじゃない……なんか拵えるためだよなぁ……で、食糧ってこたぁ」
鉱人道士はゴブリンスレイヤーの言葉に考え始め、そうして答えに辿り着く。
「ああ、兵糧攻めだ」
「……敵の数が多く、こちらが少数であろうと思うのですがな」
「有効な時は有効だ。だが、敵地に少数で乗り込んで殲滅しようとするときに使う手では無いし、そもそも、食糧の略奪を避ける為に依頼した村人から食料をせしめて行う作戦でも無い」
蜥蜴僧侶の言葉にゴブリンスレイヤーは複雑な感情を込めた返答をした。
「皆、教訓にしておけ。生兵法というのはこういう事を言う……俺達は補給が何もできない状況だ。速攻戦でいくぞ」
そうして、ゴブリンスレイヤーは皆へと巣穴への襲撃についての方針を言うのであった……。