『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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百九話

 

 ゴブリンスレイヤーの一党は雪山にあるゴブリンの巣穴の近くで突入前に寒さに震える体を温めるのとここまで移動する事で消耗した体力の回復に務めていた。

 

「(ちっ)」

 

 ゴブリンスレイヤーはゴブリンの巣穴となっている洞窟の入り口横に積まれた汚物を見て、内心舌打ちをする。

 

 汚物はぐちゃぐちゃに破壊された木の柵に括りつけられたように打ち捨てられた幾つかの冒険者の躯であった。

 

 装備も剥ぎ取られ、さんざん嬲り者にされ、晒された間に獣に貪られていた。

 

 一番酷いのは森人と思わしき女の死体である。よほど抵抗したからか死して、なお暴力に晒されており、耳を只人のように切り取って口に押し込むという悪辣さを発揮していた。

 

 

 

 消息不明である令嬢冒険者の一党の中には森人の女性がいる事は聞いているのでやはり、壊滅とみて良さそうだと思考もした。死体の数はその令嬢冒険者の一党の全てでは無いのも数える事で確認していた。

 

 

 

「良し、行くぞ」

 

 ゴブリンスレイヤーが声を出せば、皆が頷き、準備を整えて洞窟の中へと突入するのであった。

 

 ゴブリンの巣穴となっている洞窟の中は斜面に穿たれている横穴により、雪も風も遮られ、暖かさがあった。奥から漂う肉と糞尿の腐った異様な匂いさえなければ心地良ささえあるだろう。

 

 

 

「ん、いきなり下り坂か」

 

「けど、向こうは上り坂になっていますよ」

 

 前衛を務める森人剣士に牛人戦士が言い合う。

 

 実際、小鬼の巣穴は入ってすぐ、下に掘り抜いたかのように大きく下り、また上がっているという随分と激しい勾配になっていた。

 

「ほう、こら雨避け、雪避けだの……吹き込んでくる雨雪を此処で溜まるようにして、中まで入らんようにしておるんだ」

 

 鉱人道士が洞窟の構造を直ぐに看破してみせた。

 

 

 

「ゴブリンがこんな工夫を?」

 

「……学べばやるだろうが、これはそういう事じゃ無いな」

 

 女神官の問いに答えつつ、ゴブリンスレイヤーは矢筒の中から一つの矢を引き抜き、勾配の底に溜まった泥水をかき混ぜた。

 

 泥水の下には杭が埋まっている。それはゴブリンが用意した落とし穴であり、土を被せた偽装ではなく、泥水による隠蔽だった。

 

 

 

「なるべく水たまりは避けろ、下に杭が埋まっている」

 

「随分と悪辣で陰湿ね、どこから学んでくるのかしら?」

 

 妖精弓手も同じように矢筒から矢を引き抜き、泥水の深さを確かめる。

 

 

 

 そうして妖精弓手に罠の感知を任せつつ、ゴブリンスレイヤーの一党は上り下りの勾配を二、三抜けて洞窟の本道へと入り込む。

 

 ゴブリンスレイヤーは松明が短くなったのを見ると雑嚢から新たな一本を抜いて火を移す。

 

 

 

 

「持ってくれ」

 

「はい」

 

 短い方を女神官に渡すと土の壁を新しい松明の灯りで調べていく。

 

 

 

「トーテムの類は無いから、シャーマンはいないようだ」

 

 ゴブリンスレイヤーはそう言いながら、皆で進んでいき……。

 

 そうして丁字路に行きついた。

 

 

 

 

「右側の方が足跡は多いわ」

 

 妖精弓手が地面に這いつくばるようにして足跡を確認する。

 

「なら、右が寝床で左は武器庫か、倉庫、あるいは……」

 

「以前は便所でしたな」

 

「ああ、便所に籠った奴が逃げると面倒だったからだ……だが、今回は右から叩くぞ」

 

 蜥蜴僧侶の質問に答えながら、ゴブリンスレイヤーは思考し、そうして突撃する方向を決めれば皆が頷くのであった……。

 

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