『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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百十一話

 

 ゴブリンスレイヤーの一党は雪山にあったゴブリンの巣穴へと突入し、そうしてゴブリンの群れを全滅させた。

 

 その後、大広間の奥にあった扉を蹴破って中に入れば依頼されていた令嬢冒険者の姿を発見し、生きているのも確認した。

 

 

 

 ゴブリンの巣穴という状況が故に無事とは到底、言えなかったが……。

 

 「此処は神殿、祭祀場だったようですな」

 

 土を掘り抜いて作られた幾本もの腰かけの如き盛り土が並んでいた。奥には長方形に似た形の大岩であり、祭壇があった。

 

 その事からこの空間は礼拝堂であり、雪山にあるこのゴブリンの巣穴は神殿である事が見てとれたので蜥蜴僧侶が言う。

 

 

 

「古い時代の物でしょうか?」

 

 女神官がそれに同意した。

 

 

 

「んにゃ、こら土が新しい。最近、掘ったもんだの」

 

「まぁ、どう考えてもこれを設けたのはゴブリンだろうな」

 

「ああ」

 

 鉱人道士が土を弄っての意見を出し、ゴブリンスレイヤーが意見を言えば肯定として頷く。

 

 

 

「これは酷いですね」

 

「邪教による焼印か」

 

 容体を見ていた牛人戦士が令嬢冒険者のうなじにある焼印を見て呟いたそれに森人剣士が答えた。

 

「これが金型だな」

 

 ゴブリンスレイヤーは拾ってきた蹄鉄や何かを複雑に組み合わせて作った焼印の金型を拾い上げる。

 

 円環の中に瞳を模した紋様である。

 

「こんな物を普通のゴブリンは作らない。どんどん、面倒な事になってきた」

 

「その紋様、緑の月だと思います。外なる知恵の神、覚知神(かくちしん)の御印ですね」

 

 この四方世界の盤上では数多の神々が集い、見守っているとされている。

 

 中には叡智を司る知識神も当然いて、学者や文官からは信仰篤い。

 

 知識神は世の真実、理、未知を探らんとする者に閃きを授ける。あくまで知識そのものでは無く、道標だ。

 

 真理へ辿り着くまでの道のり、挫折、苦難も重要な知識であるからだ。

 

 しかし、知識神に属するが外なる知恵の神である覚知神(かくちしん)は趣が異なってしまっている。

 

 覚知神は知識へと導くどころか求むる者へ無差別に知恵を授ける神なのだ。

 

 それによって世界が、あるいは盤面そのものがどうなろうと覚知神は興味の埒外であるようだ。

 

 

 

 例えば、日常のささやかな不幸から『世界が滅びないかな』と呟く青年がいたとして覚知神が目を付ければその青年の脳裏に世界を滅ぼす恐るべき外法が閃いてしまい、行動するようになるのだ。

 

 無論、外法の知識だけを授けるような事は無いので神として信仰する者はしっかりいる。

 

 善悪の一方に偏っていないのがまた、厄介だが……。

 

 

 

「成程……神が介入し、軍勢を有してそれを率いるのなら相手は小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)と仮定して間違いないだろうな」

 

『……』

 

 ゴブリンスレイヤーの言葉に重苦しい沈黙が漂ったのであった……。

 

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