『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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百十三話

 

 ゴブリンスレイヤーは救出した令嬢冒険者を雪山近くにある村にて宿として借りている酒場の二階の部屋で様子を見守っていた。そうして彼女が目を覚ますと状況を説明し、あるいは諭すなど会話を交わし、最後には選択肢を与えた。

 

 大前提として、令嬢冒険者はゴブリンに烙印を刻まれてしまっているので法の神殿にいる剣の乙女にその治療を任せるのが必要だが、それが終わり次第、彼女を捜索する依頼を出した彼女の両親の元へ帰るという選択肢。

 

 そして殺されてしまった彼女の一党の仇を討つべく、一緒にゴブリンパラディン率いるゴブリンの群れを討伐する事だ。

 

 何故、この選択肢をゴブリンスレイヤーが彼女に与えたのかというとこのままでは彼女が一生、後悔や罪悪感、解消できない怒りや恨みを抱えて潰れてしまうと思ったからである。

 

 無論、令嬢冒険者はゴブリン討伐において暴走するだろうがそうした面倒も含めてゴブリンスレイヤーは引き受ける事に決めた。

 

 一応、彼女に考えるようには言ったが彼女の鞄に隠されていた軽銀の短剣を渡した時に見せた表情からしてゴブリン討伐の選択肢を選ぶ事は確信している。

 

 ともかく、令嬢冒険者に考える時間を与えるために一人にするため、部屋から出ると酒場の方に降りた。皆がいるからだ。

 

 

 

「どうでした?」

 

 女神官が問いかけてきた。

 

「目は覚ましたし、状況も説明した。無理も無いが、今は感情の整理がつかないようで呆然とした感じだったよ」

 

「一人にしといて良いの?」

 

「こういう時は下手に慰めの言葉をかけたりするよりは落ち着いたり、考えたりする時間を与えた方が良いんだ。結局は本人がどうするかの問題だからな」

 

 妖精弓手の質問に応じつつ、塩漬けの野菜や何かばかりの食事が乗った円卓の皿の間にある羊皮紙の元までゴブリンスレイヤーは移動し、席に着くと自分から見て北が上に来るように回す。

 

 羊皮紙は猟師に書かせた雪山一帯の地図である。

 

「装備の補給はどうなっている?」

 

 ゴブリンスレイヤーは話題を変え、皆に任せた補給について聞く。

 

「ひとまず糧秣の類はなんとかなりました。村の備蓄を出してもらうゆえ、高くつきましたが」

 

 蜥蜴僧侶が傍らに置いた麻袋を軽く叩きながら報告する。

 

「冬の依頼となるとやっぱり、採算度外視になるわよねぇ。ゴブリン退治の依頼も安いから猶更……。」

 

「苦労しますよねぇ、お金の計算は」

 

 妖精弓手の言葉に牛人戦士が応じる。

 

「なんでぇ、耳長娘が金の心配かや」

 

「そのうち、何か大きな報酬のある依頼を受ければ良いだろう」

 

 鉱人道士が触媒として補充した酒とは別の酒を飲みながら、妖精弓手に言葉をかけた。

 

 ゴブリンスレイヤーもまた、妖精弓手に応じる。

 

「とまれ、薬の類は調達できたぞ。あの薬師の娘が薬草をくれたからのぅ」

 

「それでどうするんだ?」

 

「勿論、ゴブリンを討伐する……まずは皿を退けようか」

 

 森人剣士の声に応じつつ、皿や食器を片付け、円卓を丁寧に拭くと地図を改めて広げ、雑嚢から炭を木で挟んだだけの筆記具を抜き取り、洞窟の印に×を付ける。

 

「あの洞窟が連中の居住区でないことは明白だ」

 

 ゴブリンスレイヤーはそう言い……。

 

 

 

「地元民の話ではさらに登った高地に古代の遺跡があるとの事だ。鉱人の砦がな」

 

 山の奥に位置する凸印を丸で囲む。

 

「それは正面から向かうのは危険すぎるな。火でもかけるか?」

 

「ガソリンはあるが、岩の城だから外からは燃えないだろう……中に潜り込んだ方が良い」

 

「ちょっとは冒険らしくなったじゃない。岩山の奥、切り立った高地、聳え立つ砦に君臨する首魁、忍び込んで討つ。うん、良いわ」

 

 ゴブリンスレイヤーが提案した事に妖精弓手は大きく乗っかった。

 

「潜入という事か」

 

「いや、潜入というのも違う……偽装は教義に反するか?」

 

 森人剣士の質問に答えつつ、ゴブリンスレイヤーは女神官と蜥蜴僧侶の方を見てそんな質問をするのであった……。

 

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