投擲手の彼が冒険者となってから、新人向けであれど冒険者の誰もがやりたがらず、やっても一度な『ゴブリン退治』を率先してこなし続けた結果として新人の等級である第十位の『白磁』から一等級上である『黒曜』へと
そんな彼だが、普段はゴブリンを退治し続けている事を由来として『ゴブリンスレイヤー』の異名が与えられた。
もっともそれはとある冒険者の嫉妬兼せめてもの嫌がらせもある。
だが、『ゴブリンスレイヤー』はゴブリンの脅威に晒される村人にとっては頼れる象徴になれるし、そうあれるよう励むのも良いと彼は嬉々としてそれを名乗るようになり、他の冒険者達も彼をそう呼ぶようになった。
とはいえ、別にゴブリンスレイヤーはゴブリン退治だけに専念するつもりは無い。
なので……。
「この時を待っていたぞ、今回こそはお前が黒曜として相応しいかどうかこの俺が直々に見定めてやるからな」
「大物退治をしたお前に比べれば大した事は無いだろうけどな……まぁ、お手柔らかに頼む」
気合を入れて言う槍使いに別に等級はギルドが判断し、認めるものなので槍使いに認められなくとも問題は無いが、言うだけ野暮と思い、苦笑した。
「ふふ……張り、切ってるわね」
魔女は槍使いに対し微笑まし気な表情を浮かべながら言う。
全員が黒曜等級である槍使いにゴブリンスレイヤー、数度、槍使いと二人で一党を組んでいる魔女の三人はとある場所へ向けて移動しながら、会話をしていた。
今回、槍使いから強くなにやら怪しげな動きを見せている『
そうして、闇人のアジトへと移動中……。
「さて、休憩するか……俺が調理する」
山を歩いている途中で休憩する事にし、姉の手伝いやら師匠である圃人の老爺に強制された事、牛飼娘の手伝いなど今までの生活の中で食材の現地調達やら調理が出来るゴブリンスレイヤーはその腕を存分に振るう。
「……っ、う、美味ぇっ!!」
「本、当……美味しい、わね」
「お口に召したようでなにより……どうせ食べるなら、美味い物の方が良いからな。英気も養えるし」
槍使いは悔し気な態度もあるが、しかし結局はゴブリンスレイヤーの料理の味を絶賛する。魔女も又、驚きつつも料理の味を絶賛した。
休憩も挟んで、闇人のアジトである廃砦へと移動していく。
「待て……足跡だ……ん、こいつは罠だな」
ゴブリンスレイヤーは役割として斥候を担い、慎重に異変があるかどうかを探ったり、罠があるかを探っていく。
「……何が斥候は専門じゃないだよ」
「頼もしい、わねぇ」
槍使いは全然、優秀な斥候である彼へと言い、魔女は賞賛する。
「見張りだな……あれは俺が対処する……ふっ!!」
『ぐぎゃっ!?』
砦の入口付近で闇人の手のものが見張りをしていたが、ある程度の距離まで気配も姿も探られないように移動し、ある程度の距離まで近づいたゴブリンスレイヤーは腰帯で携帯している袋に触れたかと思えば、あっという間に二つの石を投擲し、見張りの頭部に炸裂させる。
超速で飛来した石の威力は標的の頭部に穴を開けながら、中へと入り込むほどのものであり、当然、見張りは死亡した。
「……まじかよ」
「……成程」
槍使いはゴブリンスレイヤーの投擲が自分の想像を超えたものであった事から絶句し、魔女もなんとも言えない表情で呟く。
その後も……。
「待った……そこから敵が来る。先に奇襲するから合図と同時に合わせてくれ……ふっ!!」
「ごえっ!?」
斥候をしながら、ゴブリンスレイヤーは曲がり角が見える先にて、ゴブリン退治をこなすうちに鍛え上げられた感知能力により、闇人の手の者が近づいているのを感知。
槍使い達に声をかけつつ、端の壁に袋から拳大の瓦礫を投擲するとその瓦礫は壁から反射するようにして反対方向へと強烈な勢いで飛来。
移動していた闇人の手の者にそのまま、炸裂する事で倒れさせる。
「今だっ!!」
「指図するなってのっ!!」
片手剣を抜きながら、突撃するゴブリンスレイヤーに対し文句を言いながらも槍使いは続き……。
「はあっ!!」
「ふっ!!」
ゴブリンスレイヤーは盾を鈍器のように振るい、あるいは籠手の延長のように突き出して打撃染みた攻撃と片手剣による斬撃と刺突で白兵戦を仕掛け、槍使いも優れた槍の技を発揮する。
「(この俺に合わせやがる……)」
槍使いは自分の動きに合わせるゴブリンスレイヤーの近接戦の技能に驚愕する。その後もゴブリンスレイヤーは投擲による支援やらで槍使いをサポートし、協力する事で闇人の手の者を倒していき……。
「しっ!!」
「っ!?」
最後は闇人に対して何をさせるでもなく、超速で槍投げの如く長剣を投擲。
超速で飛来する長剣に闇人は対応できずに額を深々と穿たれ、死亡する。
その後、闇人たちが蓄えた宝は三等分しつつ、ゴブリンスレイヤーと槍使い、魔女の三人による闇人討伐は終わった。
「ちくしょう、あいつ……ゴブリン退治に専念させるの勿体ないくらい、優秀じゃねえか!!」
「そう、ね……とっても、頼り、に、なった、わ」
依頼達成の報告と報酬の受け取りから分配も済ませた後、酒場で槍使いはゴブリンスレイヤーの能力に愚痴り、魔女は煙管から紫煙を漂わせながら、微笑む。
「……これからも一党に誘ってやる」
「賛成、よ」
槍使いは切り替えた表情で言い、魔女は頷いたのであった……。