百二十四話
冬の季節は過ぎ去った。新年がやってくると共に寒さが僅かな名残を置いて追い払われ、陽光が柔らかくも暖かい季節となり、東からの風が心地よくそよぐようになったのだ。
そうして辺境の街――ヒナギクの咲く丘から半日以上、歩いた先には村がある。
「まさか、冒険者のための訓練場が出来るようになるとはな」
故郷である村近くの原野に冒険者のための訓練場が出来る事になった事で新年になったときに村へと帰郷し、色々村人の仕事やゴブリン襲撃の備えをしていたゴブリンスレイヤーは独り言ちる。
去年の冬にゴブリンスレイヤーが剣の乙女からの依頼で森人剣士に牛人戦士と妖精弓手に女神官、鉱人道士と蜥蜴僧侶と共に覚知神から外法を授けられたゴブリン聖騎士とその群れを倒しつつ、消息不明だった救い出した令嬢剣士を救い出した。
令嬢剣士は冒険者を引退するとゴブリン聖騎士が従えるゴブリンによって、『烙印』を刻まれてしまったので剣の乙女による治療を受ける事になりつつ、自分の生家へと帰った。
そして、冒険者こそ引退したが自分の経験もあって、新人冒険者向けの寄付を始めた。
支援する側から戦うつもりとの事だ。
こうして、新人冒険者のための訓練場が建設される事となった。更にこれに伴い、ゴブリンスレイヤーは冒険者ギルドからの要請もあって、新人冒険者に訓練を施す教官を務める事になった。
冒険者の印象は結局、四方世界の者にとってはごろつきやならず者だ。無論、これが経験を得て、名声に武勇を発揮するようになればそれも違ってくるが、新人冒険者は経験が少なく、更には成り上がろうという意思が強いものが多い。
そうした者にしっかりと冒険者としてどうすべきか常識を教えたりしながら教育するのがゴブリンスレイヤーの役目である。
元々、暇があれば新人冒険者達の教育を自主的にやっていたりしたので私的なものから公的な仕事に変わっただけである。
大変なのは村と冒険者達の仲を取り持つことであるが、ゴブリンスレイヤーは辺境の街においては英雄的な扱いもされているし、生まれ故郷でも何度もゴブリンの襲撃から守り続けているのでやはり、信用も信頼も厚い。
人が住む村近くに冒険者の訓練場を作り、運営するというのは実際は難しいのである。
だが、この辺境においてはゴブリンスレイヤーの存在があるからこそ成立するのであった。
「まあ、人を育てるというのも悪くはないからな」
訓練場建設を進めている風景を見ながら、ゴブリンスレイヤーは呟くと辺境の街にある冒険者ギルドへと向かったのであった、