冬の季節が去り、新年が来て、春の季節となった。
春の季節となると冒険者ギルドはかなり賑わう。冬の間に貯蓄を使い込んだ冒険者が再び、資金を蓄えようと依頼を受けようとするし、成人を迎えて夢と浪漫を叶えようと冒険者になろうとする若者達も集まるからだ。
ゴブリンスレイヤーが活動拠点にしている『辺境の街』の冒険者ギルドもその例に漏れず、多くの冒険者になろうとする若者達や依頼を受けようとする冒険者達で賑わっていた。
ともかく、ゴブリンスレイヤーは依頼を果たしに向かう前に挨拶しようと待っていた女神官に女武闘家に新米戦士に見習聖女に挨拶を返し、そうして依頼を果たしに行くのを見送ると森人剣士に牛人戦士、妖精弓手に蜥蜴僧侶と鉱人道士と六人で依頼を受けようと受付に向かう。
するとゴブリンスレイヤーの一党がゴブリン聖騎士とゴブリン聖騎士が率いるゴブリンの群れと戦っていた件を知っている馴染の冒険者達、特に彼に指導を受けた今は中級の冒険者達が気を使って彼が普段、ゴブリン討伐の依頼を受ける事を知っているので代わりに受けてくれたという話を受付嬢より聞いた。
そのため、ゴブリンスレイヤーは残っていた依頼の中で大規模の洞窟の探索依頼を受けたのである。
「では依頼、頑張ってください。それで
「じゃあ、
「はぁい」
ゴブリンスレイヤーは受付嬢に対し合計十八本の水薬を頼み、金貨十八枚で購入した。
そうして、自分を待っている森人剣士たちのところに行きながら購入した水薬を並べる。
麻紐を取り出すと治癒の水薬にはただ、麻紐を結び、解毒剤の水薬にはただ結び目を付けるだけじゃ無く、余計にもう一つ結び目をつける。つまり、二つの結び目
そして、強壮の水薬には更にもう一つの結び目をつけた。これは三つの結び目だ。
「オルクボルグ、これはなにをしてるの?」
「咄嗟に水薬を飲むときに間違えないよう、手触りで判断できるようにするためだ」
「へぇ、じゃあ貰い」
ゴブリンスレイヤーが麻紐を結んだ三種の水薬を妖精弓手は金貨を三枚、ゴブリンスレイヤーの近くに置きながら、取り上げた。
「そもそも、お前達のために用意したものだから金貨は……」
「そういう訳にはいかないわよ」
「かみきり丸、金と道具の扱いは仲間内こそだぞ」
「そうか」
「それにしても面白い工夫を考えるものだな、君は……私も手伝おう」
「じゃあ、私も手伝いますねぇ」
そうして、皆が金貨三枚をゴブリンスレイヤーに対して置いていく。森人剣士に牛人戦士も水薬の工夫を手伝い、皆が三種の水薬を取っていった。
「あのぅ、皆さん何してるんですか?」
新人冒険者となったばかりの圃人戦士の少女が近づき、声をかけてきた。
「水薬を咄嗟に取り出す時に間違えないように印をつけているんだ。ただ、なんでもかんでも印をつけても覚えきれないから、注意しろ」
「そ、それもそうですね。ありがとうございます」
「どういたしまして。それと何を受けるのもお前たちの自由だが、なるべく簡単な依頼からこなして経験を積んだ方が良いぞ。一党でやるなら、特にだ」
「はい、そうします。それじゃあ」
「武運を祈る」
笑みを浮かべながら、様子を見守っていた自分の一党の元へと圃人戦士は戻って行った。
「じゃあ、洞窟探検に行くか」
ゴブリンスレイヤーは依頼書を見せつつ、皆へと言い、冒険者ギルドを出ようとしたところで……。
「(っ、あの少年はまさか……)」
凄い勢いで冒険者ギルド内へと赤髪で眼鏡をかけ、大ぶりな杖を持った魔術師の少年を見て、ゴブリンスレイヤーは去年、女神官に女武闘家と出会う切っ掛けとなったゴブリン退治の依頼にてゴブリンの毒で苦しむのを介錯した女魔術師の面影を重ねながらもとりあえず、冒険者ギルド内を出たのであった……。