『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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十三話

 

 

 石造りの遺跡でのゴブリン退治の依頼を解決した結果の報告をし、報酬を受け取ったゴブリンスレイヤーは次に冒険者ギルドに入ったばかりで椅子に腰かけ、煙管を吸っている魔女の元へと向かう。

 

「おはよう」

 

「おは、よう……何か、用かしら?」

 

 魔女はゴブリンスレイヤーの挨拶に応じると用件を尋ねてみる。

 

「ああ、指輪の鑑定出来るか?」

 

 ゴブリンスレイヤーは遺跡にてゴブリンの汚物の中にあった魔法の指輪の鑑定が出来るか尋ねてみた。魔法の指輪は様々な付与効果を有し、装着者はその効果を受ける事が出来るものの下手に指輪をつければ危険な目に遭いかねないためにちゃんと指輪の効果を把握する事は重要なのである。

 

 因みに指輪はちゃんと洗うのと消毒を済ませていた。

 

「見せ、て?」

 

「ああ、これだ」

 

「へ、ぇ……」

 

 雑嚢から指輪を取り出し、魔女は思わずといった感じで吐息を漏らし、そうしてじっくりと鑑定を始めたが、やがて首を左右に振った。

 

「ごめ、んなさ……い。これ、は……ちょっと、わから、ない……わ」

 

「そうか、じゃあしょうがないな。手間を取らせた」

 

「でも……ね?」

 

 ゴブリンスレイヤーが魔女が返した指輪を受け取り、雑嚢に収納しながら謝るように言えば、魔女は……。

 

「そ、れ……欲し……がってる、ね? 人、なら……知って、る、わ……よ?」

 

「なら、渡そう。俺にはこれは必要無いからな」

 

「欲、無い……の、ね?」

 

 魔女は忍び嗤うと町外れの小川の傍という曖昧なものでゴブリンスレイヤーが見せた指輪を欲する人物の在所を伝えた。

 

 

 

 いつも、いるだろうという事や林檎酒(シードル)を持って行ったらいいと助言する。

 

 

 

「情報、ありがとう」 

 

 そうして情報料を払おうとすれば……魔女は手を出し、首を振って断りながら……。

 

「い、いの……良い物、ね……見れた、から」

 

 それにまた一党を組むように誘う事もあるだろうからと言った。

 

「分かった」

 

 ゴブリンスレイヤーは頷くと冒険者ギルドを出て、先ずは報酬の全てを神殿に持って行き、遺跡にてゴブリンに蹂躙された女性冒険者たちの世話代として払った。

 

 その後は酒場にて林檎酒を一つ買い、教えられたとおりに街を歩き、牧場に帰る道とは真反対の道を歩いていると町外れに魔女に教えられた家を見つけた。

 

 小川の傍、音を立てて回る水車と煙突から煙を吐いているあばら家である。

 

 古いドアの前に行けば、ノッカーだけは真鍮製で古びた家に不釣り合いであった。

 

「すまない、指輪の鑑定をしてもらいたいんだが……」

 

「指輪っ!? 開いているから、上がって上がって……」

 

 驚きの声と共に入室の許可が出たので扉を開けて中へと入れば、家の中は古書が積まれ、ガラクタか子供の玩具のようなものが置かれ、食べ物の滓を乗せた皿があって、炉端で軋んだ金属音を伴ってふいごが動き、天井には網が貼られ洗濯物が吊るされているようないろんなものが溢れた室内であった。

 

 

 

「ほらほら、こっちだよ」

 

「ああ」

 

 部屋の一番奥から声をかけられたので慎重に移動して隙間を通っていき、そうして辛うじて開拓された空間に辿り着く。

 

「さぁさぁ、指輪を見せてくれたまえよ」

 

 卓上に色とりどり、様々な絵の描かれた札を散りばめた状態で椅子に座った女性が言う。

 

 くすんだ金色であちこち跳ねた髪、緑の瞳には眼鏡を掛けていてぼやけた色合いになっていた。

 

 膝上程度までの丈という何の獣のものか定かでない毛糸の上衣に外套付きのローブを羽織っていて、魔術師然とした姿となっている。

 

「これがそうだ」

 

「おお、成程、成程……どれ」

 

 女魔術師は指輪をじっくり眺めていくと口づけを交わす仕草で唇を動かし、一言、二言、何事かを呟いた。

 

 すると指輪の光は奇妙な燐光を伴って輝きを増す。

 

火花の弾けるように光が宙へと飛び、星のように煌めいて消えていく。

 

 さながら≪(スパーク)≫である。

 

 そして、その灯りはほどなくゆっくりと収まっていき、また指輪の宝玉の中へと沈んでいった。

 

 

 

「これぞ、まさしくだ……どこでこれを?」

 

「ゴブリンが巣にしていたゴミ溜めの中だ。ちゃんと丁寧に洗って消毒したから安心しろ」

 

「ふ、ふふふ……あははははははっ!!」

 

 女魔術師はゴブリンスレイヤーの答えに腹を抱えて笑い続け、机を手で叩いた。

 

「盲点だったよ。昔からろくでもない品といえば洞窟にある魔力の指輪と相場が決まっているだろうに……」

 

「で、それはどんな効果のある指輪なんだ」

 

「せいぜいが≪呼気≫の指輪だね。どこでも息は出来る。文字通り、どこでも」

 

「水中でもか?」

 

「ああ、その通りだ。たとえ土の中や雪の中に埋められても息は出来るよ」

 

 ゴブリンスレイヤーの質問に女魔術師は頷き、言葉を続ける。

 

 

 

「けど私にとってはまた別の効果を持っている……とっても価値のあるものだ。それでどうだろう? 是非ともこれを売ってくれないか? 金はいくらでも払う、いや……なんでもしようじゃないか」

 

「術に自信はあるか?」

 

「勿論、これでも魔術師としては中々のものだと自負しているよ」

 

「じゃあ、俺にお前の術の全てを教えてくれ」

 

 

 ゴブリンスレイヤーは戦闘における手札を増やすためと折角の機会なので魔術を習う事にする。

 

 

 

「ふふ、直球だね。けど良いよ……君を弟子にしてあげよう」

 

「よろしく頼む、我が師よ」

 

 林檎酒を渡しつつ、ゴブリンスレイヤーは孤雷の術師(アークメイジ)を二人目の師匠とするのであった。

 

 そうして、教えるなら教えるで準備がいると明日の朝に来てくれと言われたのでそれに応じて朝早くに再び、孤雷の術師の元に行けば……。

 

「君、ゴブリンスレイヤーって言われてるらしいね」

 

 弟子になったなら師匠の仕事を手伝えと彼女が任されている怪物辞典(モンスターマニュアル)の改訂を手伝う事になり、それはゴブリンの死体を解剖したり、生態を観察するというもの。

 

「別に良いが、魔術はちゃんと教えてもらうぞ」

 

「ああ、勿論。それはちゃんと教えるから安心してくれたまえ」

 

 札を手で切りながら、孤雷の術師は頷き、笑うのであった……。 

 

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