『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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十五話

 

 怪物辞典の改訂のためにゴブリンを調べたいという孤電の術師の仕事を手伝うべく、とある辺境の村外れにある墳墓を自分たちの巣としていたゴブリン退治の仕事を引き受け、孤電の術師を同行させたゴブリンスレイヤーはゴブリンとゴブリンが飼っていた狼を全て討伐した。

 

 その最中において不運な事にゴブリンに捕まってしまった流れ、あるいは旅人である女性が捕まっていたので救出し、孤電の術師が治療を施し魔術で眠らせた。

 

 万が一、外に出た残党がいれば手間になるので墳墓の中にてゴブリンスレイヤー達は野営を始めた。環境としては最悪であるが……。

 

 そして、更に……。

 

 

 

「ふーん、大体の体の構造は只人(ヒューム)と一緒だね。ただ、子宮や卵巣を持っている者、つまり雌はいないようだけど」

 

 孤電の術師が口元を布で覆いながら、猫の爪の如く捻じれた刃である手術刀によってゴブリンの死体を解剖していた。

 

「成程……」

 

 ゴブリンスレイヤーは焚き火に照らされた明かりの中で札による魔術の勉強に励んでいた。

 

 

 

「……しかし、この墳墓内で挑んだのは良かったというべきか……ゴブリンたちは飼育どころか騎乗のやり方を学んでいたなんて」

 

 解剖による調査を済ませた孤電の術師は巣穴となっている墳墓の奥で見つけた継ぎ接ぎだらけの革で出来た鞍を持ちながら言う。

 

「野戦で挑む羽目になったらと思うとぞっとするな……ただでさえ、ホブとシャーマンまでいたんだ」

 

 ゴブリンスレイヤーももし、もっとゴブリンたちが数を増やし飼育する狼を増やしていたらと思い、唸った。

 

 

 

「……それにしてもゴブリンたちはいったいどこから湧き出したんだろうね?」

 

「緑の月からと姉さんからは聞いている」

 

界渡り(プレインズウォーク)、か……それは作り話、子供のしつけの話、笑い話の類だろう?」

 

「俺は笑わない」

 

「へぇ……」

 

 興味深げに孤電の術師はゴブリンスレイヤーを見た。

 

そうして時間は過ぎ、朝日の最初の一束が遺跡の入り口から投げ込まれる。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「ああ」

 

  そうしてゴブリンスレイヤーは女性を背負いながら、孤電の術師と共に遺跡から出て依頼した村にゴブリンを討伐した事を告げながら、救出した女性の衣服を村人から購入。

 

それを着せて、地母神の神殿のある辺境の街まで移動していく。

 

 

 

「随分と優しいじゃないか」

 

「せめて、これぐらいの救いはあるべきだ」

 

「いやいや、十分な救いだよ。彼女にとってはね」

 

「だったら、良いけどな」

 

孤電の術師の意見に応じながら、途中で別れてゴブリンスレイヤーは地母神の神殿に女性を連れていき……。

 

 

 

「すまないが、またよろしく頼む」

 

「勿論です。ああ、お金は結構です。前に十分貰っていますから……それと……」

 

 神殿で世話をしてもらうよう、神官長に頼んでまた、世話代を渡そうとしたがやんわりと断られ、更に数日前に助けた女性冒険者達が会いたがっていると言われたので、それに応じる。

 

「……少しは回復出来たか?」

 

「おかげさまで……その、助けていただいた上にこうして、色々と世話をしていただきありがとうございます。お代の方は必ず……」

 

 神殿にて手厚い治療と介護を受けて大分、容体が安定している女性冒険者達の中でリーダーだろう一人がゴブリンスレイヤーに深い感謝を告げる。

 

「いや、良い……とにかく、今はゆっくりと休んでくれ。それと新しく神殿で治療を受ける人がいるから面倒を見てやってほしい。それで十分だ」

 

「分かりました……そうさせていただきます。本当にありがとうございました」

 

 リーダーを皮切りにゴブリンスレイヤーに女性冒険者達全員が深く頭を下げ、感謝を告げたのであった……。

 

 

 その後、依頼を完了した事を冒険者ギルドの受付嬢に伝え、報酬を受け取ると……。

 

 

 

「よぉ、聞いたぜ……最近、魔術師とパーティを組んだんだって?」

 

「いや、パーティじゃない。護衛で一緒になっただけでそれに魔術の師匠だ。弟子入りしたんだよ。そっちは随分と大所帯になったらしいじゃないか」

 

 

「色々とあってな」

 

「それはそうだ。人生は色々だからな……」

 

 若い戦士がゴブリンスレイヤーの言葉に反応して、とある席のほうへと視線を移動すれば、いつもの一党である三人に加え最近、冒険者となった長い銀髪を高く結った武闘家の女性に斥候を目指しているという鉱人の女性、地母神の信仰に目覚めた森人の青年、年齢から講師を辞した魔術師にして犬を人にしたような姿の獣人(パットフット)の中年男性という四人がいた。

 

 新しく一党を増やしたのである。

 

「まあ、お互い頑張ろう」 

 

「ああ、勿論だ」

 

 そんな話をするとゴブリンスレイヤーは工房へと行き……。

 

 

 

「点検と整備を頼む」

 

「おうよ、随分と使い込んだもんだ。こんだけになると少し時間がかかるぞ。それと新品を買った方が早い奴はそう伝えるからな」

 

「ああ、それで良い。冒険者の仕事は少し休もうと思っていたところだしな」

 

 そうして石と瓦礫を詰めた袋を残し、残り全ての武具と防具の点検と整備を頼んだのであった。

 

 

 

「大口の依頼を受けて、稼いどかないとな……後は……」

 

 だいぶ、金を使い込んでしまったので多く稼ぐ事を決めつつ……。

 

「相談なんだが、ゴブリン退治の依頼を複数受ける事は出来るか? 今はまだだが、少ししたら……な」

 

 受付嬢に相談しに行ってみた。

 

 本来、依頼を多数受ける事は例えば一つの依頼を解決し、次の依頼をやろうとして拾うから失敗などのリスクは高いし、他の冒険者達が依頼を受けられない事にも繋がるのでなるべく避けるべき行為であるが……。

 

 

 

 

「本来は駄目ですけど……ちょっと待っていてくださいね」

 

 そうして受付嬢は奥の部屋へと消え……。

 

「他の冒険者に一枚も行き渡らない事をしないというなら、構わないそうです。元々、ゴブリン退治は数が多くて受ける人は少ないですから」

 

「ありがとう、苦労をかけてすまない」

 

 ゴブリンスレイヤーは上司を説得してくれただろう受付嬢に感謝を示した。

 

「いえ、いーえ……こちらこそ色々と世話になっていますから。力になれるなら、なんでもさせていただきます」

 

「俺もこの礼は必ずさせてもらうから、楽しみにしていてくれ」

 

「……じゃあ、楽しみにしています」

 

 そうして笑みを向け合い、ゴブリンスレイヤーは受付嬢に背を向け、冒険者ギルドを出たのであった……。

 

 

 

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