『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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十六話

 

 紅い月と緑の月が浮かぶ夜中――とある村が壊滅状態にあった。

 

 

『GROBB!!』

 

村を壊滅に追い込んだのは大量のゴブリンの群れであり、男は殺し女は甚振って、凌辱するなど思い思いにその凶暴性と残虐性を解放している。

 

「〜〜っ!!」

 

 

 そして、その様を声を出しているのに届かず、近づく事も出来ずと干渉できない場所から少年が目撃しており、ゴブリンはまるで見せつけるように少年を見やりながら蹂躙していく。

 

 ゴブリンの餌食になっている者の中には少年の姉と幼馴染の牛飼娘もいて……。

 

 

 

「っ、ああああっ!!」

 

 そうして彼は、ゴブリンスレイヤーは叫び声を上げて飛び起きた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……休む事にして正解だったな、思ったより疲れている」

 

 大量の脂汗を流している不快感もそのままに周囲を見回し、先ほど見たのが夢だと認識すると深く息を吐きながら呟く。

 

 ゴブリンは確かに戦闘能力自体は弱い。しかして群れると厄介だし、学習能力もあって多少の罠を使うなど面倒なところもある。

 

 基本、報酬としても安いものなので冒険者達からは一度やればもう十分だとばかりにゴブリン退治の依頼は避けられる。

 

 

 

 だが、避けられる要因は娘が攫われるなどすると間違いなく、身体も精神も尊厳さえ凌辱し尽くす悪逆さを見せつけられるのもあるのだろうとゴブリンスレイヤーは思う。

 

 自分はあの時、師匠である圃人の老爺の介入もあって村をゴブリンの群れから救う事が出来たが()()()()()()、村は壊滅させられ村人も、あるいは自分も蹂躙されていたと思うと他人事ではないのだ。

 

 そして、いつどこからゴブリンの群れが現れるかもわからない。神出鬼没なところもあった。

 

 

 

「落ち着け……」

 

 今は武具も防具も点検と整備に出しているので内心、不安になっているとも自己判断しながら自分に対し、呼びかける。

 

 そもそも自分は世界を救える勇者ですらない……やるべき事と出来る事しか出来ず、だからこそ、それを全力でやるしか無いのだから……。

 

「おはよう」

 

 様々な運動と投擲に弓の鍛錬を軽くしていると牛飼娘が歩み寄ってきて、笑顔で挨拶をしてきた。

 

 

 

「……」

 

「え、ちょっ~~!? ええっ!!」

 

 悪夢を見たせいか牛飼娘がとても愛おしく見えてきて、思わず強く抱き締めてしまった。牛飼娘は恥ずかしさやら何やらで顔を赤くし、動揺しまくりである。

 

「……すまない、少しだけこうさせていてくれ。思ったより、疲れているみたいだ」

 

「……うん、そうだね。冒険者の仕事は忙しいもんね……」

 

 ゴブリンスレイヤーの体から震えも伝わり、牛飼娘は彼の言葉に応じながら自分も安心させるようにゴブリンスレイヤーを抱き締めた。

 

 少し抱き締め合った二人はどちらともなく離れ……。

 

 

 

 

「悪かったな、甘えて」

 

「うぅん、それくらい別に良いよ」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 二人はそうしたやり取りを交わすと母屋の方へと行き、身支度を整えたり朝食を共にしたりする。その後は牛飼娘の配達の仕事をゴブリンスレイヤーは手伝う。

 

 

 

「明日は一緒に街を歩こうか」

 

「君が良いなら、良いよ」

 

 明日の約束を交わしつつ、魔術を教わっている孤電の術師の元へと行くため、牛飼娘と別れた。

 

 牛飼娘には魔術師に弟子入りしたこと自体は伝えている。

 

 

「おはよう」

 

「うん、おはよう。今日は武装していないんだね?」

 

 出迎える孤電の術師が質問し……。

 

「ああ、点検と整備に出しているからな。丁度良いから冒険者の仕事も休む事にした」

 

「そうかい、休みというのは大事だからねぇ」

 

 ゴブリンスレイヤーからの答えに孤電の術師は頷く。

 

「じゃあ、休みを終えてゴブリン退治の仕事をする時はゴブリンの糞をもってきてくれないかい?」

 

「……分かった」

 

 なんとも言えない顔をしながら、孤電の術師の求めにゴブリンスレイヤーは頷く。

 

 その後は一旦、孤電の術師のために昼食を買いにいったりなどしながら、夕刻まで魔術の教えを受けた。

 

 明日は別に用事があるから来られない事を伝え、謝ると『別に大丈夫だよ。来れるときに来てくれたら良いから……今はね』と言われたりした。

 

 

 

 その翌日、牛飼娘と一日中街で遊び……。

 

 

 

「もう大丈夫そうだね?」

 

「ああ、お前のおかげでな……休みは誰かと一緒に過ごすのが良いらしい」

 

「ふふ、甘えたくなったらいつでも甘えてくれて良いからね」

 

「その時はそうさせてもらう」

 

 寄り添いながら歩いているゴブリンスレイヤーと牛飼娘の雰囲気はとても暖かく、優しく甘いものであった……。

 

 

 

 その翌日は冒険者ギルドへと行き、受付嬢を酒場での昼食に誘い(彼女は二つ返事で応じた)……。

 

「仕事を休める日があれば、教えてくれ……その日にお礼をする事にしよう」

 

「っ、は、はい。分かりました」

 

 ゴブリンスレイヤーは受付嬢に尋ねると受付嬢は頷く。誰がどう見てもそれはデートの約束。

 

 後にこの事を知った槍使いが項垂れる事になるのは言うまでもない……そうしてその日から一日後、親方に言われていた日数が来たので工房へと向かい……。

 

「ほれ、出来たぞ」

 

「……ああ、ばっちりだ」

 

 少し、ナイフに短剣の調達をしながら整備された武具と防具をゴブリンスレイヤーは装備する。

 

 今日から再び、冒険者としての仕事を再開するのは言うまでもない事だった……。

 

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