『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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十八話

 

 冒険者ギルドや地母神の神殿がある西の辺境の街、その外れにあばら屋こそゴブリンスレイヤーが魔術を習う上で弟子入りしている孤電の術師の家である。

 

「頼まれていた品だ」

 

 ゴブリンスレイヤーは孤電の術師に頼まれていたゴブリンの糞を入れた麻の小袋を匂いが漏れないようにするため、厚い素材の袋に入れたそれを見せる。

 

「お疲れ、その辺においてくれたまえ」

 

「ああ」

 

 孤電の術師に言われたように袋を適当な場所へと置いた。

 

「今日からこれを使って、勉強したまえ……君一人でも出来るようにしたからさ」

 

「分かった」

 

 そうして、孤電の術師が今、机の上に配置しているそれと同じ、一枚一枚が魔術書の断片だという札の束をゴブリンスレイヤーは渡されたのでそれを使って魔術の勉強をし……。

 

「良し……それじゃあ、……日に君にとある依頼をするから、その日は予定を空けておいてくれたまえ。それまでの間に私は君が魔術を使うための発動体を用意しておくよ。期待しておいてくれたまえ」

 

「分かった」

 

「それとこれは僕の仕事を手伝ってくれた事に対する報酬だ」

 

 ゴブリンスレイヤーは孤電の術師から単純な装丁がなされ、奇怪な結び方をされた飾り紐で封じられた魔法の巻物(スクロール)を渡された。

 

 この巻物は≪転移≫の巻物であり、行き先を書けば巻物を開いた瞬間、失われた魔法である≪転移≫が発動し、その場へと転移が出来るという代物。

 

魔神の塔だろうが大魔術師の地下迷宮だろうが、そこから一瞬にして脱出できる魔法の品(マジックアイテム)なのである。

 

『行き先は冒険者の魔法使いに書いてもらいな』と言われたので翌日、魔女の元へと行き、話をする。

 

 

「あの……人、の弟子に……なった、そうね」

 

「ああ、魔術を教わる良い機会だったからな」

 

「ふふ……でも、あの、人。変わって……る、でしょ?」

 

「特にそうは思わないな。誰しも個性というのはあるからな」

 

「それ、も……そう、ね」

 

 そんな話を交わし……。

 

「で、どこにする、の? 海の底……遺跡、行こうとして、繋いで……水に、おぼれたり、流され、たりとか、あるから、気をつけないと、ね」

 

「……なら、逆の発想でこういうのは?」

 

 ゴブリンスレイヤーは魔女の話から咄嗟に閃き、尋ねてみた。

 

「んふ、ふ……面白い、使い方ね……」

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーは尋ねた話の通りの行き先を書いてもらう事にし、巻物を渡す。ただ、今から槍使いと冒険(デート)をするので時間はかかると言われた。

 

「別にそれで良い……楽しんできてくれ」

 

「ありが、とう」

 

 魔女に金貨を数枚、依頼料として渡すと微笑む魔女に対し、じゃあなといいつつ、ゴブリンスレイヤーはその場を後にしたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 孤電の術師が自分に依頼するという日まで時間はそれなりにあるのでゴブリンスレイヤーは冒険者としての依頼をする事にし……。

 

「AAAAAAAAAAA~~~~~!?」

 

「手間取らせやがって」

 

 今は使われていない炭鉱を巣穴としたゴブリンの群れを退治する依頼をこなそうとすれば、なんとそのゴブリン達はトロルに付き従っていた。

 

 もっともゴブリン達からすればあくまで利用しているだけだが……。

 

 ゴブリンスレイヤーは唐辛子を始めとして、目に鼻や口に強烈な刺激を与える物を原料とした催涙弾を容器としている卵の殻二個を続けざまにトロルの口の中へと放り、そうしてトロルは強烈な辛さや痒みなどに悶え苦しみ、呼吸困難に陥ったようで痙攣すら始めた。

 

「催涙弾は中々、使えるな」

 

 そんなトロルに容赦なく、ゴブリンスレイヤーは全力を込めた刺突を首へと放ち、貫くとそのまま抉り、やがて切断する事でトロルが居た証拠にした。

 

 そうして、次に受注した廃城を巣穴としたゴブリン退治をこなすべく向かい……。

 

 

 

 

 

「ぅ……ぁ……お願い……あいつ……らを……殺して……皆の……仇……を……」

 

「任せろ……」

 

 ゴブリン達に敗北し、嬲り物にされ尽くし瀕死となった冒険者の女性の遺言に頷き、それに笑みを浮かべてこと切れた彼女の目を閉じてやる。

 

 そうして、遺体となった女性冒険者に、終わったら戻ってくると言って、一旦その場から去り……。

 

「GROOWB!!」

 

「おおおおおおっ!!」

 

 そうして、廃城を巣穴としていたゴブリンの群れ――通常のゴブリン、ホブよりも巨体であり、筋骨逞しい戦士が如き姿のゴブリンにして後に小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)と言われる特異種のゴブリンたちへと真っ向から挑みかかった。

 

 

 

 

 

「はああっ!!」

 

『GROBRR!?』

 

沸き上がり、燃え上がり続ける激情を原動力にする事で全力以上の全力を発揮していく。

 

 投擲や弓など遠距離攻撃を行う上で重要なのは狙う事であり、転じてゴブリンスレイヤーは洞察力、観察力が優れていた。

 

 それによって相手の動きを事前に把握する事が出来ており、後は相手の動きに応じて対応すれば良い。

 

 そうして凄まじい戦舞を披露しながら、荒々しく武威を解放しては近接戦にてゴブリンの群れを次々と屠っていき……。

 

 

 

 

 

これでも、食らえ(テイク・ザット・ユー・フィーンド)!!」

 

「GRO!?」

 

 あっという間にゴブリンチャンピオンの足元へと潜り込みながら、ゴブリンチャンピオンの動きをも利用したカウンターによる強烈な斬撃で足の健を切り裂き、地面に倒したゴブリンスレイヤーはそのまま、素早く背中から昇りながら、跳躍しチャンピオンの頭上に落下しながら、右の逆手で柄を持ち、柄頭に左手を添えた状態の長剣を突き刺して殺した。

 

「……どんなに姿形、能力が優れていても……ゴブリンはゴブリン。そして、俺はゴブリンスレイヤー(小鬼を殺す者)だ」

 

 そう、チャンピオンの死体に告げて全滅させたのを確認すると女性冒険者の遺体を置いた部屋へと戻り、認識票と冒険者の遺体を回収。

 

 廃城から離れ、自然に溢れた山の中で遺体を埋葬してから、黙祷を捧げたのであった……。

 

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