『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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二十三話

 

 ゴブリンスレイヤーは冒険者ギルドにて今まで自分の冒険者としての活動を親身に支えてくれている三つ編みの受付嬢に対し、昨日はお礼をするために二人で街を歩き回った。

 

 別れる時も含めてとても楽しそうであり、幸せそうに見えたので十分に礼は出来たと思いながら、今日からまた冒険者としての仕事をしようとしていたのだが……。

 

「今日一日は俺に付き合え……勝負だ、男と男のな」

 

「……分かった」

 

 槍使いから声をかけられた。彼は彼なりに三つ編みの受付嬢に好意を抱いており、今までにも何度か仲良くなろうと声をかけている。しかし、結果としてはゴブリンスレイヤーの方が何度か食事をしたり、昨日に至っては街で逢瀬を交わしたという。

 

 

 

 故にこそ、彼は我慢する事が出来ない……嫉妬だの、なんだのと笑いたい奴は笑えば良い。女と結ばれるため、男二人が決闘をするなどありふれた話だろうがと槍使いは思う。

 

 それにこのままだと本当に自分がおかしくなりそうでさえある。とはいえ、このまま二人で殺し合いにもなるような事は想い人である受付嬢にも迷惑がかかる。

 

 

 

 なので……。

 

「じゃあ、やるか」

 

「ああ」

 

 ゴブリンスレイヤーは綿入りの鎧下に片手剣サイズの木剣を右手に持ち、握りを取り外したいつもの丸盾を左腕に通したという武装。

 

 対する槍使いも鎧下に穂先が尖ってない木槍という武装。

 

 そして、二人が対峙しているのは冒険者ギルドの裏手で縄が張られ、荷物が置かれるばかりであとは何も無い広い場所だ。

 

 

 今より二人は『実戦的な鍛錬』という名目で手合わせをしようというのである。

 

 そうして、準備を終えて対峙すると……。

 

 

 

「しいっ!!」

 

 槍使いは先手を取って、鋭い刺突を打ち込んできた。元より槍の方がリーチは上であるのだから、どうしても剣と盾という装備では先手を取られてしまう。

 

 無論、槍使いの実力が優れているというのもあるが……。

 

「ふっ!!」

 

 しかしてゴブリンスレイヤーも一度冒険を共にし、彼の槍捌きを見ている事や今も観察し続けた事で動きを読んでおり、彼の刺突に合わせて左の盾を出しながら僅かに払うように動かした。

 

「ふっ!!」

 

「はっ!!」

 

 すぐさま、槍使いは槍を引いてまた突き込むが槍使いが槍を引いた瞬間にゴブリンスレイヤーは木剣を捻じ込むように動かしており、槍の刺突を剣で捌き払いながら拳撃の要領で盾の正面を槍使いに対し、突き込む。

 

「ちっ!!」

 

 槍使いは槍の柄を持って受け止めるままにその勢いを利用して後ろへ跳躍する事でゴブリンスレイヤーとの間合いを空ける。

 

 

 

 

「流石にやるじゃねえか……」

 

「そっちこそ……」

 

 お互い、対峙する相手が強敵であると認識しながら、だからこそ『相手にとって不足無し』と戦意を猛らせ……。

 

『おおおおおっ!!』

 

 槍使いは鋭く激しい槍を唸らせるままにさながら獣の攻めを思わせる程の刺突、振り下ろし、薙ぎ払っていくという怒涛の槍捌きを見舞う。

 

 彼は今までの冒険者活動において多くの強敵である怪物退治に挑んでいるし、ロックイーター討伐においても果敢に挑んで仕留めているなど『いずれ、最強になる』という目標のままに武勇を発揮し、それは実戦の中でも鍛え上げられている。

 

 それに対しゴブリンスレイヤーは彼の全てを観察する事で槍捌きを事前に予測し、把握しては盾で受け流し、あるいは弾き、ときには鈍器として扱うのと同時、剣による振り下ろしや薙ぎ払いに刺突、あるいは受け流しに弾きと盾と剣の二つを間髪入れずに操る事で対抗していた。

 

 彼は彼で単身でゴブリンの群れに対抗するという修羅場を潜り抜けている。しかもその多くは暗闇という只人にとっては行動も知覚も制限される場所であり、しかも対峙するのは群れである。

 

 故にこそ、ゴブリンスレイヤーの感覚は研ぎ澄まされているし、空間把握能力は優れている。そして元から優れていた観察能力もあって相手の手を読み、機先を制する能力に長けていた。

 

 

 

 それを存分に発揮して槍使いの怒涛の槍捌きに対抗している。無論、間合いも上手く制しながら……。

 

 そうして二人の戦士は激しき戦舞を縦横無尽に披露しながら、応酬を続けていく。

 

 当然、その残滓は冒険者ギルドにも響いており……。

 

 

 

「二人ともやってくれるじゃねえか」

 

「わ、私も混ざりたくなってくるな」

 

「凄まじいですね」

 

「す、すっげえ……」

 

「はい……」

 

 重戦士に女騎士、半森人の軽戦士と少年斥候に少女巫術師は槍使いとゴブリンスレイヤーの手合わせを観戦しており、それぞれ注目させられていた。

 

「あいつ、普通に接近戦も強いじゃねえか……」

 

「うう、こんなの見せられたら私も挑みたくなっちゃいます」

 

 若い戦士に武闘家の少女もまた、手合わせを目撃し若い戦士は槍使いの実力をロックイーター討伐で一緒に参加していたからこそ知っているのでそれと渡り合っているゴブリンスレイヤーの実力に驚いた。

 

 投擲能力しか見ていないからだ。そして、武闘家の少女は女騎士と同じようにうずうずとした様子であった。

 

 

 他にも当然、手合わせを見ているのもいて……。

 

 

『(あいつ、あんなに強かったのか……)』

 

 今まで『ゴブリンスレイヤー』という異名やゴブリン退治を多くやっている彼の事を大した事無いと思っていた冒険者達はそれが間違いであった事を分からされる。

 

 

 

 

「はああっ!!」

 

「おおおおっ!!」

 

 二人は自分たちの手合わせを観戦している者の事など全く知らないし、意識していない。力も技も意識も自分の全てを相手に勝つ事に向けて注いでいる。

 

 そんな二人は十、百、千、いや終わりなど見えない程に相手と戦舞を応酬し続けている。

 

 朝から初めて昼になろうという長い時間……当然、そこまでになると……。

 

 

 

 

「これが冒険者達の戦いなんですね……」

 

「……怪物たちと戦えるわけだ」

 

 三つ編みの受付嬢と彼女の同僚で至高神の信者でもある女性も手合わせを様子を見るために目撃しており、だからこそ圧倒されていた。

 

「へ、良いもん見せてくれるじゃねえか」

 

 工房の親方も休憩がてらに若さに溢れた二人の戦舞に対し、眩しさや懐かしさなど含めた様々な物を感じて評する。

 

 

 

「づっ!?」

 

「くっ!?」

 

 お互いの攻撃を打ち合い、それは弾かれ合う事でどちらも勢いに引っ張られるように後ろへと後退。

 

 どっちも自身の消耗具合を把握する。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 二人は激しく息を切らせながら、『これが最後だ』とばかりに目で語り合い……最後の一撃のための構えを取り……。

 

『あああっ!!』

 

 咆哮を上げ、お互いが相手へと踏み込んでいき……そして、交錯してすれ違う。

 

 

 

 

 その一瞬……。

 

『あれは!?』

 

 重戦士と女騎士がある物を見て驚く。

 

 

『……』

 

 

 そんな中ですれ違った事で背を向け合っているゴブリンスレイヤーと槍使い。

 

「くっ!?」

 

 ゴブリンスレイヤーは地面へと膝を付き……。

 

「……へっ」

 

 槍使いはそんなゴブリンスレイヤーを見ながら、地面に前のめりに倒れる。

 

「俺の勝ちだ……」

 

 それを見ながら、ゴブリンスレイヤーは槍使いに自分の勝利を告げる。

 

 そう、手合わせはゴブリンスレイヤーの勝利にて終わった。

 

 二人が交錯した一瞬――ゴブリンスレイヤーは槍使いが攻撃した瞬間、()()()()()()()()()()()()()事で槍使いの攻撃の芯をずらし、直撃を避けると同時に木剣の攻撃を炸裂させていたのである。

 

 とはいえ、直撃を避けただけで槍使いの攻撃も受けてしまってはいるのだが……。

 

 そして、その体を半分ずらすという動きは……。

 

「あいつめ、我が秘剣を真似てみせるとはな」

 

 重戦士の一党の一人である女騎士の家に伝わる秘剣のそれであり、彼女は一度冒険を共にしたときに使ったそれをゴブリンスレイヤーが自己流のそれが入っているとはいえ、真似して見せた事に複雑となりながらも賞賛する。

 

「まったく、どういう術理か俺でも分からねぇのによ。大した奴だぜ、本当に」

 

 重戦士は女騎士の秘剣を真似したゴブリンスレイヤーを賞賛する。

 

「二人、とも……良い、戦い、だったわ、よ」

 

 そうして二人の手合わせが終わった事で魔女は拍手をし……。

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

 それに続くようにゴブリンスレイヤーと槍使いの二人に拍手や喝采を観戦者たちは送るのであった……。

 

 

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