二十四話
冒険者ギルドの裏手でゴブリンスレイヤーと槍使いは激しき手合わせを行なった。どちらも将来は武勇優れる英傑になれると断言できる程の才気の持ち主であり、実力は伯仲していた。
よって長時間にわたる激戦となり、本当にぎりぎりのところでゴブリンスレイヤーは勝利を掴んだ。もっとも消耗しすぎたあまり、気絶した槍使いと同じように動く事がしばらくの間、動く事が出来なかったが……。
「あーっ、くっそ……負けちまった……本当にお前は強かったよゴブリンスレイヤー。だが、このままじゃ終わらねぇからな」
「ああ、またやろう……今回は俺が勝ったとはいえ、本当にギリギリのところだったからな。お前の方こそ、強かったよ」
ゴブリンスレイヤーと槍使いはその後、握手を交わして再戦を誓いながらも互いを讃え合う。
『血沸き肉躍る戦いを見せた二人に乾杯』
また、二人して酒場に呼ばれ、戦いぶりを観戦していた冒険者達から讃えられた。
「まさか、私の秘剣を真似るとはな。驚かされたぞ……だが、私の技で勝ったのならそれは私のお陰という事になるな」
特に自分の秘剣をゴブリンスレイヤーに真似られた女騎士は手合わせの勝者であるゴブリンスレイヤーに良く絡んだ。
「良い技を学ばせてもらったという事なら、そうだな……もっともあの極限状態の中でようやく、形にする事が出来たってだけなんだが」
回避と攻撃を両立できるような女騎士の秘剣を少しでも真似れるように鍛錬したゴブリンスレイヤーだが、中々習得に苦労していて鍛錬中に成功した事は無かった。だが、あの極限状態の中で
「私だって出来るようになるまで相当、苦労したんだ。それを完全ではないとはいえ、再現しただけ大したものだぞ」
「どうも」
背中を叩きながら、言う女騎士に対しゴブリンスレイヤーは少し圧されながら対応していた。
「これはまた、私達の冒険に付き合ってもらう事で借りを返してもらわねばならんな」
「まあ、そういう事で良いなら喜んで……」
すまんとばかりに重戦士が目線で伝えるのに応じながら、ゴブリンスレイヤーは重戦士の一党とも一緒に冒険をする約束を交わす。
更に……。
「ゴブリンスレイヤー……お前、あんなに強かったんだな」
そう、今まで交流の無かった冒険者達にまで話しかけられる。そうして、色々と交流をしていく。
「その……勝利おめでとうございます。私は荒事は好まないんですけど……でも、貴方の戦う姿、とっても格好良かったです」
「ありがとう」
三つ編みの受付嬢からもゴブリンスレイヤーは勝利を讃えられたのであった……。
なんだかんだで良い一日を過ごしたゴブリンスレイヤーはその翌日……。
「あの、此処にゴブリンスレイヤーっていう冒険者がいるんですよね?」
冒険者ギルドへと入れば、受付嬢へと必死な様子で問いかけるどこかの村人を見た。
「それは俺の事だ」
その村人へ話しかけ……そうして……。
「じゃあ、行ってくる」
「はい、気をつけて」
ゴブリン退治を依頼に来た村人のそれと他にもいくつかのゴブリン退治の案件を受け、受付嬢に声をかけて見送られながらギルドを出立する。
そうして……。
「(使わせてもらうぞ)」
自分の魔術の師であり、今はこの四方世界の外へと旅立ってしまった孤電の術師より渡された魔法発動体である指輪をゴブリンスレイヤーは右手の人差し指にはめていた。
それを見ながら、孤電の術師へと言い……。
「≪
『!?』
ゴブリンスレイヤーは世界の理を書き換える真に力ある言葉を口にする事で魔術を発動した。ゴブリンスレイヤーの言葉が世界に広がり、道理を捻じ曲げると共に時間の流れが遅滞し始め、その影響によって攻めかかったゴブリンの群れの動きも遅滞。
ゴブリン達は態勢を崩しながら、隙を晒した。
「おおおっ!!」
当然、ゴブリンスレイヤーはその隙を衝いて仕留めていった。
他にも……。
「≪
『GO?……』
吸えば眠りへと誘う霧を発生させてゴブリンたちを眠らせると起こさないよう静寂の化身の如き動きによって、眠っているゴブリン達へと接近し、二度と起きる事が出来ないようにした。
あるいは……。
「≪
『!!』
ゴブリンの群れが居る周囲の物音や発声を封じ込めながら、シャーマンの魔術を封じ、他のゴブリン達も混乱させる中で自分の存在を気取らせないままにゴブリンスレイヤーは奇襲を仕掛け、機先を制する事でシャーマンから順に仕留めていく。
「≪
『GOB!?』
ゴブリンの群れを誘き出し、近づいて来たところで地面に油を流れさせ、ゴブリン達の足を滑らせて地面に倒れさせるとゴブリンスレイヤーは瞬時に仕留めにかかった。
ゴブリンスレイヤーは今も孤電の術師から送られた一枚、一枚が魔術書の断片である札や孤電の術師が残していた魔術書で魔術を学んでいる、そして、主に自分の有利となる状況作りに魔術を使っていた。
もっとも状況次第では……。
「≪
必殺必中の性能を有する力場の矢である ≪
だが、ゴブリンスレイヤーが孤電の術師より得たのは魔術だけではない。彼女は色々と多分野に挑んでいたのか、毒虫の類や毒草、木の根など何らかの薬を作り出せる物や硫黄といった魔術師や錬金術師が使うような物などそうした品を家に幾つも保有しており、自分の家ごとゴブリンスレイヤーに報酬として与えている。
だからこそ、彼は催涙弾を孤電の術師から譲られた毒虫に毒草、木の根などを加えたりしながら、研究しつつ強化したり……。
『な、なに!?……げほ、ごほ……』
ゴブリンを利用して何かをしようとしていた闇人の集団に対し、彼らが拠点としている屋敷に潜入したゴブリンスレイヤーは戦に詳しかった工房の親方の意見を参考に硫黄と松脂を混ぜて固めた大きく、薄い黄色の塊であり、焚きつけの木っ端とともに紐で縛り上げ、球状に拵えたそれを作り出した。
それを雑嚢から取り出し、火を点けると同時、闇人が集っていた部屋の中へと転がしながら、すかさず扉を閉めて縄や楔で闇人が部屋から出られないようにする。
最初こそ、咳き込みながら扉が激しく叩かれたりしたが苦し気に呻き始め……そして、部屋の中は静寂に包まれる。
「成程、戦で使われる訳だ……もうちょっと調整しておくか」
毒気が十分に収まった段階で部屋を開ければ、まるで地獄を体現したかのような形相で闇人が死亡しており、全滅していた。
初めて使った物による実験結果を見ながら、ゴブリンスレイヤーは呟く。
ともかく、彼は孤電の術師から受け継いだものをも駆使してゴブリン退治を中心に活動していくのである。
そんな中……とある都の冒険者ギルドにて……。
「……見た方が良いですね」
黒髪を短めにしているが右の前髪は右目を覆い隠すために長く、顔もスタイルも優れている女性だがスーツは男性用の物を着ている男装の麗人とでもいうべき職員がゴブリン退治をやっている件数が圧倒的に多く、他の怪物退治もやっているが単身が本当に多く、一党を組んでいるのは極端に少ないゴブリンスレイヤーの等級審査に関する書類を見て、顔をしかめながら呟くのであった……。