『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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二十五話

 

 

 そのゴブリン退治の依頼が出される経緯としては定型的(テンプレート)なものであった。

 

 村の近くにゴブリンが出てくるようになり、追い払ったがおっかないので退治してくれという事である。その依頼を受けたゴブリンスレイヤーは村人から情報を得つつ、ゴブリン達の索敵を始める事で居場所を突き止めた。

 

「まあ、住み着くなら此処になるよな」

 

「GOROOGBB!!」

 

 村から程近い湿地の放置された作業小屋を住処としている四体のゴブリンが地に伏せて少し離れた所からゴブリンスレイヤーが観察する中、笑い声を上げてなにやら戯れている。

 

 ゴブリンが住処としている作業小屋は作物が不作だったり、薪が足りなかったり、そんな時には重宝するという泥炭を掘るのに使うものであるとの事。

 

「仕掛けるか」

 

 少し立ち上がると静かに動きながら、ある程度の距離まで接近しつつ腰帯に吊るしている袋から幾つかの石と瓦礫を手にすると……。

 

『GOB!?』

 

 素早く、そして矢継ぎ早に手にしている物を投擲する事で四体のゴブリンに命中させ、頭部を破壊し、胴体を穿つなどして仕留めていった。

 

 「さて……」

 

 作業小屋の方へと素早く、かつなるべく静かに接近すると作業小屋の扉の側に身体をつけ、片手剣を抜いて右手で持ちながら、隠れるようにしつつ、左腕に括りつけている盾で小屋の扉を二回、叩く。

 

 大きな音と震えを生じさせるが、少し待ってもゴブリンが出てくる様子は無い。

 

「……ふっ!!」

 

 反応が無いので次の瞬間、扉を蹴破って突入し、中に他のゴブリンがいないかを徹底的に捜索し、いないのを確認した。

 

 とはいえ、四体のゴブリン以外のゴブリンが外に出ただけの可能性もあって、戻ってくる可能性もある。仕事である以上は徹底的にやらなければならないので小屋の外に出て作業小屋の中にあった円匙(シャベル)を使って、大きめの穴を掘ってゴブリン達の死体と武器を埋めた。

 

 そうして、小屋の中に隠れつつ扉近くに座って監視する。

 

 

 

 

「む、地震か……」

 

 少しすると地震が起こり、それは二、三秒で治まった。

 

 

 

 そうして次の日の朝まで監視して他のゴブリンが来ないのを確認するとゴブリンスレイヤーは村人にゴブリンを退治した報告をし、受けた依頼を全部完遂したので部屋を借りている牧場へと帰還を始めた。

 

「おかえりなさい」

 

「ああ、ただいま……髪、結んだんだな」

 

 牧場へと帰還すると幼馴染の牛飼娘がゴブリンスレイヤーを出迎える。ゴブリンスレイヤーは牛飼娘の抱擁に応じながら、彼女が後ろ髪を結っている事に言及する。

 

「うん、伸びた髪が張り付いて邪魔になるから……変じゃないかな?」

 

「全然。むしろ、印象も変わって新鮮で良いと思える。もう少し伸ばしても良いんじゃないか?」

 

「えへへ、君がそう言うなら、そうしてみようかな」

 

「他にも色々と髪型を変えたり、色んな服を着たりしてみてほしいと思う。お前のいろんな魅力を知りたいからな……また、そのうち街を回ろう。前の時より、稼いでいるしな」

 

「……じゃあ、楽しみにしてるね」

 

「ああ」

 

 ゴブリンスレイヤーの求めに牛飼娘は顔を赤らめながら、頷いたのであった。ともかく、そうして牧場で休息を取ると翌日、辺境の街での牛飼娘の配達を手伝うと冒険者ギルドへ……。

 

 

 

 

「あの人がいないな」

 

 ゴブリンスレイヤーが冒険者ギルドの中へと入れば、受付の所にいつも世話になっていて仲良くもしている三つ編みの受付嬢がいなかった。

 

「おはよう、依頼達成の報告に来たんだが」

 

「おはようございます。でも、ちょっと待っててくださいねー」

 

 三つ編みの受付嬢の同僚で胸元に正義と裁きを司る至高神の信徒の証である天秤剣の意匠の聖印がある女性がゴブリンスレイヤーの姿を見ると奥の部屋へと向かい、少しすると……。

 

 

 

「では、依頼達成の報告を聞かせてもらいますね」

 

 受付嬢の同僚が再び部屋から出てくるとゴブリンスレイヤーから依頼達成における内容報告と依頼による報酬を渡した。

 

「すみません。今日は一度帰っていただいて明日、また来てもらえますか? 昇級の話がありますのでなるべく、身綺麗にしていただければ」

 

「分かった」

 

 そうして、帰ろうとしたところで……。

 

「よう、ゴブリンスレイヤー。今日はこのまま、帰るのか?」

 

「ああ、明日昇級の話があるからって言われてな」

 

「ほう、やったじゃないか。お前ならば確実だろう」

 

「だと良いがな……ちょっと、良いか?」

 

 重戦士と女騎士から声をかけられたので応じながらもゴブリンスレイヤーは重戦士の目に軽い隈があり、どことなく辛そうにしているのを観察眼で見抜く。

 

 

 

「む、私か?」

 

「ああ、そうだ。悪いが、借りてくぞ」

 

「それは別に良いが……」

 

 ゴブリンスレイヤーは女騎士を呼び……。

 

「あいつ、疲れが溜まっているようだぞ。あまり寝ないようにしているし、食事も減らしているんじゃないのか?」

 

「……やっぱり、そうか……」

 

 ゴブリンスレイヤーが重戦士の事について言えば、女騎士は合点が言ったかのように呟く。

 

 彼女によれば重戦士は自分一人で一党の予算やら装備やらの管理をしているとの事だ。そして、重戦士の一党の少年斥候と少女巫術師の年齢は実は成人となる十五歳より下、つまりは年齢を偽っていたのが昇級審査にて発覚し、厳重注意をされたとの事。

 

 それもあって、色々と大変なようだ。

 

「そうか……ともかく、あいつを殴り倒してでも食事は取らせて、睡眠もさせろ。冒険者は身体が資本なんだからな。一党を組んでいるなら全員が全員、互いを支えるべきだろ?」

 

「ああ、そうだな。そうさせてもらう……助言をありがとう」

 

「臨時とはいえ、一党を組んだ仲だし良い技も学ばせてもらった礼だ。それじゃあな」

 

「ああ、昇級頑張れよ」

 

「応援、どうも」

 

 女騎士に感謝をされながら、ゴブリンスレイヤーは冒険者ギルドを去る。

 

 

 

 

「昇級の話が明日あるって言われた」

 

「え、やったじゃん。おめでとうっ!!」

 

「中々、順調なようだな」

 

 牧場へと戻り、昼食を食べている時にゴブリンスレイヤーは昇級の話をし、牛飼娘は喜び、牧場主は苦笑をする。

 

「昇級が決まったら、ごちそうでお祝いしなきゃね」

 

「そうしてもらうと嬉しいな」

 

 牛飼娘とそんな話をし、昼食を済ませたゴブリンスレイヤーは牛飼娘が『ちゃんと休まなきゃだめだよ』と昇級の話があるなら、体調は万全にするべきだと言い、そうして鎧やら盾やら装備に鎧下などは自分が身綺麗にすると言ったので礼を言いながら、任せる事にし休息を取る事にした。

 

 もっとも先のゴブリン退治にて消費した催涙弾の用意やら、雑嚢の整理など軽く出来る事はやったが……。

 

 

 

 

 そして、翌日……。

 

 

 

「(これは、面白くなりそうだ)」

 

 三つ編みの受付嬢が緊張した表情を浮かべていて、後ろでは男装の麗人ともいうべき女性がいた。だが、ゴブリンスレイヤーはその観察眼で自分を遥かに上回る強者であり、元冒険者なのだというのを見抜く。

 

 そうした視線を向けたのを分かっているからなのか、その女性職員は面白いとでも言うような表情を一瞬浮かべつつ、直ぐにその表情を平静のものとする。

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーは二人の女性の元へと向かったのであった……。

 

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