『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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二十六話

 

 冒険者ギルドの階上にある組合応接室は王侯貴族や商人も利用する室内のため、豪奢な長椅子や毛足の長い絨毯、壁一面に飾られた怪物や魔獣の首、古びた武具と豪奢な部屋かつ冒険者ギルドが冒険者達を管理する組織であるというのを知らしめる部屋となっている。

 

 そんな部屋にゴブリンスレイヤーは査察官だと名乗った麗人職員と公私、共に親しくしている受付嬢らに行くよう言われ、先に入るよう言われたので入口からも窓からも遠い奥の席の側に移動し、兜を脱いで小脇に抱えながら受付嬢と査察官が入るのを待つ。

 

「それでは始めましょうか……どうぞ、お座りください」

 

「では、失礼して……その前に兜は机に置かせてもらっても構わないだろうか?」

 

「ええ、どうぞ。依頼者などに相対する場合は部屋に入る前に預けたりする方がよろしいですけどね」

 

「すまない、次から気をつける」

 

 査察官の指摘に頷きながら、机の上に兜を置き、長椅子へゆっくりと座り、膝の上に両手を置いた。慣れていない動作なのでぎくしゃくとしていたからか椅子に座った査察官と受付嬢に苦笑を浮かべられた。

 

「結構……礼儀作法(エチケット)を意識するのは良い事です……さて」

 

 そうして、査察官は手元の書類を広げ……。

 

「貴方はゴブリン退治の依頼を中心に受けていますね。偶に他の怪物や邪教集団や盗賊退治の依頼も受けているようですが……ただ、圧倒的に単独行(ソロ)が多いですね」

 

「ゴブリン退治は一人でやる分には報酬は十分な資金に活用できるし……ソロなのはその方が自分にとってはやりやすいからだ。とはいえ、誘われたら他の冒険者と一党を組んだりして、付き合いを意識はしているが……問題なのだろうか?」

 

「いえ、依頼先の村で問題を起こしていませんしむしろ、感謝もされているので問題という問題は無いですが……」

 

 ゴブリンスレイヤーの答えに査察官は書類を広げながら、そう言いつつ……。

 

「だからこそ、貴方が他の冒険者との一党(パーティ)との協調性が取れるのかという事と貴方自身の冒険者としての実力を審査させてもらう必要があるのです」

 

「昇級するのに審査が必要だというなら、受けさせてもらう」

 

「であれば、同行する人員を選出します。今日の予定は?」

 

「この審査、面談が終わったら依頼を受けようとしていた。ゴブリン退治だが……」

 

「結構! 階下で依頼を受けたならそのまま少し待機していてください。すぐに向かいます」

 

「分かった、では先に行っても?」

 

「ええ、どうぞ」

 

 査察官の返答を聞くと立ち上がり、兜を取って被ると扉の前まで歩き、『失礼した』と言って、一度査察官に受付嬢達へ頭を下げると扉へと振り返り、開けて部屋から出て閉める。

 

 

 

 そうして、ゴブリン退治の依頼書を板から剥がして、受付嬢の同僚に渡した。

 

「よお、昇級どうだったって?」

 

「合格したか?」

 

 すると若い戦士と女騎士が尋ねてきた。

 

 

 

「審査を受ける事になった。同行者を伴って依頼をしろというものでな」

 

「あー、一党で行動できるかどうかって奴か」

 

「お前は普段、単独行だからな」

 

 ゴブリンスレイヤーからの返答に『だろうな』と言った様子で二人は言う。

 

 

 

「そっちは、あいつの様子はどうなんだ?」

 

「ああ、お前の助言通り一回、殴り倒して無理やり寝かせた後、皆で話し合ったりした。ちゃんと適度に食事も睡眠もさせている。本当に助言ありがとうな」

 

「ああ」

 

 女騎士に重戦士の事について尋ねれば、女騎士は答えながら再度、ゴブリンスレイヤーに礼を言い、ゴブリンスレイヤーは頷く。

 

 

 

「ええ……っ!? こっちじゃ冒険者ギルドに入らないといけないの!?」

 

 ギルドの受付からずいぶんとくたびれたローブを纏った妖術師と思わしき娘が声を上げた。ローブの裾からは剣の鞘先を覗かせてもいる。

 

「どんどん新人とかも増えてくるよな、これからは」

 

「お前も新人の仕事は残しておけ……ゴブリン退治は元々、そうしたものだからな。というか、お前はもっと上の仕事をしろ」

 

「新人のための分は残すよう、心掛けてはいるがな」

 

 そんな話をして、若い戦士と女騎士は『審査、がんばれよ』と応援していき、ゴブリンスレイヤーから去っていく。

 

 

「準備は宜しいですか?」

 

 査察官が隣に受付嬢を伴いつつ、頭陀袋(ずたぶくろ)の口を縛った紐を手馴れた様子で肩にかけている点であった。 

 

「ああ………同行者というのは貴女の事だったのか」

 

「はい、せんぱ――……ではなく、ギルドの職員が監査役として同行します」

 

「そういう事ですので……では、行きましょうか少年」

 

「分かった、よろしく頼む」

 

 十五歳で成人しているので少年という呼び方に思うところはあるが、それでも向こうからすれば自分は少年なのだろう、受け入れて頭を下げる。

 

「結構……そして、審査においては全て少年次第。こちらからどうこうは言いません」

 

「一党で言うなら、俺が頭目(リーダー)という事か」

 

「物分かりが良いですね。その通りです」

 

「それじゃあ、出立する」

 

 そうして、査察官を伴って歩いていき……。

 

 

 

「えっと、その……頑張って、くださいね!」

 

 冒険者ギルドを去ろうとするとき、受付嬢に声をかけられた。

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーは依頼の場所へと行く前に……。

 

 

 

「……という事で審査を受ける事になった」

 

「どうも」

 

「あ、ど、どうも」

 

 牧場にいる幼馴染の牛飼娘に依頼をしながら審査を受ける事を伝える。

 

 査察官が普段のそれとは違い、手馴れた様子で柔らかく、牛飼娘に微笑んで牛飼娘は大慌てで頭を下げる。

 

「貴方は彼の妹御ですか?」

 

 査察官は牛飼娘へゴブリンスレイヤーの妹なのかと質問し、否定されれば細君かと問い、牛飼娘は頬を赤らめながら、大きく否定する。

 

「彼の鎧具足を磨いたのは貴女ですか?」

 

「あ、は、はいっ」

 

「そうですか。結構――そういうご家族がいるのはとても良い事です」

 

 そんなやり取りをしながら……。

 

「えと、その……彼の事、よろしくお願いしますっ」

 

「無論です」

 

 牛飼娘が大きく頭を下げて言った事へ査察官は柔らかく微笑んで応じた。

 

 こうして、ゴブリンスレイヤーは査察官からの審査を受けながらゴブリン退治をこなすため、移動を開始するのであった……。

 

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