『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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二話

 

 新人冒険者となった彼が受けた『ゴブリン退治』の依頼は冒険者の世界ではありふれた依頼にして数多いものである。新人冒険者の一党が誕生する度に一つ、依頼されるという程に。

 

 だが、冒険者たちの多くはゴブリン退治の依頼をさける傾向にある。それはゴブリンが最弱の怪物であるため、退治してもあまり武勲にならないというのもあるが数だけは多く、しかも簡単な罠や小細工など狡賢さを持っていてそれなりに厄介である事、男は殺し、女は攫って犯して孕ませるなど他の怪物と比べてかなり生理的嫌悪を抱かせるなどそうした面を持つが故だ。

 

 世界的な規模で言うとゴブリンがもたらす被害は大したものじゃ無いし、その気になれば討伐は容易いといった面からゴブリンへの対処は後回しにされがちというのもあった。

 

 だが、少なくとも新人冒険者である彼はゴブリン退治に全力で取り組もうとしている。なにせ自分の村も何か一つ、ミスを冒せば侵略され蹂躙され尽くすところだったのだから……。

 

 そうしてゴブリン退治の依頼を出した村に詳しい話を聞きに行き、村を襲って家畜を奪い、女を一人攫ったゴブリンの群れが要る洞窟へと彼は向かい、洞窟の目前にある森の中の茂みに身を潜めて観察をしていた。

 

 因みにそれまでの道中、自分が身に着けている鎧と盾に泥や土をたっぷり塗りたくって金臭さを消した。何かの拍子に匂いで気づかれないようにするためだ。

 

 

 

「なんだ、あれは?」

 

 度々、巣穴を出入りするゴブリンを観察する中で獣の頭骨を組み合わせた奇怪な塔が汚物の山の横に建てられている奇妙な塔が気になった。

 

 詳しく調べる事にしながら、見張りを交代したばかりのゴブリンたちを見やる。もっとも交代する前のゴブリンも交代したゴブリンも真面目にはやっておらず、どこか面倒くさげだ。

 

「今だな」

 

 観察のために伏せていたために少し強張った体の関節をほぐし、装具の帯を緩めていたのを締め直す。そうして、準備していた拳大の石を二つ持つと……。

 

「ふっ!!」

 

『GOOROB!?』

 

豪速で見張りのゴブリン二匹の顔面に炸裂させる事で破壊する。更に石を持って少し様子を見るが、交代したばかりとあってか洞窟にいるゴブリンたちは姿を現さない。

 

 彼は素早く、しかし慎重にゴブリンの死体に近づいていき、一匹の死体に対して短刀を抜くと猟師が獲物を捌くようにして解体していき、鎧と盾に塗りたくる事で洞窟内のゴブリンたちが匂いにおいて自分を感知できないようにした。

 

 そして、雑嚢から松明を取り出し、火口箱で火をつけて左手に持ちながら一旦、洞窟の外を調べる。

 

 

 

「別の出入り口……」

 

 

 

 何かのための出入り口を見つけた。出入り口へと入りながら少し進むと一旦、松明を放る。

 

 

『GOB!!』

 

 

 

すると暗闇の中からゴブリンの数匹が姿を現した。

 

「引っかかったな」

 

 駆け走りながら、短刀を抜きそうして腕に通した盾をそのまま鈍器の如く振るい、あるいは前に突き出す事で殴殺し、短刀で切り刻み、突き刺しまくる事で全滅させた。

 

「成程、こういう罠だったか」

 

 血振るいした短刀を鞘に納めながら、誘い出したゴブリンたちが持っていた短刀や剣、手斧の幾つかを投擲用のために腰帯へと通し、一本だけ右手に持つと左手で放り捨てた松明を回収し、そのまま進んで確認すると通常の入口から入ってきた者に対して奇襲をかけられる横穴となっていた。

 

 あの奇妙な塔は侵入者に対して注意を惹くためのものであったのだ。

 

 

 

「厄介なのがいるか?」

 

 猶更、警戒を強めて慎重に進んでいく彼……。

 

 

 

 

「しっ!!」

 

 ふと動く何かを発見したのでその方へと右手の投擲用の剣を投げ、それは刺さった音と命中したゴブリンの悲鳴を響かせる。

 

 

 

「GOB!!」

 

すかさず反撃にきた別のゴブリンが数匹襲い掛かって来たが、腰帯に差していた投擲用の手斧や剣を抜き出しては投擲していく事で命中させ、殺していく。

 

 

 

「せいっ!!」

 

 松明を棍棒として振るって殴殺し、抜いた短刀で切り裂き刺し殺す。

 

 また、幾つかのゴブリンの武器を投擲用として獲得すると進み……。

 

 ふと多くの声と動きの音を感じたのでその方向の暗闇に向けて、松明を思いっきり投擲する。

 

 

 

『GOBBB!!』

 

すると結構なゴブリンが動く反応を見せ、その中には棍棒を持った巨漢のゴブリン―― 田舎者(ホブ)とも呼ぶべきゴブリンがいた。

 

これでも、食らえ(テイク・ザット・ユー・フィーンド)!!』

 

 彼は腕に通しただけの盾を右手で引き抜くと磨き抜いた投擲の技をもって特殊な回転をさせながらゴブリンの群れへと投擲する。

 

 

 

『GORB!?』

 

回転しながらゴブリンに向けて飛来する盾は壁や地面に当たり、跳ねるようにして軌道を変幻自在に変えつつ、ゴブリンたちに激突しそれによってまた、軌道を変えながらゴブリンたちに激突し、蹴散らしていく。

 

 

「おおおっ!!」

 

 彼は片手剣を抜くと倒れているゴブリンたちに対し斬撃を繰り出し、首や腹をそれぞれ数回切り裂き、あるいは突き刺して抉る事で止めを刺していく。

 

 盾を拾い上げ、左腕に通し直しながらやはり、幾つか投擲用にゴブリンの武器を獲得すると松明を拾い直して先へ進む。

 

 

 

「GOB!!」

 

 

「いやぁっ!!」

 

 そうして聞こえるゴブリンの嗤い声と攫われた娘の苦鳴……。

 

 

 彼は進んでいき、大広間が垣間見える所に辿り着き、そこでは鎖で繋がれている女を犯しているゴブリンの酋長の姿も垣間見えた。

 

 

 

「おい!!」

 

「GOBB!?」

 

大声で呼びかけると酋長は驚いて振り返り、驚愕する様子を見せた。

 

「GOBORG!!」

 

その直後に彼は腰帯に差していた投擲用の武器を投擲し、それは酋長の頭部に突き刺さる事で倒れさせ、死亡させた。

 

 

 

「……」

 

 ゴブリンが隠れ潜んでいるかもしれないために部屋内を捜索し、見よう見まねで作り上げられた祭壇であり人骨で組まれた祭壇を蹴り倒す。

 

 するとゴブリンの子供が数匹いた。

 

 

 

「死ね」

 

 抜いていた片手剣を振るい、ゴブリンの子供を斬殺する。

 

 

 

「もう、これ以上は酷い目に遭う事は無い。それだけは約束できる」

 

「……はい」

 

 鎖で繋がれていた娘を救出し、声をかけると娘は安堵の息を吐いた。

 

 そうしてゴブリン退治を終らせた彼は娘を背負いつつ、洞窟内を出るために歩く。

 

 

 

 

「ゴブリンは全滅させた。この娘の事はよろしく頼む」

 

「ああ、勿論だ。任せてくれ」

 

 そうして依頼した村にゴブリンの全滅を伝えつつ、救出した娘の事を任せて彼は去って行き……。

 

 

 

 

「お疲れ様」

 

「ただいま」

 

 辺境の街の近くにある牧場にて、彼の帰りを待っていて彼が来ると直ぐに出迎えた牛飼娘に対し、彼はそう告げるのであった……。

 

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