『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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二十九話

 

 ゴブリンスレイヤーは査察官と共にゴブリンによる大規模の群れがいるとされる鍾乳洞へと向かった。その周辺にある村の長によれば鍾乳洞の中は複雑であり、そして広いとの事だ。

 

 それもまた、ゴブリンが大規模の群れを築いていると判断できる要因であった。

 

 朝方に強行軍で鍾乳洞へと偵察に向かうゴブリンスレイヤーは同行する査察官にゴブリンは昼に寝て、夜に起きる習性を持っていて、ゴブリンにとっては昼が夜で、夜は昼だと伝える。

 

 偵察するなら見張りが疲れ切っている夕暮れか、明け方が良いと説明をすると、「道理ですね」と納得を得た上で向かい……。

 

「GROORGB!!」

 

「GB!! GORGBB!!」

 

森の中に見える鍾乳洞の入り口近くに粗雑な槍を携えた小鬼の歩哨が二匹立っていて、傍には汚物が山と積まれており、反対側には異様で奇怪なガラクタを組み合わせた塔が一つ。

 

 汚物の量や入り口に続く踏み荒らされた足跡の数、明らかに掘り広げられた入り口の穴と中に居るゴブリンの数は絶対に十匹よりも遥かに多い数である事が窺えた。

 

「想定以上で想定内ですね」

 

「ああ……あの塔があるのは大体、ゴブリンのシャーマンがいる証だ。となればホブもいるだろうし、悪魔犬……他の場所からゴブリンを招集しているのも含めれば……村を滅ぼすに十分な軍隊が形成されていると考えても良い」

 

「それなら、我々だけで相手取るものでは……」

 

 ゴブリンスレイヤーと査察官が相談する中……。

 

「GOGGRGBB!!」

 

洞窟の入口から贅肉で超えた大柄な小鬼が現れ、手には大斧を携えており、頭には赤錆びた鉄の輪であり、王冠(クラウン)があった。

 

小鬼王(ゴブリンロード)か」

 

「そのようですね、見様見真似でしょうが」

 

 二人の目の前でロードは見張りの小鬼から妬みとへつらいの色を浮かべて目を向けられ、頭を下げられている。それを足蹴にしても反抗されていない事からロードが上位に君臨している事は明らかである。

 

 

 

「少年、やはり増援は必要です。それに村の防備を固める事も……」

 

「いや……それよりは村を襲おうと準備している今こそが好機だ。攻められるとは思っていないだろうからな。そして、なにより大勢で固まっていてくれるのが良い」

 

「どういう意味ですか?」

 

「大勢が()()()()()()()()()()()()()()()()()からな……そのための方法と用意は幾つかある」

 

「ふむ……」

 

「夕方を待って踏み込むが……村に鍾乳洞を潰す事の許可も含めて伝達を頼めるか?」

 

「分かりました」

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーは査察官に村へと伝達に行ってもらい、村長から『そういう事なら、存分に潰してくれ』という許可を得てもらったのであった。

 

「しっ!!」

 

 夕方になると見張りだが寝ぼけ眼のゴブリン二体に石と瓦礫を投擲する事でその頭部を破壊した。

 

 

 

 更に交代で来た歩哨も同じく投擲によって仕留める。

 

「これを付けておいてくれ……」

 

「匂い消しの香袋ですか」

 

「ああ、ゴブリンは都合の良い事に女性の匂いには特に敏感だからな」

 

 ゴブリンスレイヤーは査察官に雑嚢から取り出し、封を開けていない匂い消しの効力を有した香袋を渡す。

 

「そうですか」

 

「じゃあ行こうか。≪死の迷宮(ダンジョン・オブ・ザ・デッド)≫には劣るだろうが」

 

「ふっ……比較対象にすらなりませんよ少年」

 

 こうして二人でゴブリンの巣穴となっている鍾乳洞へと入っていく。ここでは査察官が斥候を引き受け、その索敵技術や罠の看破などを見ながら隠密行動をし、自分たちの姿を見せぬままに発見したゴブリンを暗殺していく。

 

 

 

「ゴブリンと出くわす以上、この道は当たりのようですね」

 

「ああ」

 

 適当に掘り広げているために複雑な構造になっているが、どう考えても脆さを醸し出している鍾乳洞を「(潰しやすくて良いな)」と最終的な計画において、ゴブリンスレイヤーは都合が良いと思いつつ、二人で進んでいき……。

 

「止まって……」

 

 査察官と一緒に身を潜めながら、周囲を見れば粗雑な戸板で出来た扉を発見。

 

「ぎ、いいっ!!」

 

 中からは肉を叩く音に女性の悲鳴、ゴブリンの嘲笑がかすかに聞こえてくる。

 

「中をどう見る?」

 

「任せてください」

 

 査察官が袖口から鎖を伸ばし、扉に絡みつかせると音もなく、ほんの少しの隙間を開いた。

 

「戸板の下に屍肉喰らいの警句がありますから」

 

「成程」

 

 言いつつ、扉の中を覗き見れば若い女が腐食した木の板に抑えつけられていた。白んだ掌に錆びた釘を容赦なく打たれ、文字通りに板に釘づけにされていて周囲には十体以上のゴブリンが女を甚振って楽しんでいた。

 

「これは呪文を使うべきだな」

 

「お任せします」

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーはゆっくりと扉近くに接近し……。

 

 

「≪ソムヌス(睡眠)……ネブラ()……オリエンス(発生)≫」

 

 魔術を発動し、ゴブリンも女性も眠らせた。こうしてゆっくりと侵入すると眠っているゴブリン共の喉をナイフと短剣で切り裂いて殺していき、そうして女性の口元に布を噛ませながら、査察官と協力して板から釘を外す。

 

「っ!!」

 

「すまない……今、治療する」

 

 雑嚢から治療のための道具を取り出し、手早く治療し包帯を巻いてやった。

 

勿論、水薬を飲ませたりする事も忘れない。

 

「さて、人質を助けた以上は外に出た方が良いですね」

 

「そうだな」

 

 こうして、一旦、ゴブリンスレイヤーと査察官は撤退し、救出した人質に匂い消しの香袋を持たせると鍾乳洞から外の森に身を潜めているよう言い、ある程度の時間まで戻って来なかったら逃げ出すようにも言った。

 

 そうして、再度鍾乳洞の中へと突入し……。

 

「ゴブリンは馬鹿だが、間抜けじゃない……でも今回は()鹿()()()()()()()()()。お誂え向きのものを自分たちで用意してくれているとは……」

 

 ゴブリンの倉庫と思われる場所――どこから用意したのか、あるいはゴブリンを操っている者達が準備したのか採掘道具やら、角灯(ランタン)、大量の木箱の中には火の秘薬まであった。

 

「(()()()しようと思っていたんだがな。まあ、今回はこれを使おう)」

 

 兜の中で笑みを浮かべながら、ゴブリンスレイヤーはゴブリンの群れを滅ぼすための計画を練り上げていくのであった……。

 

 

 

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