とある村の周辺にある森の奥の鍾乳洞を己の城とするゴブリンロードは鍾乳洞の最奥の広間にて寄せ集めたガラクタで拵えた椅子を玉座として座っていた。
もっとも彼にとっては不満であり、より豪勢で立派な玉座こそが己にとって相応しいと思っていた。
そして、なにより彼は不満しか抱えていなかった。上から自分に対し、偉そうに言う闇人共も妬みへつらいながら、不平しか言わずに碌な仕事も出来ないゴブリン共。
更に自分の城の間近に村を作って、好き勝手している只人共……いずれ、その全てを蹂躙し、四方世界の頂点に君臨してみせるとゴブリンロードは野望を抱えている。
そうして、先ずは果たすべき事を果たすべくクズ共を集めたが……どうも集まりが悪いというか、幾つかサボっているだかで姿が見えないようだ。
「GRB……」
さっさと呼んで来いと広間に集まっているクズ共に指示を出そうとした瞬間、超速で飛来する何かが彼の顔面に炸裂し、破砕させた。
「GRB……?」
突然の事態に呆気に取られ、思考停止するゴブリン達。
しかし、王が……いや自分に対し、偉そうにして命令してくる厄介な奴が死んだ事を把握すると群がって、玉座から引きずり出し、死体へと今までたまりに溜めていた鬱憤を晴らすべく、滅茶苦茶にする。
自分が次の王だと叫びながら、王冠や斧を奪い合ったり、いいや、偉そうにさせたりするものかと抑圧していた統率者がいなくなった事でゴブリン達は大混乱となる。
とはいえ、ゴブリンはゴブリン。
偉そうに言う者がいないのだから、村を好き勝手に蹂躙してやろうという思考になり、洞窟から出ていく思考に変わっていく。
だが、そうなるまでに時間はかかった。
その間に……。
「大サービスだ」
査察官と協力して仕掛けをしながら、隠密にてゴブリンロードが見えるぎりぎりの距離まで近づき、遠距離から投石紐にて石を投擲し、見事狙撃にて殺したゴブリンスレイヤーはすかさず、査察官と逃げ出しながら予め撒いていた油、その上に雑嚢から取り出した催涙弾の容器である卵の中身を撒いており、硫黄と松脂を混ぜた塊も置いている。それぞれ数としては雑嚢に入れていた全部である。
そうして、逃亡しながら油に火打石で着火し、生じた炎が催涙弾と硫黄と松脂を混ぜた塊を焼き、煙が流れていく。
『GB!? GRBBB……』
目や鼻に強烈な刺激、更には息苦し過ぎる煙によってゴブリン達は苦しみ悶えていく。
そうして、ゴブリンスレイヤーと査察官は只々、逃走し倉庫まで戻ると……。
「潰れちまえ」
倉庫の中には山程の火の秘薬(幾本かはちゃっかり、ゴブリンスレイヤーはいただいていたりする)がある木箱から倉庫の入口まで油が糸を引いており、そこにゴブリンスレイヤーは火のついた松明を放った。
そうして、ゴブリンスレイヤーと査察官は力の限り、鍾乳洞から外へと疾走して脱出。
少しして起きたのは当然、少なくとも二人が見た事が無い程の大爆発。
当然、鍾乳洞は内部で生じた大爆発に耐えかね、崩壊し潰れた。
「随分と思い切った事をしましたね……すべて持って帰れば一財産だったでしょうに……」
「手間も何もかもが惜しかったからな。それにゴブリン共もそして、ゴブリン共を使って何かを企んでいた者のそれもまとめて潰せたから良いだろう」
溜息を吐きながら、言う査察官にゴブリンスレイヤーは答える。
そして、夜中に森の中から声をかけて駆け寄ってくるゴブリンから救出した女性の姿を見つつ、ゴブリンスレイヤーは雑嚢から取り出した松明に火を点け、左手に持ち……。
「大変だったが、悪くない冒険ではあったな」
「……ええ、まったく!!」
右拳を出しながら、言うゴブリンスレイヤーからのそれに査察官は苦笑し、次の瞬間には笑みを浮かべて拳を突き合わせる。そして、「結構」と告げた。
そうして、ゴブリンスレイヤーと査察官は救出した女性を連れて鍾乳洞周辺にある村へと帰還を始めたのであった……。