『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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三十一話

 

 ゴブリンロードともいうべき統率力に優れたゴブリンとそのゴブリンが統率していたゴブリンの大群にそれらに飼われていた悪魔犬たちが巣穴としていた鍾乳洞。

 

 ゴブリンスレイヤーは査察官と協力して隠密行動をしながら、主に≪沈黙(サイレンス)≫と≪惰眠(スリープ)≫の魔術を自分の魔術使用回数を使い切る形で使ってゴブリンロードがいる広間まで行き、そうして仕掛けをしながらゴブリンロードを投石紐による遠距離狙撃にて仕留めると混乱が巻き起こると予測できたため、即座に脱出に向けて逃亡。

 

 仕掛けていた油に着火し、同じく油の上に仕掛けていた催涙弾の粉と硫黄と松脂を混ぜて固めた毒物による煙を出して追跡の妨害をしながら、後はゴブリン達が使い方もわからず、倉庫に置きっぱなしにしていた大量の火の秘薬に着火しながら、脱出した。

 

 そうして、ゴブリンロードが統率していた大軍を巣穴となっていた鍾乳洞の内部を爆破する事で崩壊させ、まとめて潰す事で全滅させたのである。

 

 鍾乳洞周辺にある村へと救出した女性を伴って移動しつつ、夜も遅くなっていったので女性の体力も考えて野営をする。そうして、朝になったので再び村へと移動し……。

 

「おお、帰って来たという事は……ゴブリン達は……」

 

「ああ、巣穴ごとまとめて潰した。伝達で言ったように鍾乳洞は崩壊したけどな」

 

「あれは本当だったのか……いや、村が助かったなら問題は無いよ。良くやってくれた、ありがとう」

 

「それが冒険者としての仕事だからな」

 

 

 村を訪れるとどうやら、待っていた村長が出てきて、そうしてゴブリンスレイヤー達にゴブリンの事を聞き、査察官が頷くのも見て礼を言った。

 

「彼女は?」

 

 そして、必然的にゴブリン達から救出した女性について質問をし、彼女の保護を頼めば快く、村長は引き受けてくれた。

 

「とにかく疲れただろう、もてなしを受けてくれ……もっと詳しい話も聞きたい」

 

「ありがたい、そうさせてもらう。それと一日、泊まらせてくれ」

 

 言いながらゴブリンスレイヤーは幾つかの金貨を出す。自分と査察官、救出した女性の保護代も含めたそれを……。

 

 

 

「いや、金貨は……」

 

「冒険者としての礼儀だ」

 

「はい、冒険者ギルドとしても少年のそれを通してもらうよう、お願いします」

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーと査察官は村長の家へと行き、料理と酒のもてなしを受けながらゴブリンについての詳細な報告を受ける。

 

 

 

「ロードだって……しかもゴブリンの大群に悪魔犬……本当に危機的状況だったんだね。君たちが来てくれて本当に良かった」

 

 そうして、村を襲おうとしていたゴブリン達のそれに驚愕しながらも改めてそれを退治したゴブリンスレイヤー達に感謝をする。

 

 

 

「後は二人で自由にやってくれ……」

 

 ゴブリンスレイヤーと査察官に告げると部屋から去り……。

 

「それじゃあ……二人の冒険に乾杯」

 

「乾杯」

 

 二人のゴブリン退治成功に冒険者として乾杯をする事で祝う。

 

 

 

「今回は特例のようなものだが、それでももし、新人冒険者の一党があれに挑んだらと思うとゾっとするな……悪いが、ゴブリン退治を止める気にはなれない。勿論、他の怪物退治とかもするし臨時でどこかの一党に加わったりはするつもりだが……」

 

「……人となりは分かりましたが……貴方は優し過ぎますね、少年。冒険者に向いていない程に……」

 

「自覚はしている」

 

「それは結構……」

 

 話をしながら酒を飲み交わし合い、そうしてまた話をしていくとお互いに苦笑し合う。

 

 冒険者の一党として危険な場へと挑み、見事切り抜けた二人。

 

 どちらにとっても相手は戦友と呼べる者であった。そうして、また酒を飲み交わし、その後食事を終えるとそれぞれ身体を身綺麗にしながら、消耗した疲れを睡眠による休養で癒した。

 

 

 

 

 そうして翌日……。

 

「本当にありがとう、君たちのお陰で当面は安心して暮らしていける」

 

「こちらこそ、もてなしと一日休ませていただき、大変助かりました。救出した娘についてはよろしくお願いしますね」

 

「ああ、しっかり回復するまで責任をもって面倒を見るよ」

 

「ありがとうございました」

 

 村を去る前に査察官が村長に対応し、そうしてゴブリンスレイヤーと査察官は二人で歩いて村を去りながら、ふとしたところで止まる。

 

 白んだ靄のような雲にところどころ開いた隙間から日差しが透けて見えていたからだ。

 

 

 

「やはり、この空は良いですね……一番好きです」

 

「ああ」

 

 そう、日差しについての意見を言いながら、少しの間二人で眺め……再び歩き出すとある程度の広い場所へと行く。

 

 

 

 

「最後に見せたいものがあります」

 

 査察官はそう言うと……瞑目し、両拳を交差するようにして集中し深呼吸。

 

 清潔な空気を肺一杯に取り入れて胸を膨らませる。周囲の音は遠のき、あらゆる物事は絵の具を塗りたくったように滲んで、ぼやけていく。

 

 焦点を結ぶのは遥か彼方、井戸の奥底に映る昼の星。息吹を練り上げて、血流に乗せて全身に行き渡らせる。

 

 手足がびりびりと痺れるように震えた。そうして、一歩踏み込みながら両手を腰の側に引き寄せ、引き絞る。

 

 全身の筋肉を弦のように……。

 

 そして圧倒する力によって、その弦が飛んだ。

 

超力招来(Ba’yeshayahe)!!」

 

禍々しくも力強い叫びと共に査察官の右拳が虚空を打ち、隻手にてなる音声(おんじょう)

 

 査察官の拳は不可知の風となって吹き、百歩先の虚空を衝撃にて揺るがした。

 

 

 

「これが百歩神拳の真髄です」

 

「……見事だ、本当に」

 

満足したように査察官は微笑み、ゴブリンスレイヤーも純粋に評しながらその一部始終を目に焼き付けた。

 

 

 

「では……私は都に直接戻りますので、これを渡しておきます」

 

「分かった、これをギルドに提出すれば良いんだな?」

 

 赤い封蝋の印章がある上等な封書を査察官から渡され、ゴブリンスレイヤーはそう問いかける。

 

 

 

「はい、それで大丈夫です」

 

「そうか……貴女はこの後、どうするんだ?」

 

 ゴブリンスレイヤーは封書を雑嚢に丁寧に収めながら、査察官が今後、どうするかを聞く。

 

「私はさしあたって、都に戻って、友人に謝って……そして……」

 

「個人的には冒険者に復帰すれば良いとは思う」

 

「私も個人として言うならば、貴方がゴブリンスレイヤーではなく、冒険者として活動すれば良いと思いますよ」

 

『――ふっ』

 

 どちらも何故だかは知らないが、可笑しくなって笑い出す。

 

 

 

 そうして、街道を沿って歩き続け、やがて分岐路へ……都へ行く道、辺境の街へと行く道はそれぞれ、別れている。

 

 

 

「また、いつか……」

 

「ええ、またいつか……」

 

 ゴブリンスレイヤーが右手を差し出せば、査察官も微笑んで右手を差し出し握手を交わす。

 

 こうして、互いに戦友である相手と別れる。

 

「戻る前に渡りの事を報告しないとな」

 

 元々受けていた方の依頼を出していた開拓村に立ち寄って、退治した渡りについての報告をしにゴブリンスレイヤーは向かうのであった……。

 

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