『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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三十三話

 

 ゴブリンスレイヤーは無事、査察官を一党の一員として行った昇級審査を合格する事が出来た。その結果を牧場にいる幼馴染である牛飼娘に報告し……。

 

「君のお祝いなのに……本当に良いの?」

 

「元々、そういう約束だっただろ。それにいつもと違うお前の姿を楽しめるならそれこそ、俺にとっては十分なお祝いだよ」

 

「……なら、良いけどさ」

 

 その翌日、牧場主であり牛飼娘の伯父の許可を取って、ゴブリンスレイヤーは牛飼娘と辺境の街へと遊びに行った。今回の目的は雑貨屋に行き、牛飼娘のための服を買おうという物である。

 

 遠慮しがちな牛飼娘だが、ゴブリンスレイヤーからの言葉に頬を赤く染め、嬉しそうにした。

 

 

 

 そうして……。

 

 

 

「大変、良くお似合いですよ。お客様……」

 

「な、なんだか恥ずかしいな……」

 

 店員に服を選んでもらいながら、牛飼娘はそれを試着しつつ、恥ずかしそうにしながらゴブリンスレイヤーにその姿を披露していく。

 

「いや……良く似合っているじゃねえか。店員さんも流石だな」

 

「ありがとうございます。ですが、彼女自身が大変、素晴らしい魅力をお持ちですので……服はそれを手助けしているようなものです」

 

「ああ、お陰でこんなに幼馴染が魅力的な女性だったんだなって気づかされた」

 

「……ほ、褒めすぎだよぉ……」

 

 店員とゴブリンスレイヤーからの称賛に牛飼娘は顔を激しく赤らめ、恥ずかしさに身悶えした。

 

 そうして、『街を出歩く用』として牛飼娘に幾つかの服を買うとそのまま、食事をしたり、他の店を廻ったりして時間を過ごしていく。

 

 

 

「やっぱり、お前との穏やかな時間は楽しいな」

 

「……っ~~!? も、もういきなりそんな事を言わないでよ」

 

「別に良いだろ、本当にそう思っているんだからよ。次の冒険のために英気も養えているんだからな」

 

「ぁ……うぅ……」

 

「痛いぞ、おい」

 

 牛飼娘は満足そうに呟いたゴブリンスレイヤーからのそれに胸を激しく高鳴らせ始め、今まで以上に顔を赤らめながら言うも、更なるゴブリンスレイヤーからの言葉にどうしようも出来なくなり、せめてもと彼の胸を両拳で子供がやるように叩いていく。

 

 

 

 ともかく、街での時間を楽しんだゴブリンスレイヤーと牛飼娘は牧場へと帰り……。

 

「今日はありがとう、楽しかったよ」

 

「ああ、俺もだ」

 

 そう、見つめ合いながら言葉を交わすと……。

 

「確か、次は鋼鉄だったよね? 昇級おめでとう……ちゅ」

 

 

 牛飼娘がゴブリンスレイヤーへと抱き着き、前より長い口づけをした。

 

「……ありが「まだかな」」

 

 

 一度、口を離したのでゴブリンスレイヤーは礼を言ったが、物足りないとばかりに牛飼娘はゴブリンスレイヤーに何度か口づけするのであった……。

 

 

 

 

 

 

 牛飼娘と街で逢瀬を楽しんだ数日後、ゴブリンスレイヤーが冒険者ギルドへと行くと……。

 

「昇級おめでとうございます。ゴブリンスレイヤーさん」

 

「ああ、ありがとう」

 

 三つ編みの受付嬢から鋼鉄の認識票を渡されながら祝われるとゴブリンスレイヤーは第八位の証である鋼鉄で出来た認識票を受け取り、今まで首に掛けていた黒曜の認識票と交換した。

 

 その日の夜、ゴブリンスレイヤーは昇級祝いとして受付嬢から食事に誘われ、それに応じる。

 

「それであの人はですね……」

 

「……ああ、そういう人だろうな」

 

 楽しい食事の時間を過ごしながら、今回は受付嬢から彼女の冒険者ギルドにおける新人時代の話と彼女の教育を担当した査察官についての話をしていく。

 

 

 

「査察官としてはとても緊張する人だったが、冒険者としてはとっても頼りになる人だったよ」

 

「……ちょっと、羨ましいです。私も冒険者としてなら、もっと貴方の……あ、ごめんなさい」

 

 受付嬢はふと呟いてしまったようで直ぐに撤回しようとした。

 

「いや、そう思っていてくれるのは嬉しいよ。それに帰って来る度、出迎えてくれる貴女の存在は俺にとって掛け替えのないものだよ。帰ってきたんだなと思えるからな……それにこうして食事に誘ったり、誘われたり、街を歩いたり……懇意にして貰えるのも本当に嬉しく思っている」

 

「牧場の娘さんにもそういう事、言ってるんですよね?」

 

 ゴブリンスレイヤーが冒険者として働いている時、配達に来る牛飼娘の対応している間に仲良くなっており、ゴブリンスレイヤーについての話をしたりして、個人の関係としては仲が良くなっている。

 

 

 

 とはいえ、思うところはあった。なので酔いに任せて攻めてみる事にした。

 

 

 

「……俺は俺が思っている事を言っているだけだ。あいつは幼馴染として大事に想っているし、貴女の事は頼りになる友人として大事に想っている」

 

「……そんなに言うなら、私達を蔑ろにしたら、許しませんからね」

 

「それは絶対に無い」

 

「なら、良いです」

 

 そうした話をしながら、ゴブリンスレイヤーは食事を終えたのでまた、受付嬢を彼女の家まで送り届ける。

 

「今日も楽しい時間を過ごせた。ありがとう」

 

「いえいえ、こちらこそです。昇級、本当におめでとうございます」

 

「ありがとう」

 

 そうして受付嬢はゴブリンスレイヤーを抱き締めながら、長い口づけを何度も交わしていったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝日がもうじき昇ろうという暁闇の時間帯、ゴブリンスレイヤーは牧場周辺の場所に立っていて……。

 

「ふっ、はっ!!」

 

 瞑目しながら深く集中すると脳内に査察官の武闘や動きを思い返しながら、それに自分の動きを合わせるように実践していく。無論、彼女の体捌きを身に着けるためである。

 

 並大抵の努力では済まない事は分かっているが、彼女の奥義である『百歩神拳』も体得するべく、励んでいる。

 

「はっ……やっぱり、中々癖が強いな……しっ!!」

 

 他にも工房の親方からは『随分と渋いのを買うんだな』と査察官が愛用していた武器である『棘鎖』を購入し、やはり査察官が操っていたそれを思い返しながら、実践していく。

 

 この武器の扱いは鉤縄を壁に引っ掛けるときなどに応用出来るのもあるので無駄にはならないだろうと思っているし、なにより戦闘における選択肢はあればあるほど良い。

 

 他にも投擲や弓に剣などの訓練に魔術の探求もしつつ、ゴブリンスレイヤーは冒険者としての能力向上にも努めていくのであった……。

 

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