ゴブリンの巣穴となっていた洞窟へ侵入し、中のゴブリンを全滅させたゴブリンスレイヤーは念のため、この巣穴へと戻ってくるゴブリンがいないかを確認するため、洞窟の近くで野営をする準備をしようとした。
すると梟の頭と熊の肉体を有する合成獣の気配を感知したため、オウルベアが襲撃したと同時に盾を全力で投擲し、首を千切り飛ばしたのである。
その後、森人の女性剣士が現れたのだ。
「君、すまないがその怪物は私が追っている者と関係がある。良ければ、話を聞かせてくれないか?」
森人の剣士は首元から銅等級を示す認識票を出しながら、言った。
「銅等級とは驚いた。話を聞かせるのは良いが……今から、食事をしようとも思っていてな。折角だし、一緒にどうだ?」
「ふむ、まあ良いだろう」
ゴブリンスレイヤーも認識票を出しながら、言い……そうして薪を集めると焚火をし、その周囲に幾つかのチーズを刺した串を立てかけて焼き始める。
「ほう、良い匂いだな」
「知り合いが牧場をやっていてな。自慢の一品だ」
そうして焚火で焼いたチーズを手に取り、自分だけでなく森人剣士にもお近づきの印とばかりに渡した。
「おお、美味いな。こんなにも美味しいチーズを食べたのは初めてだ」
「お口に合ったようでなによりだ」
森人剣士はチーズを食べると満足気な表情を浮かべた。
森人剣士にゴブリンスレイヤーはゴブリン退治をし、野営をしようと準備していた時にオウルベアに襲撃されたと今までの事を森人剣士に告げる。
「しかし、そう言われてみると妙だな。オウルベアとやらがいたのにゴブリンは利用しようともしていなかった。それに利用できないなら、あいつらは臆病だから敵対しないためにも巣穴からも出ようとしない筈だ。だが、村人に発見されるくらいに巣穴から出ていたし、だが、数に反して村へ被害を出していないのは妙だ」
森人剣士と話をしながら、オウルベアの首をギルドへの証拠として提出するための処理を行いつつ、疑問を口にした。
「……っと、俺に話せるのはこれくらいだ。悪いな」
「いや……参考にはなったよ。ありがとう。ついでに聞くが、街はあるかな?」
「あるにはある」
近くにあった枝を掴んで焚火による光で照らされている地面に街までの簡単な地図を書きつつ、口頭で説明した。
「ありがとう……君は良い奴だな。では……」
「ああ、じゃあな」
そうして、森人剣士はゴブリンスレイヤーに礼を言い、身を翻し始める彼女にゴブリンスレイヤーは別れを告げた。
「良い食事だったな」
短いがそれなりに楽しい食事の時間を過ごせた事に満足しながら、巣穴へ帰還するゴブリンがいるかどうかの監視を始め、早朝になっても巣穴に入ろうとするゴブリンの姿が見えなかった事で全滅させたと判断し、依頼した村へと報告しに向かったのだった……。
二
数件受けたゴブリン退治の依頼を全て片付けたゴブリンスレイヤーは辺境の街の冒険者ギルドへと向かう。
「お帰りなさい、お疲れ様でした!!」
「こっちこそ……温かい対応いつもありがとう。それじゃ報告だが……」
「ちょっと、待ってくださいね……ゴブリンスレイヤーさんが受けた依頼は沢山ありますし、紅茶を用意してきます」
三つ編みの受付嬢が嬉しそうにゴブリンスレイヤーに対応し、ゴブリンスレイヤーはそれに感謝しながら、依頼についての報告を彼女が用意した紅茶を飲みながらしていく。
「ゴブリン退治は本当に厄介な事と面倒な事が起こるようですね。本当にお疲れ様です」
最後の依頼にて遭遇したオウルベアについての話をし、証拠を出せば受付嬢はすまなさそうな表情を浮かべて言った。
「いやいや……確かに大変だし、苦労しているがその分、冒険者としての対応力が磨かれる経験も出来る。悪い事ばかりじゃない」
「そう言っていただけると助かります」
話をしながら、ゴブリンスレイヤーがこなした複数の依頼全ての報酬を受付嬢から受け取る。
「それにしても良い香りだな。煙が下に落ちているのが独特だが」
ゴブリンスレイヤーは受付嬢がいる帳場の上にある竜の巣を模した置物から漂う煙と香りについて言及する。
「はい。東方からの渡りものの香炉なんです。素敵でしょう?」
「ああ、中々良いと思う」
ゴブリンスレイヤーは受付嬢にそう返答をするとこの後は休んで明日、また来る事を伝え……。
「そうですか、それじゃあゆっくり休んでください。また、明日」
「ああ、また明日」
別れの挨拶をすると見送る受付嬢の視線を背に感じながら、冒険者ギルドを出た。
そうして冒険者ギルドから牧場へと帰還し……。
「お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
ゴブリンスレイヤーは牛飼娘から笑顔で出迎えられる。そうして、食事をすると作業部屋となっている納屋で武器や盾の整備に催涙弾と硫黄と松脂による毒煙弾の補充に少しの鍛錬もし……。
「その、さ……伯父さんは今夜は隣の街に出かけてて帰ってくるのは明日の朝なんだ……だから、偶には母屋で寝たら?」
牛飼娘はゴブリンスレイヤーに恥ずかしそうにしながら言う。
「それは……」
「女の子一人じゃ、その……不安で眠れないしさ……」
「……分かった」
こうして、ゴブリンスレイヤーは母屋の方で寝る事にし……。
「わ、これは……うん、悪くないね……」
「ああ、悪くない」
夜中……牛飼娘の部屋にある寝台の上で抱き合いながら横になる。互いに相手の身体の感触に素直な感想を述べた。
「小さい頃、一緒にお昼寝した時を思い出すね」
「そうだな。気持ち良く眠れそうだ」
「うん」
そうして、ゴブリンスレイヤーと牛飼娘は小さい時にした昼寝のように抱き合いながら、気持ち良く眠り始めるのであった……。