冒険者ギルドの裏手――少し前にゴブリンスレイヤーと槍使いが鍛錬という名目で実質は決闘をした場所にゴブリンスレイヤーと森人剣士は向かった。
「では、始めようか……」
「ああ」
互いに木剣を構え合い……。
「しっ!!」
「っ!?」
森人剣士が踏み込んだと思えば直後に流麗にして華麗に空間を自由自在であり、変幻自在に軌跡を描きながら剣がゴブリンスレイヤーの視界にて踊った。
ゴブリンスレイヤーは直後に追い詰められるが、木剣を盾にしての防御、査察官から見たり聞いたりしながら体得している体捌きを用いて凌いでいく。
「はあっ!!」
ゴブリンスレイヤーは防戦一方となりながらも執念深く、森人剣士の剣舞を穴が空く程に観察し、見出した僅かな隙へと全力の剣撃を放った。
「っ、ふふ、良いぞ」
それを少し驚きながらも受け止め、弾き逸らした。
「っと」
ゴブリンスレイヤーは逸らされた勢いを利用するようにして、後ろへ跳躍する事で森人剣士との間合いを大きく開けつつ、地面に着地して構える。
「中々、戦えるじゃないか……君、剣術は誰に習った?」
汗の一滴すら滲ませず、息さえ整ったまま、青い髪の森人は涼やかに問いかける。
「はぁ、はぁ……昔、冒険者に手解きともいえないが簡単に習ったぐらいで後は独学だ。俺より腕の良い人の動きを見よう見まねで覚えたりしたけどな」
対してゴブリンスレイヤーは息も切らせているし、汗も流している。二人の実力差は歴然であった。
「そうか、私も似たようなものだよ。基礎は習ったけれどな……真剣勝負でどうにか勝ちを拾い続けてきたから、今がある」
森人剣士はそうゴブリンスレイヤーへと告げ……。
「君も基本は学ぶべきだ。しっかりとな」
ゴブリンスレイヤーの背後に難なく、移動した森人剣士は背中に張り付きながら、自身の腕を伸ばし、ゴブリンスレイヤーの腕に絡めるようにして剣を握らせると構えを取らせる。
「切っ先は常に敵に向け、受けた攻撃は外に流す。攻撃線を外せば、まず当たりはしない」
「それが剣の防御か……」
「ああ、そうだ」
森人剣士の教えに従い、構えを取ると森人剣士は満足したように言うと彼から離れる。
「後はその構えを崩さないようにな……それだけで大分、違うだろう」
「ああ……どうか俺に剣の指導をよろしく頼む」
ゴブリンスレイヤーは木剣を構える森人剣士に深く頭を下げた。
「ふふ、私を師と仰ぐか……」
「優れた者が技を教えてくれるというなら、師と仰ぐのは当然だろう。貴女の剣舞はまるで魔法の如くだった。短い間でも是非とも学ばせてもらいたい」
「うっ、よせよせ……いくら何でもかしこまりすぎだ。君は本当に実直だな」
森人剣士はゴブリンスレイヤーが礼儀正しくも純粋に、そして積極的に教えを請おうとしてくるそれに照れから顔を赤らめながら、軽く狼狽えた。
「(本当に純粋で真っ直ぐだ)」
だが、先ほどの手合わせにおいてゴブリンスレイヤーが執念深く勝とうとして放ってきた気迫、彼自身が磨き抜いて来た戦闘技術から窺えた努力と経験の積み重ねなども含めて森人剣士はゴブリンスレイヤーを好ましく思った。
「では、続けようか……私の弟子になるというなら、厳しくいくぞ」
「望むところっ!!」
そうして、ゴブリンスレイヤーは森人剣士が有する剣技を手合わせとその最中に挟まれる指導から学んでいくのだった。
「随分と楽しそうだねぇ……愛しの彼は?」
「う、腕を高め合うのは冒険者にとっては良い事ですから……」
空き時間にゴブリンスレイヤーと森人剣士の手合わせの様子を見た受付嬢の同僚が受付嬢へと揶揄いの笑みのままに言うと受付嬢はなんとか気にしていないとばかりに振る舞おうとした。
動揺は声に含まれていたが……。
そして……。
「あの、良かったらどうぞ」
三つ編みの受付嬢はゴブリンスレイヤーと森人剣士の二人が休憩に入った事で
「ありがとう、いつもその気遣いに助かっている」
「っ、いえいえ……」
ゴブリンスレイヤーが紅茶のカップを手に取りながら、言えば受付嬢は明るい笑みを浮かべ、嬉しさが溢れていた。
「……君は人を喜ばせるのが上手いな」
「言うべき事を言っているだけだが?」
森人剣士も紅茶を味わい、受付嬢に礼を言い、そうして空のカップを運んでいく受付嬢の様子を見ながら呟けば、ゴブリンスレイヤーはそう答えるのであった……。