『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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四十二話

 

 ゴブリン退治は新人冒険者向けの仕事であるとはいえ、無論、常に失敗しゴブリン達に蹂躙されることになる可能性はある。しかし一党を組んだ新人冒険者が失敗したとしても二~三組の新人冒険者達を送ればそれで十分にゴブリン退治は達成出来るのだ。

 

 しかし、今回ゴブリンスレイヤーが受けたゴブリン退治においては三組もの冒険者の一党が向かって、達成出来ていないようだ。

 

 雨に風が激しい悪天候を進みながら、一旦、大樹の下で休息をしたゴブリンスレイヤーと森人剣士の一党は移動を再開し、そうして依頼されているゴブリンの群れの巣穴となっている洞窟周辺にある開拓村へと向かった。

 

「冒険者だって?……あんた達の前にもう三組も来て、誰も戻ってきてないのにそれを二人だけでどうにかできんのか?」

 

 村の長から情報を得ようと話を聞きに行けば、疑いの目で見られてしまった。

 

 彼の言う通り、三組も冒険者の一党が向かってゴブリン退治を出来ていない事と二人で来たからである。

 

「一応、実力はあると自負はしている」

 

「私はもっとだがな」

 

「鋼鉄に……銅!? これはこれ、嵐の中、大変だったでしょう」

 

 

 認識票を出せば、ゴブリンスレイヤーが新人の中では上位である鋼鉄等級である事、更に森人剣士が冒険者の世界で言えば、十分に強者だという事を示す銅等級である事を理解した村の長は態度を改めて二人を家の中へと招く。

 

 そして話を始めた。

 

 ゴブリンの巣穴となっている洞窟は西側の森の奥にあり、その近くでゴブリンの姿を発見したのだとか……今のところ、特に何もされてはいないが危ないから洞窟に近寄らないようにしているとの事だ。

 

 だからこそ、ゴブリンが村を襲う前に退治してほしいと改めて村の長は二人へ頭を下げて頼んだのである。

 

「任せろ」

 

「必ず、退治してみせるとも」

 

 ゴブリンスレイヤーと森人剣士は村の長へ言うと洞窟へと向かうため、村を出た。

 

 

 

 

 そして……。

 

 

 

 

「異常事態だな」

 

「何故、そう思う?」

 

「ゴブリンが幾日もの間、家畜を襲うとか作物を盗むとかそうした事すらしないなんてありえないからだ。更に三組も冒険者を倒してるなら調子に乗って、村を大胆にさえ襲う筈……なのに全然、そうした動きが無いのは絶対におかしい」

 

「ゴブリン退治を何回もしている君が言うなら、そうなんだろうな」

 

「ああ、信じてくれて良い」

 

「勿論、信じるよ」

 

 会話をしながら、進んでいく二人。

 

 

 

 

「ぅ……おいおい……」

 

「ふふ、やはり君の行手には混沌の気配が立ち込めているね」

 

 ゴブリンスレイヤーと森人剣士は雨によって汚泥のようになった地面に流され、消える事無くはっきりと残っている六本足の獣の足跡があるのを見つけた。

 

 それにゴブリンスレイヤーは呻き、森人剣士は目当ての物を見つけたとばかりに嗤う。

 

 そして、森人剣士が背負う鞘から剣を抜くのと同じく、ゴブリンスレイヤーも背負っている鞘から魔法の剣を抜いた。

 

「CHIIIMEEEEERRRRRAA!!」

 

茂みの奥、立ち込める雨煙の向こう……枝場をへし折りながら獅子の頭に熊の如き巨体と太い足が六本、亀の甲羅が胴を覆っており、蛇の尾が蠢かせている異形の怪物が姿を現す。

 

「滅茶苦茶な怪物を作ったようだな」

 

「タラスクもどきか!」

 

 そして、森人剣士がタラスクもどきと言った怪物は雨の中ですら燃える炎を吐き出した。

 

 それは大きく弧を描き、ゴブリンスレイヤーと森人剣士の頭上から降り注ぐ。

 

 

 

「炎を吐くだとっ!!」

 

「燃える水だっ!!」

 

 炎の飛沫が飛び散る中、疾走して回避する二人。

 

 

 

 

「俺が(タンク)だ。回り込んでくれ」

 

「分かったっ!!」

 

 ゴブリンスレイヤーは森人剣士に告げるとタラスクもどきへと正面から雄々しく、向かっていく。

 

 

 

「CHIIMEERAA!!」

 

 タラスクもどきは立ち上がりながら、四本の熊爪を振るいゴブリンスレイヤーに対抗する。

 

「おおぉっ!!」

 

 左腕に括った盾と剣でタラスクもどきの爪閃を盾と剣を用いた戦舞にて対抗する事で捌き、あるいは掻い潜る事で回避する。

 

 

 

「しっ!!」

 

「!!」

 

 正面からタラスクもどきの意識を引き付けている中、後ろから華麗にして流麗な剣舞によって蛇の尾による防衛を切り裂き、そのまま足の一本を切断した。

 

 これにより、タラスクもどきは態勢を大きく崩し……。

 

「くたばれっ!!」

 

 生じた間隙を衝き、両手で持った魔法の剣を振り下ろす事でタラスクもどきの頭部をゴブリンスレイヤーは両断した。

 

 

 

 

「お見事、流石は私の弟子だな」

 

「ありがとう、我が師よ」

 

 森人剣士はタラスクもどきを屠ったゴブリンスレイヤーに師としての嬉し気な表情を浮かべるとゴブリンスレイヤーも嬉し気な声で応じた。

 

「さて……」

 

 魔法の剣を背中の鞘に納めると腰帯で帯剣している鞘から片手剣を抜き放った。

 

「何をする気だ?」

 

「こいつの腹を裂いて、燃える水を取り出す」

 

「待て、良いから待て……私も詳しいわけではないが、あれは錬金術師の拵えた瓶でないと危ないと聞くぞ」

 

「瓶は持っていないが、こいつはまだ持っているだろう」

 

「……ああ、なるほど」

 

 ゴブリンスレイヤーの目的を聞いて一瞬、驚愕した森人剣士に納得いく答えを返すとタラスクもどきを転がし、そうして片手剣にて腹を裂く。

 

 このタラスクもどきは元より生物ではなく、死体を繋いだ肉人形(フレッシュゴーレム)。その証拠に腹を裂いた途端、腐りかけた蠕虫の死骸が零れ落ちる中、生きているものもいて泥水の中で跳ねた。

 

「やっぱり、あったな」

 

 ほどなく燃える水の詰まった胃袋をゴブリンスレイヤーは引き出し、その口を縛って腰帯に吊るしたのであった。

 

 

 

 

 

 そうして、ゴブリンがいるという洞窟へと向かい……。

 

「しっ!!」

 

「はっ!!」

 

 洞窟の外で物見をしていたゴブリンが二匹いたので近くの茂みに潜みながら、洞窟の中から交代のゴブリンが出てくるのを待てば、少しして四匹のゴブリンがゴブリンスレイヤーと森人剣士の視界に捉えられた。

 

 するとゴブリンスレイヤーは拳大の石を二つ投擲する事でゴブリン二匹の頭部を破砕し、もう二匹は森人剣士の剣舞にて斬殺された。

 

 

 

 

 

「洞窟に入る前にこれを使ってくれ。匂い消しだ」

 

 ゴブリンの死体の一つから短槍を拾いつつ、雑嚢から匂い消しの香袋を出すと森人剣士に渡す。

 

「匂い消し?」

 

「ああ、ゴブリンは鼻が良いんだ。俺の匂いはこの雨と泥で消えているだろうが元々、ゴブリンは女性の匂いには敏感だ。更に貴女達、森人の心地良い気配はもっとゴブリンが敏感に反応するかもしれない」

 

「分かった」

 

 森人剣士はゴブリンスレイヤーから香袋を受け取ると首に掛ける。そうして突入準備を済ませた二人は洞窟へと入っていったのだった……。

 

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