『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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四十三話

 

 ゴブリンスレイヤーと森人剣士がゴブリン退治をしようと村の長から聞いた森へと向かえば、森人剣士が住んでいた集落を襲い、彼女以外を皆殺しにした仇敵である魔術師が手掛けたタラスクもどきと遭遇。

 

 討伐し、その後ゴブリンがいるとされる洞窟へと向かえば、確かに物見をしているゴブリンが二体いた。なので潜んで休憩しながら、交代の物見が来るのを待った。

 

 そうして交代としてゴブリンの二体が現れたので四体のゴブリンを始末し、準備をして洞窟へと踏み込んだ。

 

 ゴブリンスレイヤーは松明を持ってであるが、森人や鉱人などの異種族は夜目が利いたりするので森人剣士は持っていない。まあ、今回の場合はゴブリンスレイヤーが持っているのでどのみち、彼女が松明を持つ必要は無いが……。

 

 

 

「うん?」

 

「覚えておくと言い……それが混沌の気配だよ」

 

 ゴブリンの巣穴となっている洞窟に入れば、漂う生臭い腐敗囚、湿った土やカビ、汚物、何かの死体などいつもの雰囲気とは違い、何かの違和感を感じたのである。

 

 それが混沌の気配だと森人剣士は言った。

 

「そうか……ともかく、斥候は任せろ。こういう場所は慣れている」

 

 

  ゴブリンスレイヤーは答えつつ、斥候を担当する事を告げた。

 

 

「ああ、頼むよ」

 

「ただ、貴女の目的の相手がいそうな場所についてはアドバイスを頼む」

 

「勿論、それは任せろ」

 

 話し合いながら、進み……。

 

 

 

 

「ふっ!!」

 

「やっ!!」

 

「GOB!!」

 

 静かに移動しながら、ゴブリンの群れに自分たちの存在がばれないように潜みつつ、姿を発見したゴブリンを即座に抹殺していく。

 

「随分と良い隠れ場所を見つけたもんだな」

 

「まったくだ。ただ、通りそうな道は分かりやすい」

 

 二人が進んでいる洞窟はゴブリンではなく、岩喰いか何かの喰い散らかしにより、複雑怪奇な地を穿つ岩窟となっていた。

 

「確かにこれは分かりやすい」

 

 しかして、二人は人が不自由なく通れる道、足跡すらある道を見つけて移動していく。

 

「頭を屈めてこそこそ狭い横穴を這って行く自分など、奴は認めたくないだろうからな」

 

「ゴブリンを率いて自分の望みを果たすために好き勝手やっている、それは結局、ゴブリン並という事だが……それすら認めないんだろう?」

 

「そういう事だ……性根が腐りきっているのさ」

 

 会話をしながらも二人は視界内に見つけたゴブリンを始末しつつ……。

 

 

 

「よっと」

 

 雑嚢から取り出した硫黄と松脂で出来た毒物を松明の火で焼くと進路内にある横穴へと放り込んでいく。

 

 後方などからのゴブリンの奇襲は勿論、連戦を避ける事で体力の消耗を抑えるためだ。ひとまずの目的は魔術師を倒す事である。

 

 二人はその目的を果たすために進んでいけば、広い空間に辿り着き、飛び出す。

 

 その岩の洞に人影を発見する。

 

 

 

「なっ!?」

 

「……本当にどこまで……」

 

 二人が目にした人影とは笹穂の様に長い耳、その耳の長さは左右で違っており、腕も足も左右で不揃い、不格好に縫い合わされたエルフの屍人形であった。

 

 

 

「――」

 

 どうやら、エルフの屍人形は彼女が住んでいた集落の森人たちで構成されていたようだ。十人程の名前を森人剣士は呟いていく。

 

「どうかな? これこそは私の理論が正しいという証明だよ」

 

 誇らしげに告げるは岩窟の奥、更なる深淵に連なる暗黒の門の前に立っている一つの影、全身を覆う外套から覗く手に杖を一振り携えている魔術師である。

 

「どんな証明だ?」

 

「エルフの屍はこのように真言で操れる。とすればエルフの言葉とて真言で操れるだろう」

 

 ゴブリンスレイヤーの問いに涎を垂らすように言葉を吐く。

 

「故にエルフの言葉は真言に等しいという事だ。これが証拠だよ。見ての通りだ」

 

「……」

 

 ゴブリンスレイヤーはただ、深く息を吐いた。

 

 

 

「どうだい、納得だろう?」

 

「お前がそう思うなら、それで良い……もう、会話する気は失せた」

 

 この魔術師こそ圃人の老爺の言う『夢の国(ファンタージェン)に行きて帰らぬ阿呆』だとゴブリンスレイヤーは確信する。

 

「ふっ、君の知性が私に劣っているからだね。私の為した事を見れば、何が正しいかは一目瞭然だよ」

 

「正しいだと?」

 

 そうして、森人剣士は低く唸り、怒りを露わにした。

 

「森を焼き、人を脅かし、小鬼を従え、屍を操って、穴底でふんぞり返る事のどこが正しいんだっ!!」

 

「私の作品の一部を掠め取って、毒気を撒き散らしてくる手合いの言葉に意味は無いよ」

 

 怒りに燃えながらも美しさを損なわない森人剣士のそれに対し、勝ち誇るようにして魔術師は言う。

 

「君たちの行いは完璧でも無ければ完全でも無い。あまりにも杜撰で雑だからね」

 

「その言葉、そっくり返すぞ」

 

 勝ち誇る魔術師にゴブリンスレイヤーは嘲笑しながら、会話している隙に雑嚢から取り出した催涙弾の容器である卵を投擲した。

 

「っ……~~~~~~」

 

 目と鼻や口に強烈な刺激や不快感などが与えられた事で魔術師は悶え苦しむ。

 

「≪ホラ()……セメル(一時)……シレント(停滞)≫」

 

 そうして、自分たちの行動が見張られているのを想定して使わなかった魔術の縛りを解いた。

 

≪停滞≫の術により、魔術師にエルフの屍人形の動きを遅滞させる。

 

「やれっ!!」

 

「ああっ」

 

 森人剣士は魔術師へと迅速に向かっていくと同時にゴブリンスレイヤーは魔法の剣を抜き放ちながら、エルフの屍人形へと向かっていく。

 

「死ねぇぇぇぇっ!!」

 

「今、解放してやるからな」

 

 そうして、森人剣士は仇である魔術師へと必殺の意思を込めて剣閃を舞い踊らせる事で首を刎ねるのと同時にゴブリンスレイヤーはエルフの屍人形へ鎮魂の意思を込めた剣閃を舞い踊らせる事でエルフの屍人形の首を刎ねた。

 

「GOBRRR!!」

 

すると洞窟内にいたゴブリンの残党が押し寄せ始める。

 

「さあ、もうひと踏ん張りだ。やれるな?」

 

「勿論だ」

 

 ゴブリンスレイヤーと森人剣士はゴブリン退治へと挑む。

 

 魔法をまだ五回使え、催涙弾の容器もまだあるゴブリンスレイヤーと体力に余裕のある森人剣士……ならばゴブリン退治は問題なく、達成できるというのは分かり切った事であった……。

 

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