『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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本編一巻
四十五話


 

 四方世界において一番数が多く、人を積極的に襲うがゆえに身近な怪物の名を上げるとすればやはり、ゴブリンだ。

 

 ともかく、数が多いが子供程度の知恵に力、体格しかないという最弱な怪物である。

 

 しかし、逆を言えば子供と同じ程度には知恵が回り、力があり、すばしっこい。

 

 それに他の怪物と違って悪意と残虐性が凄まじい。

 

 男も女も甚振り続けた果てに殺したり、ゆっくりと肉体の一部を食ったりしながら、或いは女ならば犯して孕み袋にするなどと言うように……。

 

 そして、 洞窟や廃砦などを巣穴としているし、夜目が効く。必然、巣穴に入るならば少なくとも只人は松明など灯りを用意しなければならないのだ。

 

 洞窟は勿論、砦のような建物も規模にもよるが狭い。そうした場所で長物は振り回しづらいし、灯りを用意する分、色々と不便。

 

 そんな状態で多数、あるいは仕掛けられた罠に対処する必要だってあるのだからそれなりに厄介である。まあ、冒険者への依頼は大なり小なり、大変だからこそ依頼が出て来るものであるが……。

 

 しかもゴブリンの中には稀に突然変異などによって大柄でそれに見合う力や頑丈さを有するホブや知能は高く、術も使えるシャーマン、長身でそれに見合う強靭な肉体を有するチャンピオンに統率能力に優れ、凄まじい規模の群れを率いるロードがいる場合だってある。

 

 諸々含めて、冒険者は一度か二度、退治すればもうゴブリン退治の依頼を避けたりする事が多いのだ。更に言えば、大体にしてゴブリン退治は新人冒険者の仕事という認識になっている。

 

 大体、二~三組の冒険者の一党が挑めばそれで解決できるからというのもある。

 

 とはいえだ、ゴブリン退治の依頼は冒険者の世界では尽きる事が無い程に舞い込んでくる。新人冒険者の一党が一つ結成されれば、ゴブリンの巣穴が一つ出来ると言われる程に……。

 

 そんなゴブリン退治を()()()()()()()()()、等級としては銀等級という冒険者の中では強者である等級に至った者でありながら、積極的にこなしていく者がいた。

 

「GROBB!!」

 

「これで終わりだな」

 

 最後のゴブリンを倒した者が言う。金臭さを消すべく、泥と土であえて汚した鉄兜と革鎧、その下には鎖帷子、武装としては背中に分厚い刀身と重い刃の剣を鞘に納めて背負っており、肩帯もしていて、数個の短剣とナイフを納めた鞘を吊るしている。

 

 腰帯によって片手剣を納めた鞘、挟むようにして短剣やナイフと長剣を幾つか、拳大の石と瓦礫を幾つも入れた袋、雑嚢などを身に着けてもいる。

 

 左手には燐光を放つ丸盾を括っていた。

 

 そんな彼の名はゴブリンスレイヤーである。

 

「しかし、いつもの事だが本当にゴブリンの数は減らないな。緑の月から来るのもあながち間違いじゃないかもなぁ」

 

 ゴブリンスレイヤーに対して軽くため息を吐きながら苦笑し、言うのは長い青髪を後ろで結い、美麗な容姿に森人として特有の長く尖った耳を有する森人剣士、ゴブリンスレイヤーも彼女が吊るしている認識票も銀色の認識票であった。

 

「まったくだな……(もう五年か)」

 

 森人剣士の言葉に応じながら、自分が冒険者となって五年である事を思い返した。

 

「(そういえば、そろそろだな)」

 

 それに伴って前に開拓村で出会った交易神の寺院で育てられていた少女の事と自分が冒険者として使っている冒険者ギルド、ゴブリンによって身体に精神に損傷を受けた者達の治療に介護などで頼っている地母神の神殿で育てられている侍祭の少女の事を思い返す。

 

 そろそろ、冒険者として登録する時期であるからだ。実際、地母神の侍祭には「冒険者になるのでよろしくお願いします」と面倒を見る約束だってしている。

 

 そんな事を思いながら……。

 

 

 

「本当にいつも助かっている」

 

「ふ、今更じゃないか……」

 

「ああ、そうだな」

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーに森人剣士はゴブリンの巣穴の周辺の森で野営を始める。この巣穴へと戻ってくるゴブリンがいないとも限らないからだ。

 

「なあ、帰還したら……久しぶりに良いかい?」

 

「……そっちが良いなら」

 

「なら、決まりだな」

 

 焚き火の近くで寄り添いながら、ゴブリンスレイヤーと森人剣士はそんな事を言い合う。二人の関係は数年続けるだけあって、深いものである。

 

 ともかくとして、生き残りが戻ってこないのを確認すると村へとゴブリン退治したのを報告し、辺境の街の冒険者ギルドへ依頼の達成についての報告と報酬を受け取ろうとしたのだが……。

 

 

 

 

 

「ゴブリンスレイヤーさん、お疲れ様です」

 

 三つ編みの受付嬢の元へと行けば、どこか浮かない顔をしていたそれが笑顔になる。

 

「ああ……それでどうした、何かあったようだが?」

 

「……その、大変申し上げにくいのですが、実は」

 

 受付嬢は本当に申し訳なさでいっぱいの表情を浮かべた上で言う。

 

 白磁等級であり、冒険者になったばかりの四人の一党がゴブリン退治を受けた事を……。

 

 その内訳としては男の剣士に女の武闘家、学院から卒業したばかりの女魔術師、そして()()()()()殿()()()()()()()()である。

 

「依頼内容を見せてくれ」

 

「どうぞ」

 

 受領済みの依頼書を受付嬢から渡されるとそれを見る。

 

 その内容としては村の近くにゴブリンが棲み着き、冬越しに備えて貯蓄していた穀物を盗んだ。種もみさえもだ。そして、柵をし松明を手に巡回したが、村人は出し抜かれ、羊に羊飼いの娘と物音に出てきた村娘を連れ去ったのだ。

 

 これにより、村人はゴブリン退治の依頼を出したのだ。

 

「拙いな……ゴブリン退治の中では厄介なものだ。様子を見に行こうと思う。お前も来てくれるか?」

 

「勿論」

 

 森人剣士に言えば、彼女は頷く。

 

「依頼をしてきたばかりなのに、ほんとうにすみません。そして、ありがとうございます」

 

 せめてだと言わんばかりにこの件に関しては冒険者ギルドからの依頼だとして扱う事とゴブリンスレイヤーと森人剣士がこなしてきた依頼の報告は後として、その分の報酬を受付嬢は渡した。

 

「(間に合うと良いが)」

 

 ゴブリンスレイヤーは特に知り合いである女神官を助ける事を意識しながら、必要な物だけ調達してすぐに馬車での移動をするのであった……。

 

 

 

 

 

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