『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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四十六話

 

 地母神の神殿で育てられた孤児であり、神官である少女は今日、十五歳となった。

 

 四方世界では十五歳は成人だ。故に二つの道を選ばねばならないようになる。

 

 神殿神に仕えて暮らすか、神殿の外に出て俗世の中で生きていくか……。

 

 そして、神官の少女は冒険者となる事を選ぶ。それはゴブリンによって身も心も蹂躙され尽くした女性を神殿へと運び、治療や介護を頼みながらまるで自分が悪いかのように祈りを捧げている冒険者を支えたいと思ったからだ。

 

 その冒険者は何かと理由をつけては多額の寄付、治療や介護を頼んだ女性の様子を見たりなど地母神の慈悲や奉仕を体現するが如くの事をしている。

 

 自分だけでなく、地母神の神殿の者はその冒険者を尊敬さえしているのだ。

 

 「(ゴブリンスレイヤーさん、私も冒険者になりましたよ)」

 

 そんな冒険者の名はゴブリンスレイヤー、彼には冒険者になる事を伝えていて、彼からは『面倒を見る』と言われ、自分も『支えられるようになりますね』と返答をしている。

 

 自分が冒険者になりに冒険者ギルドに登録に行ったときはゴブリンスレイヤーと相棒だという森人剣士は依頼をこなしているところでいなかった。二人が帰ってくるまでは待っていようとも思ったが……。

 

『俺達と一緒にゴブリン退治をしないか?』

 

 冒険者になったばかりの少年剣士と黒い髪を束ねた女武闘家、赤髪の上に帽子を被り、冷たい瞳には眼鏡を掛けていて杖を持った女魔術師の一党が自分に近づいてきて、頭目である剣士が声をかけてきたのだ。

 

 ゴブリンスレイヤーや彼が連れてきたゴブリンに蹂躙された元冒険者からはゴブリンの危険性を十分に聞いているので断ろうとしたし、剣士の一党が依頼を受けるのを止めようともしたが強い熱意で仲間になるよう説得してくる剣士に結局、押し負け……ゴブリン退治をする事になってしまった。

 

 そうして、ゴブリンの巣穴だという洞窟へと入れば……。

 

 

『GROOB!!』

 

「ぁぁぁっ!!」

 

 先々、進んでいく剣士と武闘家に対し待つよう呼びかけるも聞き入れてもらえない。変な物音に気づいたので魔術師に言ってみれば怯え過ぎだと鼻で笑われる。

 

 直後にゴブリンの群れが何処からか現れて襲ってきた。魔術師は魔術で一匹を倒すも次の魔術を放とうとした隙を衝かれ、複数のゴブリンに押し倒され杖は折られ、錆びた短剣で腹を貫かれて抉られた。

 

「≪いと慈悲深き地母神よ、どうかこの者の傷に、御手をお触れください≫」

 

 錫杖を振るってなんとか追い払うと魔術師の身を引きずり、破れた腹に手をあてがい、≪小癒(ヒール)≫の奇跡を行使して負傷を癒す。

 

 因みに女神官は≪小癒(ヒール)≫と≪聖光(ホーリーライト)≫という二種類の奇跡を使え、回数としては三回だ。

 

「おのれ、ゴブリン共めっ!!」

 

 後方の異常に気づいた剣士が駆けつけ、手に持つロングソードを振るう事でゴブリンの群れへと挑む。そうして、何体かを倒してものの……。

 

「っ!?」

 

 閉所でロングソードという長物を派手に振るった結果、洞窟の岩壁に突っかけてしまい……。

 

 

 

「GROBB!!」

 

ゴブリンの群れに襲い掛かられ、引き倒され切り刻まれ断末魔の叫びを上げながら最期を迎えた。

 

 

 

 

「くっ、二人とも逃げなさいっ!!」

 

 女武闘家はなんとか震える拳を握り締めて、構えを取る。

 

 迫ってくるゴブリンの群れにはホブもいて、絶体絶命だ。

 

 

 

 だが……。

 

『GRO……!?』

 

 直後、どこからか放たれた複数の光の矢がゴブリンの群れを射抜いて殺していく。

 

 

 

「え……」

 

「あっ……」

 

 武道家は混乱し、女神官は誰が来たのか勘で把握した。

 

 そして……。

 

 

 

「結果としては良い方だろう」

 

「……ああ」

 

 光の矢が飛んできた方向から救援のために駆け付けてきたゴブリンスレイヤーと森人剣士が姿を現す。

 

 

 

「ゴブ……リン……スレイ……ヤーさ……私、私……」

 

「大丈夫だ……遅れてすまない。その魔術師はゴブリンの武器に刺されたのか?」

 

 怪我を癒したのに回復せず、むしろ悪化している魔術師を見つつ、ゴブリンスレイヤーへとなんとかしてほしいと涙を流しながら言う。情けなさやら安堵やら複雑な感情で彼女は今、ぐちゃぐちゃだった。

 

 ゴブリンスレイヤーは女神官に寄り添いながら、落ち着かせつつ魔術師の容態を見て問いかけた。

 

 

 

「は……はい……」

 

「……残念だが、もう手遅れだ。ゴブリンは野山で拾い集めた草、自分たちの糞尿、唾液、それらを適当に混ぜ合わせて毒を拵える。奴らは不潔だから毒を喰らうと息が詰まり、舌が震え、全身が痙攣し、熱が出て、意識が混濁し、死ぬ……解毒剤はあるが、これではもう間に合わない」

 

「……ろ……て」

 

「ああ」

 

 魔術師の瞳と微かな言葉に頷きつつ、ゴブリンスレイヤーは肩帯に吊るされた鞘から素早く抜いたナイフで彼女の喉を刺す。少ししてナイフを抜いて血振りし、鞘に納めた。

 

 

 

「仲間の弔い合戦をするか?」

 

 ゴブリンスレイヤーは女武闘家と女神官に問う。

 

 

 

「……やらせてください」

 

「私も……やります」

 

「良いぞ、それでこそ冒険者だ」

 

「……やろう」

 

 森人剣士が頷き、ゴブリンスレイヤーは雑嚢から二つの匂い消しの香袋を取り出し、二人へと言葉をかけて渡す。

 

 その後は滅茶苦茶になった剣士の死体からロングソードを拾い、腰帯の中に挟んだ。

 

 

 

 移動を開始し……。

 

 

 

 

「これはシャーマンという術者がいる証だ。そして、奇襲用の横穴を隠すための偽装でもある」

 

 ネズミの髑髏とカラスの羽で出来た物体を松明の光で照らしつつ、解説。

 

 

 

「……いくぞ」

 

 横穴の中へと入っていき……徐に腰帯に付けている袋から拳大の石を取り出す。

 

「ふっ!!」

 

「GR……」

 

 闇の中へと見えない速さで右手を振れば、直後ゴブリンの苦鳴と倒れる音が響いた。

 

 そして、進んでいき頭部が穿たれているゴブリンの死体の近くにあった獣の骨で出来た手槍を拾う。

 

「……この先がゴブリン達にとっての広間だ……良いか、作戦としては……だ。さぁ、≪聖光(ホーリーライト)≫の準備は良いな?」

 

 ゴブリンスレイヤーは立ち止まるように合図すると座り、皆へと作戦を伝えて最後に女神官に問いかける。

 

 

 

「はい、いつでも祈れます」

 

 女神官は大きく息を吸って吐いて、それからしっかりと錫杖を構えた。

 

「良し……」

 

 ゴブリンスレイヤーは松明を置き、火を踏み消すとロングソードを逆手に左手で、手槍は右で持つ。

 

 その間に森人剣士も剣を抜いて構え、武闘家も飛び出せるように構える……。

 

 

 

「やれっ!!」

 

「≪いと慈悲深き地母神よ、闇に迷える私共に聖なる光をお恵みください》≫」

 

 ゴブリンスレイヤーと森人剣士が駆けだし、少し遅れながらも武闘家が駆けだす中、女神官が錫杖を闇へ突き出した。

 

 

 

『GB!?』

 

掲げた錫杖の先で光が灯り、太陽の如く散々と煌めく事で広間のゴブリンの目を眩ませる。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 ゴブリンスレイヤーが同時に投擲したロングソードと手槍は術者であるシャーマンと近くにいたゴブリンを貫き、その直後、腰帯からナイフを抜き放って投擲し、三体を殺した。

 

「はぁっ!!」

 

「やあっ!!」

 

 森人剣士と武闘家も合わせて三体のゴブリンを剣と拳で殺す。

 

 「……ふんっ!!」

 

 ゴブリンスレイヤーは腰帯に帯剣した片手剣を玉座の裏へと移動し、扉代わりの腐りかけた木板を引き剥がす。

 

 

 

 

『GROO……』

 

「死ね」

 

 四匹のゴブリンの子供が中に潜んでいたが、ゴブリンスレイヤーは容赦も躊躇もなく、片手剣を踊らせるように振るい、切り殺した。

 

「これでゴブリン退治は終わりだ」

 

 ゴブリンに攫われた二人の女性に水薬を飲ませて回復させつつ、声をかけたゴブリンスレイヤーは様子を見ていた女神官と武闘家へそう告げたのであった……。

 

 

 

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