自分が新人である事もあって、積極的に『ゴブリン退治』の依頼を引き受けている(とはいえ、それだけをやり続ける気は無いが)投擲手の彼は仕事をこなすと納屋を借りている牧場へと帰る。
そうして、夜遅くまで待ってくれていた幼馴染の牛飼娘と食事を共にする中……。
「明日……俺が冒険者ギルドで報告を済ませた後、少し一緒に街を回らないか?」
「えっ!?」
投擲手が話を切り出すと牛飼娘は驚愕の声を上げる。
「嫌か? 今まで全く二人で街を歩くなんて出来なかったからな。街に行けるようになった以上、悪くないと思ったんだが」
「い、嫌じゃ無いよ……ただ、君がそんな事を言うなんて思わなかったから」
「普段、俺の事をどう思っているんだ……あの時から一緒に遊んだりしていないからな。良い機会だと思ったんだよ」
「もうちょっと前もって言って欲しかったかな……伯父さんに相談しなきゃだけど、うん、それじゃあ街の事色々と教えてあげるね」
牛飼娘は配達の仕事の関係で投擲手より、辺境の街に慣れていた。
「よろしく頼む」
「うん、楽しもうね」
「ああ」
その後、翌朝に朝食を取りながら投擲手と牛飼娘が話を切り出せば牧場主は『そういう事なら』と許可を出し……。
「色々あったが、こうして又遊べるようになって嬉しく思っている」
「……っ、なんか恥ずかしくなることを言うね」
牛飼娘は配達の仕事を済ませ、投擲手は依頼達成の報告をし、報酬を受け取り、荷車を店に預けてから二人は並んで街に出掛けた。
そんな時、投擲手の彼が言った言葉に牛飼娘は顔を赤らめ、動揺もする。昨日と言い、こちらの心に
「あの時、喧嘩したのを反省してるんだよ。だからなるべく、お前には正直に思った事を言う事に決めているんだ」
「そうなんだ……うん、じゃあ私もそうするね。今、私は本当に楽しいよ」
「なら、良かった。これからもこういう事をしようか」
「うん」
どちらも楽し気な雰囲気を醸し出しながら、街内を歩き、軽く買い物をしたりしながら投擲手と牛飼娘は二人の時間を過ごすのであった……。
二
穏やかな時間を過ごした投擲手は牧場の牛飼娘と牧場主に許可を取って朝早くに冒険者ギルドへと向かった。
一度、ゴブリン退治以外の依頼を受けようと思ったからである。
「お前、確か何度かゴブリン退治を受けている奴だよな。今回もか?」
美丈夫な容姿の槍使いの男が投擲手に声をかけた。彼も又、冒険者としては白磁等級で新人だ。
「だったら、この時間には来たりしない。放っておいても余るからな……冒険者としてはゴブリンだけを倒していても何にもならない。別の依頼を探しに来たんだ」
「そりゃ、そうだな。良かったら一党でも組むか? お前がどれくらいやるのか見てやるよ」
槍使いは頷くと投擲手に一党を組む事を持ちかけた。それは彼が三つ編みの受付嬢に好意を抱いていて、自分より明らかに受付嬢が親し気にしている投擲手がどんなものか見極めようという嫉妬などからのものであった。
「そうだな、これも縁だ」
「決まりだな」
そんな話をしていた投擲手と槍使いの二人、遠巻きに見る冒険者たちも『流石に別の依頼を受けるよな』、『今まで良くゴブリンを相手にしたもんだ』、『実は俺の村を襲おうとしていたゴブリンをあいつに退治してもらってるんだ』等、話をしていく。
「あの子、ゴブリン退治以外の依頼を受けるみたいね」
「今まで率先して引き受けてもらってましたから、彼が受けたいと思う依頼を受けて欲しいです。冒険者として」
受付嬢達も投擲手にはどうしても余るゴブリン退治の依頼を何度もやってもらっているのでそんな彼が別の依頼を受ける事に対して好意的であった。
しかし、そんな冒険者ギルドに一人の老人が駆け走り……。
「オラ達の、オラ達の村にゴブリンが出ただぁっ!!」
三つ編みの受付嬢へと切羽詰まった様子でそう叫んだ。
「……」
『……』
投擲手の彼は老人の叫びに身を震わせ、そんな彼の様子を冒険者たち全員が見……。
「………………やっぱり、もうちょっとゴブリンを退治するか。悪い、次の機会という事で頼む」
「お、おう」
「ふふ、優しい、人ね」
深い息を吐いて投擲手の彼は槍使いに謝りながら、依頼版の元から離れていきそんな彼に対して肉感的な肢体の線も露わな衣装を纏って帽子を被った魔女が艶やかな笑みを浮かべて評する。
『良い奴だなぁ』
他の冒険者達も投擲手は良い奴だと認識を共有する。そんな中……投擲手はゴブリン退治を依頼しに来た老人の元へと行き、そうして今回も『ゴブリン退治』の依頼をこなしに行くのであった……。