『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

52 / 116
五十一話

 

 昼前、辺境の街の冒険者ギルドに三人の異種族が訪れた。その異種族の一党は全員、銀の小板を首から下げている。それぞれが違う異種族である事や銀等級であるのもあって三人は他の冒険者たちの視線を引いたが……。

 

「すっごい綺麗だ」

 

 そう、異種族の中の一人は女性で緑の髪に他者からすれば男女関係無く、目を引かれざるを得ない超絶的な美しさであり、細身ながらしっかりとその美しさにマッチしている。

 

 なにより、耳は尖っていた。そう彼女は上森人(ハイエルフ)であった。 

 

 そしてその身には狩人装束を身に着けていて、身のこなしは鹿の様に軽快。

 

 背には大弓を背負っていて、格好と合わせれば野伏か弓手だろう。

 

 他の二人のうち、一人は森人とは相性が悪いとされるずんぐりむっくりな鉱人(ドワーフ)の男でつるりとした禿頭、長い白髭を蓄えている老人。

 

 東洋風な衣装で腰にはガラクタめいた物の詰まった大鞄と呪文遣いである鉱人道士だろうことが窺えた。

 

 そして最後の一人は長身であり、鱗の生えた全身、民族的な衣装や銀板の他に首に奇妙な護符を下げている事から僧侶だと分かる蜥蜴人(リザードマン)の男であった。

 

 

 

「オルクボルグはいるかしら?」 

 

 妖精弓手が代表するように三つ編みの受付嬢へと近づき、問いかける。

 

「ああ、彼なら……」

 

 受付嬢は丁度、休みである事を告げようとしたが……。

 

「随分と珍しい組み合わせだな、森人に鉱人に蜥蜴人とは」

 

「む、貴女は……」

 

 休日を今日は森人剣士と過ごしていたゴブリンスレイヤーはギルドの方が騒がしかったので立ち寄ってみて、他の冒険者と同じように珍しい異種族の一党に驚いていた。

 

 そして、森人剣士は妖精弓手に覚えがあった。

 

「あら、久しぶりね」

 

「ああ、久しぶりだ」

 

 妖精弓手もまた覚えがあり、明るく笑うと近寄って手を差し出し、握手を交わす。

 

 

 

「知り合いか?」

 

「数年前、この辺境に来る前に少し同行した仲だ」

 

「そうか」

 

 ゴブリンスレイヤーの問いに森人剣士は答える。

 

 

 

「ゴブリンスレイヤーさん、そこの森人の方が貴方に用があるみたいです」

 

「じゃあ、貴方がオルクボルグなのね……良いじゃない」

 

「ほぉほぉ、これはまさに『かみきり丸』というにふさわしいのぅ」

 

「中々の兵とみましたぞ、小鬼殺し殿」

 

 少し観察しながら、ゴブリンスレイヤーの歴戦の戦士染みた容姿と雰囲気に三人はそれぞれ、評価をする。

 

「それはどうも……とはいえ、異種族はそれぞれでゴブリンを殺す者の呼び名も違うんだな」

 

 寝ぼけている時にそれぞれ違う呼び名で呼ばれたから混乱しそうだと思いながらも呟く。

 

 ともかく、用があるのなら聞こうと三人に森人剣士とゴブリンスレイヤーは二階の応接室に行き……。

 

 

 

「俺に用というのは依頼だろ?」

 

 冒険者が冒険者に尋ねるなど依頼において一党を組んだりするためのものだ。

 

「ええ、その通りよ。都の方で悪魔が増えているのは知っていると思うけど……」

 

「ああ、最近悪魔たちの動きが活発になっているな。少し前に彼女と二人で上級の悪魔を退治したばかりだ」

 

「中々手強かったな」

 

 妖精弓手の言葉にゴブリンスレイヤーと森人剣士は少し前に受けた依頼の事や情勢を振り返りながら言う。

 

「それは頼もしいわ。私達は貴方に協力をしてもらいたいに来たの」

 

「じゃあ、依頼は悪魔退治か?」

 

「いえ、悪魔の活動の影響で調子づいている小鬼の討伐よ」

 

「……ん、お、おぉ……」

 

「もうちょっと、順序という物を考えて話さんかい耳長よ」

 

 妖精弓手の説明下手にゴブリンスレイヤーは戸惑い、鉱人道士は呆れた。

 

「小鬼殺し殿、今、封印された魔神王(デーモンロード)の一つが目覚め、我々を滅ぼそうと悪魔の軍勢を率いていてな」

 

 蜥蜴僧侶が説明を代わった。

 

「それで拙僧らの族長、人族の諸王、森人と鉱人の長が集まって会議を開く事になったのだ」

 

 ただ、問題は近頃、森人の土地でゴブリンの動きが活発になっており、調べたところ大きな巣穴が見つかったという。

 

 

 

 とはいえ、ゴブリン相手に軍を動かせないという政治的な要因が絡んでしまった。他の種族が勝手に兵士を動かす事も出来ないので冒険者に解決させる事になり、しかし今の三人だけでは只人の顔が立たない。

 

 そうして、ゴブリン退治をし続けているゴブリンスレイヤーに白羽の矢が立ったとの事だ。

 

「遺跡か……数も多いんだろう?」

 

 巣穴への地図があるか聞けばそれが出される。そうして、質問すると……。

 

「大規模だ」

 

「きな臭いな……魔神王の幹部が動いている可能性がある」

 

「何故、そう思われる?」

 

「状況が出来過ぎているからな……それくらい、最悪だと動いた方が良いと思う。勘もあるけどな、そして早く片付けた方が良いだろう。報酬については後だ。かなりの大仕事になるぞ」

 

 そうして、ゴブリンスレイヤーは森人剣士に依頼をしてきた妖精弓手に鉱人道士に蜥蜴僧侶、更に……。

 

「ゴブリンスレイヤーさん、私達は……」

 

「力を貸してくれ」

 

『はい』

 

 ゴブリンスレイヤーが応接室に行ったのを見かけた女神官たち四人はゴブリンスレイヤーが出てくるのを待っており、そうして尋ねると協力を頼まれたので頷いた。

 

 こうしてゴブリンスレイヤーは準備を整えたりしながら、九人による一党で森人の土地にある遺跡を巣穴としたゴブリン退治に向かったのであった……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。