『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

53 / 116
五十二話

 

 ゴブリンスレイヤーと森人剣士が他の冒険者と比べて積極的にゴブリン退治をしている事は四方世界においては有名である。それに二人とも等級は『銀』であるのもあって、注目度も高い。 

 

 それが故か辺境の冒険者ギルドまでゴブリンスレイヤーにゴブリン討伐を依頼しに妖精弓手に鉱人道士、蜥蜴僧侶の異種族の三人組の一党がやってきた。

 

 この一党の話によれば現在、魔神王の一つが封印から目覚め、悪魔の軍勢が世界を侵攻しようとしている状況であるとの事。

 

 それに対し、異種族の長と人族の諸王が集まって会議をしようとしているのだが森人の土地にある遺跡を大規模なゴブリンの群れが巣穴にしている事が判明した。

 

 よって、これに対応するためと人族の顔を立てる事も考えてゴブリンスレイヤーに遺跡のゴブリン退治を依頼しに来たとの事だった。

 

 状況的にゴブリンスレイヤーは魔神王の配下、あるいはそれに相当する者が動いている可能性も予測しつつ、依頼を引き受けると共に面倒を見ている女神官たちの力も借りる事にした。

 

 そうして、準備を整えるとゴブリンスレイヤー達九人の冒険者による一党は辺境の街を出で、ゴブリンの巣穴となっている遺跡へと向かった。

 

 場所は遠く、三日が過ぎてもまだ辿り着けない程。

 

 

 

 

 二つの月の輝く星空の下、どこまでも続くような荒野でゴブリンスレイヤー達は野営を始める。

 

「ねぇ、皆はどうして冒険者になったの?」

 

 そう質問をしたのは妖精弓手、彼女は好奇心旺盛なのと自由奔放なところがあり、旅の道中、皆に話しかけたり質問していた。

 

 今は皆が冒険者になった理由が気になったようだ。

 

「はい、俺は最強の戦士を目指してだ」

 

 新米戦士が最初に元気よく答えた。

 

「私は『剣の乙女』様のようになりたくて」

 

 次に見習い聖女が少し恥ずかしそうに言った。

 

「私は父さんから教わった『武』で人助けをしたかったからです」

 

「私は神官として地母神様に代わって、人をお助けしたくて……」

 

 女武闘家に女神官も理由を言っていく。

 

 

 

「儂は旨いもんを喰うためだ」

 

「拙僧は異端を殺して位階を高め、竜となるためだ。それが教義であるゆえ」

 

「私は……人に語れる物ではないから止めておこう」

 

「俺は勇者のような英雄になりたかったからかな……」

 

「私は外の世界に憧れってとこよ」

 

 森人剣士以外の皆が理由を語る。そうして、蜥蜴僧侶と女神官の手で作られた夕食が振る舞われる。

 

 沼地の獣の干肉(森人剣士に妖精弓手は種族柄、食べられないが)と何種類かの乾燥豆を混ぜてこしらえたスープだ。

 

 

 

 

「せっかくだし、皆にこれをあげるわ」

 

 妖精弓手が荷物から葉に包まれた薄く小さなパンを取り出して配っていく。

 

「これはありがたい。オルクボルグ、これが君の師匠も食べただろう焼き菓子だよ。皆、滅多に食べられるものではないから、味わうと良い」

 

「そうか」

 

 妖精弓手が配った物を森人剣士が解説した。

 

「では儂も秘蔵の火酒を出そうかの」

 

 鉱人道士が厳重に封の施された陶器の大瓶を持ち出す。

 

「火のお酒ですって?」

 

「おうとも。まさか耳長の……酒も飲んだ事無いなんざ、童子みたいな事は言わんよな?」

 

「ば、馬鹿にしないで……〜〜〜〜〜〜〜〜っ?!?!?!」

 

 鉱人道士が手酌した酒の椀をひったくるようにして持ち、恐る恐る口に含むとあまりの辛さに咳き込み始めた。

 

「はっはっはっは、娘っ子にゃあ、まだ早かったかのぅ」

 

 愉快そうに鉱人道士は火酒に悶絶している妖精弓手の様子を見て笑う。

 

「ほれ、かみきり丸。お前さんも飲め」

 

「いただこう」

 

 ゴブリンスレイヤーは鉱人道士が差し出した椀を受け取り、ゆっくりと呷る。

 

「火酒の名の如く、熱くなってくるな。だが、良い物だってのは分かる」

 

「良い飲みっぷりよ」

 

「俺は酒に合う物でも出そう」

 

 そうして、チーズを出した。

 

「お、このチーズはどんなものより美味しいから俺、好きだ」

 

「ええ、私も」

 

 新米戦士に見習い聖女はゴブリンスレイヤーと依頼をこなす中で食べた事があるのでチーズを見て言った。

 

 妖精弓手が石を研磨したナイフで人数分、切り分け女神官が出した細い鉄串で刺して火に炙る。

 

「おお、おおっ!! これはまさしく甘露よっ!!」

 

「気に入ったようでなによりだ」

 

 チーズを口にするのは初めてだと言う蜥蜴僧侶がチーズを食べると快哉を上げ、地面を長い尻尾で叩く事で喜びを示す。

 

 そうして夕食による団欒を楽しんだゴブリンスレイヤー達は見張りを決めつつ、残りは眠りにつき……。

 

 再びゴブリンの巣穴を目指した一党は太陽が沈みかける時間帯にて、大地に半ば埋もれるように盛り上がっている古代の遺跡のものである白石造りの四角い入口が見える場所まで辿り着く。

 

 

 

 

 

 

 そうして、茂みに身を潜めた。

 

 入り口の両脇に手に槍を持ち、粗雑な革鎧を着たゴブリンが二匹おり、傍らには狼がいたからだ。

 

「大規模なのは間違いない。番犬まで用意できているなら、余裕さえある」

 

「余裕が無い群れだとどうなの?」

 

「番犬なんて用意せず、食べる」

 

「うわぁ……良いわ、それじゃあ仕掛けるわね」

 

 妖精弓手が背負っているイチイの枝に蜘蛛糸の弦を張った大弓に木の枝が自然と矢の形となり、鏃は芽、矢羽は葉が付いているそれを番え、そうして放った。

 

 ゴブリン達より幾分か右に逸れたそれが次の瞬間には大きく弧を描き、右のゴブリンの頸椎を真横から吹き飛ばし、左のゴブリンの眼窩に飛び込み、貫く。

 

 そして、更に妖精弓手による第二射が異変を察し、咆哮を上げようとした狼の喉奥を射抜く。

 

『す、凄いっ!!』

 

 新米戦士に見習い聖女、女武闘家に女神官は驚愕しつつ、称賛。

 

「流石だな」

 

 森人剣士は妖精弓手と共に行動していた時を思い返しながら言う。

 

「お見事だが、今のは魔法の類ですかな?」

 

「十分に熟達した技術は魔法と見分けが付かない物よ」

 

「それを儂の前で言うかね」

 

 蜥蜴僧侶の問いに妖精弓手が自慢げに言い、鉱人道士は顔をしかめる。

 

「本当に見事な弓の腕だった」

 

「ありがとう。でも、なによそれ」

 

「もしものための備えだ」

 

「……」

 

 投石紐に石を巻き付けて持っていたゴブリンスレイヤーからの答えに妖精弓手は何とも言えない表情を浮かべるのだった。

 

 ともかくとして、ゴブリンスレイヤー達は匂い消しの香袋を首にかけたりなどの準備をして遺跡へと侵入していくのであった……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。