『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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五十三話

 

 魔神王が復活し、悪魔の軍勢を率いて四方世界を侵略しようとしている現状とそれに対抗しようと四方世界の幾つかの種族が会議をしようとしている中、森人の土地にある古代遺跡がゴブリンの巣穴となっているためそのゴブリンの討伐へとゴブリンスレイヤー達は向かい、そうして妖精弓手が見張りのゴブリンの二体と番犬を片付けた事で遺跡の中へと侵入した。

 

「ここまでは罠は無いな」

 

 斥候としてゴブリンスレイヤーは剣で行く手の床と壁を叩いたり、紐に結んだ小石を放り、無事に転がるのを確かめて手繰り寄せる。

 

 この遺跡がある平野では神代の頃に戦があったため、侵入者に対する罠が仕掛けられていてもおかしく無いのだ。

 

「随分と斥候、手馴れているわね。ゴブリン退治をやることが多いって聞いてたけど……」

 

「多いってだけで遺跡の探索とかもやっているぞ」

 

「ああ、そして彼はいつも斥候を担当してくれている」

 

 同じく斥候を担当する妖精弓手がゴブリンスレイヤーの手際を見て、言い……ゴブリンスレイヤーが応じると森人剣士が付けたす。

 

「今更、聞くのもなんだけど貴方達ってその……そういう仲なの?」

 

 この遺跡までの道中や野営、そうした時には常に隣り合っていたゴブリンスレイヤーと森人剣士、会話中の態度などから妖精弓手は顔を少し赤らめつつ、質問する。

 

 

「本当に今更だな。まあ、お前が考えている通りだ」

 

「ふふ、長く付き合っているよ」

 

「そ、そうなの」

 

 そんな雑談を交わしつつ、用心もしながら遺跡内を進んでいき……。

 

「少し、止まって気分を落ち着けよう。感覚を削ってきているからな」

 

「ほう、分かるか。儂としてもそう思う。地下は慣れとるが……明らかに侵入者に対する仕掛けじゃな」

 

 ゴブリンスレイヤーは度々、小休止というか深呼吸の時間を設けた。遺跡に踏み入ってからゆるい傾斜が続いており、直線と思える通路は徐々に曲がり、螺旋状になってくる。

 

 回って下りるそれは平衡感覚を狂わせていったのだ。

 

 

 

 ゴブリンスレイヤーの意見に応じながら、種族柄、建物の建造に詳しい鉱人道士が言う。

 

 

 一党は感覚を狂わせられないようにしながら、進み……。

 

 

 

「止まれ」

 

「止まって」

 

 下り道が終わり、通路が左右に分かれる。差異の無い全く同じ造りの道がT字型に伸びていた。

 

 

 

 ゴブリンスレイヤーと妖精弓手が止まるように指示し……。

 

「鳴子だな」

 

「多分ね、真新しいから気づけたけど……」

 

「遺跡だけあって、罠が悪辣だなぁ」

 

「あんた、罠が看破出来たからって気を抜いて逆に引っかからないでよ」

 

「分かってるよ」

 

 ゴブリンスレイヤーと妖精弓手が腹ばいになって床に這いつくばりながら、石畳の隙間を指先でなぞり、探って気づいた。

 

 僅かに浮き上がっている床であり、踏むとどこかの機構が動いて音が鳴る仕掛けだったのだ。

 

 新米戦士が溜息を吐き、見習い聖女は注意をする。

 

「これ程の遺跡を巣穴にしている割りにはトーテムが無いな」

 

「そう言えばそうだな、やっぱり君の言う通り何かありそうだ」

 

「確かにそうですね」

 

「ここに入ってから、見張りもいないようだし」

 

「うう、こういうのなんか嫌だぞ」

 

「だから、気を付けなさいって事でしょ」

 

 ゴブリンスレイヤーの意見に森人剣士に女神官、女武闘家、新米戦士に見習い聖女ら、ゴブリン退治を幾つか経験している者たちが応じた。

 

 

 

 

「シャーマンかぁ……」

 

「それにしてもやっぱり、それぞれの経験者がいるというのは心強いのぅ」

 

「然りですな」

 

 ゴブリンスレイヤー達からゴブリンシャーマンがいれば、トーテムを設置するという事を聞き、妖精弓手に鉱人道士、蜥蜴僧侶らが言う。

 

「ただのゴブリンではこんな罠は無理だ。何者かがゴブリンを率いているんだろう……足跡か何か探れれば良いが……どうだ?」

 

「ふむ、ちょっと見てみよう」

 

「鳴子、踏まないでよ」

 

「わぁっとる、わぁっとる」

 

 ゴブリンスレイヤーが鉱人道士に問いかけるとT字路の左右を回るように歩き、石畳を蹴りつける。

 

 

 

 

「分かったぞい、奴らのねぐらは左側じゃ」

 

「どうやって分かった?」

 

「床の擦り具合だの。奴らは左から来て右に行って戻るか、左から来て外に向かっておる」

 

「そうか……なら、右だ。じゃないと手遅れになるだろうからな」

 

 そうして、ゴブリンスレイヤー達は右の道に行き、さほど進まないうちに嫌悪感がする臭気が漂う。

 

 

 

 

「ぬっ!!」

 

「むぅ」

 

 鉱人道士に妖精弓手、蜥蜴僧侶らが鼻を摘まんだり、口を抑えたり、訝し気に目を回す。

 

 

 

 

「やはり、慣れんな。これは」

 

「これって……」

 

「間違いなく、あれね」

 

「本当に嫌になる」

 

「そうね」

 

 森人剣士に女神官、新米戦士に見習い聖女――ここでもやはり、ゴブリン退治を何度かやっている者たちが慣れているからこそ、次に見る光景を察した反応をした。

 

 

 

「意識して、鼻で呼吸しろ、直ぐに慣れる」

 

 ゴブリンスレイヤーが言いながら、奥へと突き進み腐りかけた木の扉が嵌ったそれを蹴り開けた。

 

「っ、うえ、おえええっ!!」

 

 扉が倒れ、見えた室内の光景。ゴブリン共の汚物溜めであり、そして薄汚れた金の髪の森人が腱を断たれたのが分かる程に無残な傷跡のあるやせ衰えた四肢を晒し、脚は鎖に繋がれていた。

 

 汚物に塗れ、憔悴しているとはいえ、左半身は美しい留めているが右半身は赤黒く腫れ、目も乳房も何もかもが潰れていた。

 

 そんな同胞の凄惨な姿に妖精弓手が蹲り、嘔吐した。

 

 

 

 

「良い、そのまま吐いていろ……初めて見るのか」

 

 ゴブリンスレイヤーは妖精弓手に駆け寄り、背中を摩っていく。

 

 そんな彼の問いに妖精弓手はただ、頷いた。

 

「そうか……彼女を頼む」

 

「ああ」

 

 そうして、森人剣士に妖精弓手を任せると部屋内に足を踏み入れ……。

 

 

 

 

「しっ!!」

 

「GOB!!」

 

 腰に付けた袋から石を取り出すと壁へと投擲し、それが跳弾する事で汚物の山に潜んでいたゴブリンに炸裂し、吹っ飛ばしながら昏倒させる。矢継ぎ早に取り出した石を投擲し、倒れているゴブリンの頭部を粉砕して殺した。

 

「殺して……あいつら、皆……殺してよ」

 

「ああ、勿論だ」

 

 囚われた森人の冒険者の懇願に対し、ゴブリンスレイヤーは頷いて応じ、そうして救助を始めたのであった……。

 

 

 

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