ゴブリンの巣穴と化している森人の里にある遺跡へと侵入したゴブリンスレイヤーの一党はその遺跡で不運にもゴブリン達の虜囚となり、蹂躙された女性である森人の冒険者を見つけて救出した。
女神官による≪
これは蜥蜴僧侶が持つ小さな牙を触媒に蜥蜴の骨の兵士を生み出すものであり、複数の竜牙兵を生み出すと事情をしたためた手紙を持たせつつ、森人を担ぎ上げさせて森人の里へと運ばせたのである。
「何なのよぉ、もぉ……こんなの、わけわかんない」
ゴブリンの悪意と欲望の餌食により、蹂躙された同胞の姿を見たショックにより、妖精弓手は蹲って啜り泣く。そんな彼女の背を森人剣士が摩って落ち着かせていた。
そんな中でゴブリンスレイヤーは汚物塗れの部屋内のゴミ溜めを漁り、弄り、崩し、汚物の中から冒険者向けの帆布で作られた頑丈な背嚢を引っ張り出した。
「それはあの森人の……」
「そうだろうな……良し、あった」
ゴブリンスレイヤーは女神官の声に応じながら背嚢の中を引っ掻き回し、乱雑に丸められた乾燥した葉を取り出す。それを広げれば流麗な筆致で描かれた図形があった。
「この遺跡の地図だ」
「あの人、それを頼りにここへ」
女武闘家がゴブリンスレイヤーの言葉に続く。
森人の冒険者は此処がゴブリンの巣穴になっているのを知らず、未知の遺跡を踏破しようとして虜囚となってしまったのだろう。
「左の道の先は回廊のようだ。吹き抜けになっているようで十中八九、ゴブリン達がいるのはそこだろう。流石だな、あんたが言うように左が正解だ」
「喜べる状況では無いのう」
ゴブリンスレイヤーが気分が悪いと部屋の戸口に立っていた鉱人道士に言えば、不機嫌そうに呟く。
ゴブリンスレイヤーはその他、軟膏などいくつかの品を森人の荷物から取り出す。
そして、森人の背嚢を持って妖精弓手の元へ行き……。
「この遺跡のゴブリンを皆殺せというのがあの森人の望みだ。叶えてやろうと思う……お前はどうだ?」
屈みながら妖精弓手へと語り掛けつつ、背嚢を差し出す。
「やるわよ。同胞をあんな目に遭わせた事、絶対に許さない」
「良し、ならやろう」
妖精弓手は決意を秘めた目でゴブリンスレイヤーに頷きながら森人の背嚢を手に取った。
そうして森人が使っていた地図を元に遺跡を進んでいき、途中、警邏のゴブリンと何度か遭遇したが妖精弓手が基本、短弓にて射殺したが何度かは動揺も残っているからか、仕留めそこなったのをゴブリンスレイヤーが石に瓦礫、短剣の投擲によってフォローする事で始末した。
「ごめんなさい」
「問題無い、そのための一党だろう。ただ、気が入り過ぎだ。落ち着け」
「……うん、ありがとう」
張り詰めた弦のような表情でありながら、謝る妖精弓手にゴブリンスレイヤーは平然と応じ、軽く肩を叩いた。
妖精弓手は礼を述べながら少し息を吐き、力を抜く。
その後は地図の通りに進んだ事で吹き抜けになっている回廊に辿り着いた。
そうして、回廊の手すりより吹き抜けを覗き見れば、崖のように切り立った壁面の下に夥しい数のゴブリンが蔓延っている。
それにゴブリンスレイヤーと森人剣士以外の冒険者達が流石に恐怖すらする中……。
「≪
ゴブリンスレイヤーは淡々と呪文を唱え、必殺必中の性能を有する≪
『GOBAAAAAAA!?』
そうして夥しい数のゴブリンの群れは遠距離より放たれた力場の矢に全て射殺され、全滅した。
射撃においては遠距離であり、標的を見下ろす位置を取っているのは圧倒的有利である。
「久しぶりだな、君の全力の魔法を見るのは」
「使うべき時だったからな」
皆がゴブリンスレイヤーの魔法の実力に驚愕する中で森人剣士が笑みを浮かべながら言えば、ゴブリンスレイヤーは淡々と答えたのだった……。