『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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五十五話

 

 ゴブリンの巣穴と化した古代遺跡の地図を救出した森人の冒険者の女性が持っていた事で迷う事無く、ゴブリンスレイヤー達はゴブリン達が集っているだろう場所へと向かう事が出来た。

 

 それは吹き抜けとなった回廊であり、見上げる天井は地上にまで至っているだろうことが窺える程のものである。

 

 そして白亜の壁には美しい筆致で神代の世界を巡る争いの絵が残されていた。

 

 美しい神々が、禍々しき神々は剣を揮い、雷槌を投げ、やがてはサイコロに手を伸ばすという創世の図であり、歴史的価値を感じさせるがゴブリンの巣穴となってしまった。

 

 もっともそんなゴブリン達もゴブリン達を見渡せる手すりより放った≪力矢(マジックミサイル)≫による狙撃にて一掃したが……。

 

 その後、ゴブリンスレイヤー達は力矢によって穿ち抜かれたゴブリンの死体が転がる広場へと下りると……。

 

 重々しい音と共に大気が震えた。その音は響き続け、ゴブリンスレイヤー達へと迫り……暗闇の中から音を出した者が姿を現した。

 

「どうやら、大層な術の使い手がいるようだな。ゴブリン共め、雑兵の役にも立たないとは……」

 

 そう、ゴブリンスレイヤーたちを見下ろし、ゴブリンの死体を見下ろして吐き捨てるのは青黒い巨体に額に生えた角、金色の瞳、腐敗臭の漂う息を吐く口、手には巨大な戦槌を持つ人食い鬼であるオーガだった。

 

 この四方世界においては凄まじい脅威の怪物として知られている。

 

 

 

 例えば、強固な盾を持った騎士がオーガの攻撃を受け止めたが自らの盾を頭に埋めて死んだ。

 

 例えば、さる勇士が百日決闘を挑んだ際、毎日無傷のオーガと戦わねばならず、力尽きた。

 

 例えば数多の術を収めた魔術遣いがオーガとの知恵比べの末、術をかけられ焼き殺された。

 

 オーガは第三位の銀等級が立ち向かうにしても恐ろしい難敵である。

 

 

 

『オーガっ!?』

 

 そんなオーガの存在にこの場にいる多くの者たちが驚愕の声を上げつつ、身構えながら緊張した。

 

「状況が状況だから、なにがしかはあると思ったがまさか、オーガがゴブリンを手勢にしていたとはな」

 

「ふん、数だけは多いからな……しかし、本当に数だけだった。やはり、ゴブリンを雑兵とするのは間違いらしい。とはいえ、お前達は先の森人と違って我らが砦と知って侵入したようだ。ならば、死んでもらう」

 

 冷静にゴブリンスレイヤーがオーガへと語り掛け、オーガは応じつつ、ゴブリンスレイヤー達に対し戦意と殺意を剥き出しにする。

 

「なら、勝負だ。オーガよ、お前も中々の術の使い手と聞いている。俺達を焼き殺せるかどうかやってみろっ!!」

 

「ふふふ、くふふふふ、はははははっ!! 我の事を知っていながら、そんな事を言えるとはな、良いだろう、思い知るが良い」

 

 

 

 

 

 オーガがゴブリンスレイヤーを嘲笑いながら、青白く巨大な左手をゴブリンスレイヤー達に向けて突き出し……

 

「≪カリブンクルス(火石)……クレスクント(成長)……ヤクタ(投射)!!≫」

 

 掌に微かな光が生まれ、それが裏返るようにして炎に転じる。赤々と燃える炎はやがて橙に、次いで白く、やがて蒼くなり……。

 

そして、オーガは巨大な≪火球(ファイアボール)≫を放つ。その間際……。

 

これでも、食らえ(テイク・ザット・ユー・フィーンド)

 

 ゴブリンスレイヤーはいつの間にやら腰の後ろの雑嚢から抜き出していた巻物を取り出し、紐解く。

 

 すると巻物から激しい勢いで何かが飛び出した。それはオーガの火球と衝突する。

 

 こうして発生するは轟音と閃光、静寂……。

 

 

 

 

 

「……あ、お、おお?」

 

 オーガは何が起こったか全く理解できなかった。僅かな浮遊感と共に彼の巨体は広間の瓦礫の中へと叩き込まれた。

 

「……っ!?」

 

 オーガは衝撃に息を詰まらせた。視界に自分の両足が見えたのだ。腰から上のかけた自分の両足が……。

 

「本来、単体に使う手じゃ無いが……それでオーガを始末できるなら十分、元は取れているな」

 

 ゴブリンスレイヤーはそう言いながら、効果を失った巻物を放り捨てる。

 

 彼が紐解いた巻物は失われた呪文である≪転移(ゲート)≫が記されていた。

 

 行き先を真に力ある言葉で書き加える必要はあるが、その行き先へつながる門を生み出す物。

 

 本来は主に緊急離脱などのために用いられるのだが、ゴブリンスレイヤーは攻撃手段として用いた。

 

 行き先を海底にする事で巻物を開き、門を出現させると高圧の海水を放つものにしたのだ。

 

 その海水により、オーガは火球ごと肉体を両断されたのである。

 

 

 

「流石のオーガも大自然の力には勝てなかったようだな」

 

 呆然としながら、血反吐を吐き、海水溜まりの中でもがくオーガに背中から魔法の剣を抜いて近づいていくゴブリンスレイヤー。

 

「お、おぉ……おあああっ!!」

 

「ほう、オーガも死は恐怖するのか……それはそれは……」

 

 オーガは再生能力を有するが、決して不死身ではない。死が迫った事でオーガは恐怖に襲われ、無様に泣き叫ぶ。

 

 ゴブリンスレイヤーは嘲笑しつつ……。

 

「あの森人の仇だ。短い間だが、その恐怖……たっぷりと味わえ」

 

「あああああああああああっ!!」

 

 魔法の剣を両手で逆手に持ち、ゴブリンスレイヤーはオーガの頭へ命尽きるまで何度も突き刺し続けたのであった。

 

 

 

 

「今回は楽に対処できて良かった」

 

「そうだな、それにしても本当に君の発想力には恐れ入るよ」

 

「只々、考えてるだけだ。良いやり方という奴をな」

 

 オーガの頭部を肉塊に変えたゴブリンスレイヤーは魔法の剣を背の鞘に納めると森人剣士が声をかけ、話し合う。

 

 

 

 

「よもや、あれほどとは」

 

「≪転移≫の巻物をああして使うとはのぅ」

 

「オーガをああやって倒すなんて」

 

 オーガをあっという間に倒してみせたゴブリンスレイヤーの手際に蜥蜴僧侶に鉱人道士、妖精弓手が驚愕しつつ、賞賛する。

 

「ゴブリンスレイヤーさん、本当に凄い」

 

「ええ、流石よね」

 

「俺もああいうふうに……」

 

「あんたじゃあの人のやり方は出来ないわよ」

 

 女神官に女武闘家、新米戦士に見習い聖女らもゴブリンスレイヤーの実力を改めて知り、感想を告げる。

 

「さあ、後はゴブリンの生き残りがいないかどうか探すぞ」

 

 そうして、遺跡内を探るとゴブリンの生き残りがいないのを確認しつつ、オーガによって集められていた宝を獲得し九人で分配するのであった……。

 

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