辺境の街を二人の男女が寄り添いながら歩いていた。
一人はゴブリンスレイヤーであり、もう一人は冒険者ギルドで働く三つ編みの受付嬢であり、私服姿であった。
「いつもこうして、デートしていただきありがとうございます」
「それは俺の台詞だ。誰か一人を選べない俺を愛してくれている事に本当に感謝している」
受付嬢からの礼にゴブリンスレイヤーはそう答える。
ゴブリンスレイヤーは牛飼娘に受付嬢、そして森人剣士と『
「もう、今更それは言いっこ無しですよ。それに貴方はちゃんと全力で私達を愛してくれているじゃないですか」
「それが俺に出来る最大限の事だからな」
苦笑する受付嬢にゴブリンスレイヤーは感謝の態度を取りつつ、そう言う。
そんなやり取りをしながらも逢瀬の時間を楽しんでいたが……。
「ふんふんふーん」
ふとご機嫌に鼻歌を歌いながら、歩いてくる圃人の斥候の青年とすれ違った。
「あいつは確か……」
「ああ、あの人は鋼鉄等級の方ですね。同じ等級の戦士と魔術師、僧侶の方と組んでいます」
「そうか……だが、あの方向には確か……」
ゴブリンスレイヤーは圃人の男で斥候だと見て取れる者が歩いてきた方向を逆に辿れば、とある店がある事に思いいたる。
「ちょっと、気になる事があるんだが」
「勿論、構いませんよ。こういうところで冒険者さん達の評価をしなければいけない事もありますしね」
圃人斥候の事が気になったのでゴブリンスレイヤーは受付嬢と共に圃人斥候が歩いてきた方向を逆に辿る。
「(やってくれたな)」
とはいえ、大体の事は把握できているが……。
何故、ゴブリンスレイヤーが圃人斥候の事が気になったのかと言えば、昨日、酒場にて楽しい食事をしていた彼だが、その周囲の中では何とも言えない顔をした一党がいた。
「くそう、今回の依頼は外れだったな。遺跡だから宝が一つや二つはあると思ったのによぉ」
「貧乏生活は変わらない」
「くう、家族に顔向けが」
「残念だったねえ」
その一党こそ鋭い目つきの斧戦士の男に半森人で綻びの多いローブを着た妖術師の女性、冒険者としては珍しい所帯持ちの中年の男である武僧。
そして、圃人斥候であった。
遺跡探索の結果が良くなかったらしいが、ゴブリンスレイヤーは他の残念がる者達とは別に妙に余裕がある圃人斥候の様子が気にはなった。
そして、今日の様子となにより、圃人斥候が歩いて来た方向を逆に辿ればある店の店主から話を聞いた事で……。
「(やってくれたな)」
冒険者として斥候を務める事もある身として、圃人斥候に怒りを抱いたのだった……。
二
圃人斥候はご機嫌だった。何故なら、遺跡の探索において斥候中に宝箱を見つけたからだ。
中身は古銭だが金貨が何十枚かあって、その時、背負い袋に余裕もあった。
こうして、まんまと圃人斥候は宝箱を独り占めし、仲間には内緒でそれなりに儲ける事が出来たのだ。
そう、絶対にバレる事は無い筈だったのに……。
「おい、お前……この前の仕事で宝をくすねただろ?」
「っ、は、はあ、い、嫌だな。そんな事は……」
圃人斥候が冒険者ギルド内にて借りている部屋に斧戦士、妖術師、武僧と一党を組んでいる者たちがやってきて皆、怒りに満ちているが特に斧戦士が怒りながら、訪ねてきた。
何故か自分の隠し事が知られていたので動揺しつつ、否定するが……。
「そうか? お前が結構な量の古銭の金貨を換金したって証拠付きで教えてくれた奴がいたんだが……幸い、ここには≪
「……わ、分かった。おいらが悪かった、ちょっと魔が差しただけなんだよ。今、換金したものを山分けに……するかよっ!!」
圃人斥候は部屋に招きつつ、自分は素早く全財産を入れている袋を持ち、袋を開いて中に手を入れつつ、次の瞬間、走り出し仲間であった者たちを潜り抜け、手すりから飛び降りようとして……。
「ふんっ!!」
「ぐべえっ!?」
逃げ出すだろうと様子を見ていたゴブリンスレイヤーが石を投擲し、圃人斥候の頭部に炸裂させた。これにより、圃人斥候は背中から倒れて逃走に失敗した。
「う、ぐう……」
「此処じゃ目立つからな、ちょっと場所を変えるか」
「そうだね」
「皆、お騒がせした」
斧戦士が倒れていた圃人斥候の身体を抱え上げて妖術師と武僧を伴いながら、移動を開始しつつ……。
「ありがとうな、お陰で助かった」
「同じ冒険者として当然の事をしただけだ」
斧戦士は圃人斥候の事を教えてくれた事と逃亡を防いでくれた事、両方の意味で礼を言い、ゴブリンスレイヤーはそれに応じる。
こうして、圃人斥候は斧戦士に抱え上げられた状態でどこかへと連れられていく。
「ああいう奴がいるから俺達が偏見を……」
「斥候の恥晒しが」
なんとなく事情を察した圃人や斥候の冒険者達が侮蔑をしたりするのであった……。
そうして、辺境の街にある受付嬢の家へとゴブリンスレイヤーは向かい……。
「お帰りなさい」
「ただいま」
受付嬢に出迎えられながら、彼女と抱き締め合い口づけを交わすのであった……。