『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれた投擲手   作:自堕落無力

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六十八話

 

 西方辺境一帯の法を負って立つと言っても過言ではない大人物が『至高神の大司教』である。

 

 冒険者としても魔神王の一柱を一党と共に討伐した英雄であり、『剣の乙女』とも呼ばれる女傑からゴブリンスレイヤーは指名の依頼を受けた事で彼女にとっての本拠である水の街にある『法の神殿』を訪れ、そうして接触を果たして歓迎された。

 

「あ、あの……よ、よろしくお願いします……お会いできて光栄です」

 

「わ、わわ……私もお会いできて本当に嬉しいです。同じ至高神様に仕える者として、大司教様は憧れです」

 

 女神官もであるが、同じ至高神に仕える者として見習い聖女は凄く緊張しながら『大司教』へと自己紹介をした。

 

「ふふふ、良くいらしてくださいました」

 

 大司教は二人に対し微笑む。それだけで更に女神官と見習い聖女は更に顔を赤らめる。

 

 

 

「私も『聖騎士』を目指す者として、貴女の事を尊敬している」

 

「それはとても光栄ですわ、騎士様」

 

 対して女騎士は堂々と自己紹介を交わし、これに対しても大司教は笑みを浮かべた。

 

 皆が自己紹介を交わす中で……。

 

 

「ほう、只人にしては見事なもんだの」

 

「そうね……うん、綺麗な絵」

 

「同感だ」

 

 鉱人道士や妖精弓手、森人剣士は天蓋にて壮麗な筆致で描かれた神代の戦いの絵物語に対して興味を惹かれていたりした。

 

 ともかく、それぞれの自己紹介を済ませつつ……。

 

 

 

「まずは依頼について話を聞かせてもらえるか?」

 

「はい、それではお話しましょう……事の発端は一か月ほど前の事ですわ」

 

 ゴブリンスレイヤーが依頼についての話を促すと大司教は床へ座るよう促し、彼女自身も寂然と趺坐しながら説明を始めた。

 

 一か月ほど前――夜分遅くに神殿から使いに出した侍祭の娘がそのまま一晩、戻らず翌朝、路地裏にて遺体で見つかった。

 

 その遺体を見つけた者が言うには生きたまま切り刻まれたようだったとの事。

 

 当然、至高神のお膝元ともいえるこの街での凶行とあれば、より一層、犯人の捜索行動に力を入れた。

 

 しかし、証拠が驚くほど少なかったために捜索は難航、するとささやかな窃盗や通り魔めいた傷害、婦女子への暴行、子供の誘拐と水の街にて犯罪が急増した。

 

 そうして足跡が辿れないのであれば現場を押さえようという事になり、衛視のみならず冒険者達も駆り出して行う事となった。

 

 これが功を奏し、一組の冒険者達が女性を襲う小柄な人影を見つけ、切り伏せたその死骸を見れば……。

 

 

 

「……紛れも無く、ゴブリンだったのです」

 

「……地下水道から侵入したというところか(彼女は……)」

 

 ゴブリンスレイヤーはゴブリンが侵入した経路に予測を付けながら、ゴブリンの事について言及すると彼女の身体が僅かに震えているのを確かに見た。その事から大司教の事情にも予測がつく。

 

 

 

 

 疑問でもあった『ゴブリン退治』の依頼を出した理由の一つについてもだ。

 

「はい、そうなのです。一か月かけて私どもも地下だろうとの結論に至りました」

 

「当然、この街の冒険者達に依頼を出したんだよな?」

 

 大司教に重戦士が質問をする。

 

 

 

「はい、最初に……ですが……」

 

 皆が大司教が口を閉じたその後の言葉については察した。

 

「……それなら、何故、衛視だの軍だのの類に討伐させないのかね? 只人たちにとっても重要な場所ではあるだろうに」

 

「決まっているだろう、ゴブリン如きに兵隊を動かす必要は無いという事だ」

 

「良くある話だな……冒険者としては食いっぱぐれなくて済むが……まあ、ゴブリン退治は報酬少ないけどよ」

 

「やれ、只人の金銭だ政だのは面倒なものですやな」

 

 蜥蜴僧侶の問いに女騎士と重戦士が応じ、蜥蜴僧侶は何とも言えない様子になる。

 

「恥ずかしながら、そうなのです……わたくし、そういうのは、あまり好みません」

 

「ああ、俺もだ。任せてくれ、この街に巣くうゴブリンを退治してこの街の人々の平穏を取り戻す。当然、『大司教』、貴女も含めてだ」

 

「っ!!」

 

 ゴブリンスレイヤーの宣言に大司教は衝撃を受けたように体を震わせ……。

 

 

 

「はい、はい、どうか……よろしくお願いします」

 

 大司教はゴブリンスレイヤーに深く頭を垂れ、縋るようにして懇願したのであった……。

 

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