地下道を探索していたゴブリスレイヤーの一党は水路を粗雑な造りとはいえ、船によって移動するゴブリンの集団と遭遇した。
そのゴブリンの集団はゴブリンスレイヤー達と剣の乙女が使役する使徒の沼竜によって討伐された。一旦、そこでゴブリンスレイヤーは探索を止めて外へと戻る事にする。
「今回で確信した。ここでの
「何故、そう思う?」
ゴブリンスレイヤーが此処までの出来事を経て、そう言う。重戦士が問い質せば……。
「まず、ゴブリン達は略奪民族だから、自力で物を作るなんてしない。そういう発想すら持たない」
棍棒や石器、他の武具を短く擦り上げるとかの細工くらいならするがとは言いつつ……。
「だから、あの船の作り方や使い方を教えたやつが間違いなく、いる。ゴブリンは馬鹿だが学習能力はあるからな。だからこそ、沼竜にいるのを知っていればあいつらは船は使わない。ゴブリンは臆病だからな。自分達より強い存在がいるなら、近寄ろうとすらしないんだよ」
そう、ゴブリンスレイヤーは言う。
「この街で騒ぎを起こし始めた期間からすれば妙な事でもあるけどな……」
「本当にきな臭いな」
「ああ、自然発生しただけならどんなに楽か……魔神王に仕える眷属やら邪教集団とかそういうのじゃ無ければ良いんだけどな」
「ちょ、止めてよそういう事言うの」
会話を挟みながら、地下道を進んで梯子へと辿り着くと地表に戻った。
「かなり降っているな」
「うぅ……雨、止みそうにないですね」
ゴブリンスレイヤーの言葉に女神官が応じる。ともかく、そうして宿泊地として借りている神殿の中へと戻った。
「……」
ゴブリンスレイヤーは自分に与えられた部屋で地下道をマッピングした数枚の紙を見ながら、思考に耽っていた。
「よろしいですか?」
「っ、ああ、勿論だ」
扉がノックされるのが聞こえ、そしてノックをした剣の乙女の声に応じながら、ゴブリンスレイヤーは扉を開ける。
「失礼しますね」
「元は貴女の部屋だろう」
剣の乙女に対し、ゴブリンスレイヤーは苦笑をしながら言った。
「今日も仕事、お疲れ様でした」
「労い、ありがとう。だが、まだ終わりじゃない。流石に地下道は広いな」
「ふふ、伊達に大きな街じゃありませんからね」
寝台の上に腰掛ける剣の乙女に対し、ゴブリンスレイヤーが言うと剣の乙女は静かに笑う。
「……沼竜の助けはありがたかった」
「っ、役に立ったなら良かったですわ」
ゴブリンスレイヤーは震えている剣の乙女に対し、傍に座りながら手を握って礼を言った。それに対し、リラックスしながら剣の乙女は言う。
「ああ、本当に役立ったよ。だからこそ、早くゴブリン達も裏で動いている奴も倒す。貴方の恐怖を取り除いてやる」
「はい……はい……」
ゴブリンスレイヤーは依頼に取り掛かっている中で剣の乙女からある程度の事情を聞いていた。金等級の冒険者でもあった剣の乙女だが、実は彼女はまだ新人な時にゴブリン退治に失敗し、凌辱を受けた事、そして目を傷つけられ、視力をほとんど失った事を……。
それがトラウマとなってゴブリンとは戦えなくなったのだという事を……。
そんな彼女であるが、使徒として使役している沼竜とは感覚を共有しているために嫌でもゴブリンとの戦闘でのそれを体感してしまうのである。だからこそ、堪らない。
「また、少しだけ甘えさせてもらえますか」
「勿論」
そうしてゴブリンスレイヤーは剣の乙女を優しく抱き締めながら、背中を摩ったり、手を握ったりして彼女の気持ちが安らぐようにした。
今までトラウマからゴブリンに蹂躙されたときのそれを悪夢として何度も見るので眠れなかった剣の乙女はゴブリンスレイヤーにより、眠れるようになっていたのだった……。