とある村近くにある山の森林に囲まれた場所に『洞窟』はあった。
そして、その『洞窟』こそはゴブリンの群れの巣穴となっている。故に内容もその報酬も他の物とあまり変わらないゴブリン退治の一つとなって冒険者ギルドへと依頼された。
「もっとだ、もっと生贄を集めて来い……くっ、魔神王様さえ無事ならば……こんな下等な者達等……」
しかし、実態はそれだけでは無かった。魔神王の復活を目論み、今は力を付けようとゴブリンを手先にして暗躍している魔術師がいたのだ。
現在、魔神王を勇者が倒した事でその残党たちが世界に散らばっているが故の事であった。
そうして、まずはこの洞窟近くの村人を生贄として集めながら、それを糧に世界を支配する活動をしていたのだが……。
「≪
『!!』
周囲の一切の音を封じる≪
そうして……生きた蛇を思わせるかのように中空をうねりながら、ゴブリンの群れを次々と餌食とするのはゴブリンスレイヤーが操る棘鎖。
更に鋭く流麗な剣の舞踏を持って即座に魔術師を葬るのは森人剣士であった。
幾度か引き受けたゴブリン退治の最後の依頼を二人はこなしたのである。
「魔神王の残党は本当に多いようだな」
「全くだな、良い加減大人しくしていて欲しい物だが……」
「それはそれで厄介な事になりそうだが」
生贄として攫われていた村人の娘たち全てを救い出し、生贄にされる前でゴブリンに手は出されていないとしっかりと伝えた後、辺境の街の冒険者ギルドに帰る最中に二人は魔神王の残党についての話をするのだった。
そうして、夕方頃に依頼達成の報告をするため、冒険者ギルドに入ると……。
「あ、オルクボルグ。依頼は終わったの?」
「ああ、終わったよ。そっちも終わったようだな」
「ええ、ばっちりよ」
冒険者ギルド内にある酒場から既に葡萄酒で出来上がっている妖精弓手が声をかけてきた。妖精弓手の様子を見てゴブリンスレイヤーは苦笑しながら返事をすると、ご機嫌気味に妖精弓手は答える。
「相変わらず、葡萄酒一杯でこうなるとは……安上りで良いのぅ」
「ははは、楽しめればそれで良いですからなぁ」
妖精弓手の様子に呆れているのは鉱人道士であり、愉快とばかりの反応をするのは蜥蜴僧侶である。
「じゃあ、しっかりと体を休めないとな……ほら、いくぞ」
「えへへ、うん」
見るからに眠ってしまいそうな妖精弓手に声をかけるとゴブリンスレイヤーは何度かやっているのですでに慣れている作業――彼女を背負って二階にある彼女の部屋まで運んでいく。
「(また、大分散らかっているな……)ほら、下ろすぞ」
「んー……」
片付けた筈の部屋がまた大分、散らかっているのを見て内心で苦笑しながら妖精弓手をベットの上に降ろし始めた。
「んちゅ」
「お、おい……」
下ろしている最中にゴブリンスレイヤーは妖精弓手から口づけされ、軽く驚いた。
「んふふ、いつも優しくしてくれるから大好きよ。オルクボルグ」
「それは光栄だし嬉しいよ……ありがとう、おやすみ」
「ん……おやすみ」
微笑む妖精弓手へゴブリンスレイヤーは軽く笑うと軽く口づけする。それに満足しながら、妖精弓手は部屋を出ようと動くゴブリンスレイヤ―に声をかけるのであった。
そうして、翌日……。
「いつもありがとうね、誕生日を祝ってくれて」
「何言ってんだ、当たり前の事だろう」
ゴブリンスレイヤーは今日が牛飼娘の誕生日であった事から、辺境の街を一緒に歩き回りながら一緒に行動する時間を一日中、楽しみつつ、彼女が欲しいと望んだ物をプレゼントとして送った。
勿論、受付嬢の誕生日も森人剣士の誕生日も同じように一日、一緒に過ごしながら祝っているのだ。
三人と関係が出来ての数年間、一度もそうした事を欠かした事は無い。
「好きだよ」
「俺もだ」
夜においては寝台の上で触れ合いながら、言葉を交わし合いながら互いへの愛を深める交流をゴブリンスレイヤーと牛飼娘は幾度となく行い、更に更にと関係も愛も深めていくのであった……。